令和2年度 技術士第一次試験 建設部門 Ⅲ-8 を解説、遅れ破壊はF11T以上で起きる
令和2年度 建設部門Ⅲ-8は、鋼橋の維持管理を5つの記述で問う設問です。
この問題のポイント
遅れ破壊の危険があるのはF11T以上の高強度ボルトです。
選択肢2は「F11T以外」と書いているので、範囲が正反対です。F11T以外にはF10TとF8Tが含まれ、これらは現在の道路橋で標準に使われています。
※ 問題文と選択肢そのものは、公益社団法人 日本技術士会が公開している公式PDFで確認できます。
正答:選択肢2(最も不適切なもの)
> この論点をやさしく解説:鋼橋の維持管理|遅れ破壊はF10TやF8Tでは起きない
各選択肢の正誤
5つのうち4つは正しい記述なので、誤っている1つを探します。
| 選択肢 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 支承周りの滞水 | ○(正しい) | 滞水が生じやすい箇所では鋼材の腐食が進行しやすい |
| 2 遅れ破壊の範囲 | ×(誤り) | 危険があるのはF11T以上。F11T以外と書くと逆になる |
| 3 疲労き裂 | ○(正しい) | 活荷重や風の繰返しで、溶接継手や溶接欠陥などの応力集中部にき裂が出る |
| 4 塗装の素地調整 | ○(正しい) | 表面さびを除去し、有害物質の除去と層間付着性のための面粗しを行う |
| 5 き裂の溶接補修 | ○(正しい) | 再溶接の残留応力・ひずみ・新たな欠陥で、損傷前より疲労強度が劣る場合がある |
標準のボルトが危険だという記述になるので、そこで切れます。残る4つは滞水と腐食・疲労き裂・素地調整・溶接補修の教科書どおりの記述です。
選択肢2のポイント(ここが誤り)
高力ボルトの等級と遅れ破壊
範囲を逆にする崩し方
遅れ破壊は、高強度鋼に一定の引張負荷が続いたあと時間が経ってからもろく壊れる現象です。強度が高いほど水素に対する感受性が上がるので、F11T以上で問題になりました。
「F11T以外」と書くと、その線より下のF10TとF8Tが危険側に入ります。数値や等級の線を1つ覚えておけば、範囲を逆にする崩し方は見抜けます。
き裂の溶接補修が難しい理由
き裂を溶接で埋めると、その部分に新しい残留応力とひずみが入ります。溶接欠陥が新たに生じることもあり、補修前より疲労強度が下がる場合があります。
だから補修方法の選択には、ストップホールなど他の手も含めた検討が要ります。
★遅れ破壊は3年度で出ている
令和2年度Ⅲ-8・令和5年度Ⅲ-9・令和7年度Ⅲ-9で、いずれも遅れ破壊が問われました。崩し方は年度で変わり、令和2年度は「F11T以外」という範囲の書き方です。
令和5年度は「1000N/mm²以下」という数値の側で崩しています。
覚え方
- 遅れ破壊はF11T以上の高力ボルトで問題になった
- 強度が高いほど水素に対する感受性が上がる
- 等級や数値の「線」を1つ覚えると、範囲を逆にする崩しを見抜ける
理解度チェック
遅れ破壊の危険があるのはどの等級か。
F11T以上です。F10TとF8Tは範囲に入りません。
現在の道路橋で使われる摩擦接合用高力ボルトはどれか。
F10TとF8Tです。
出典
公益社団法人 日本技術士会「令和2年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」5ページ Ⅲ-8
公益社団法人 日本技術士会「令和2年度 技術士第一次試験 試験問題の正答」
※ 問題文と選択肢は掲載していません。上の表は各選択肢で問われている論点で、実際の設問は公式PDFで確認できます。
※ この記事の確認日:2026年7月