令和3年度 技術士第一次試験 建設部門 Ⅲ-9 を解説、耐候性鋼材は腐食性の低い環境に使う
令和3年度 建設部門Ⅲ-9は、鋼材の腐食と防食を5つの記述で問う設問です。
この問題のポイント
選択肢1は前半で「塩化物イオンのほとんどない環境で」と書きながら、結びで「腐食性の高い環境に適用される」と言っています。
同じ選択肢の中で条件と結論が食い違っているので、そこが誤りです。耐候性鋼材が使えるのは、適度な乾湿の繰返しがあり塩分の少ない環境です。
※ 問題文と選択肢そのものは、公益社団法人 日本技術士会が公開している公式PDFで確認できます。
正答:選択肢1(最も不適切なもの)
> この論点をやさしく解説:鋼材の腐食と防食|耐候性鋼材が使えない環境
各選択肢の正誤
5つのうち4つは正しい記述なので、誤っている1つを探します。
| 選択肢 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 耐候性鋼材 | ×(誤り) | 適用されるのは腐食性の低い環境。高い環境と書いてある |
| 2 ジンクリッチペイント | ○(正しい) | 塗膜中の亜鉛末が犠牲防食作用を発揮し、亜鉛化合物で保護皮膜を作る |
| 3 厚膜被覆 | ○(正しい) | 有機材料を1mm以上の厚膜に被覆する。港湾・海洋の飛沫帯や干満帯に使う |
| 4 金属溶射 | ○(正しい) | 溶射皮膜で腐食因子の到達を抑える。気孔があるので封孔処理が必要 |
| 5 溶融めっき | ○(正しい) | 溶融金属浴に浸漬する。亜鉛・アルミニウム・亜鉛アルミニウム合金がある |
海岸沿いのように塩化物イオンが多い環境では、保護性さびが育ちません。残る4つは犠牲防食・厚膜被覆・封孔処理・めっき金属の教科書どおりの記述です。
選択肢1のポイント(ここが誤り)
防食法の使い分け
耐候性鋼材が塩分に弱い理由
耐候性鋼材はリン・銅・ニッケル・クロムを少量加えた低合金鋼材です。適度な乾湿の繰返しを受けると、表面に緻密で密着性の高い保護性さびが育ちます。
塩化物イオンがあるとこの層が緻密になれず、さびが層状に剥がれていきます。だから飛来塩分の多い地域では、無塗装の耐候性鋼材を使えません。
金属溶射に封孔処理が必要な理由
溶射直後の皮膜には、溶けた金属が積み重なるときにできた気孔が多く残ります。この気孔から水分などの腐食因子が入ると、皮膜の下で腐食が進みます。
そこで溶射のあとに封孔処理を行い、気孔をふさぎます。
覚え方
- 耐候性鋼材は「塩に弱い」と覚えます。厳しい環境では、遮断するか犠牲になる金属で覆う方法へ切り替えます。
理解度チェック
耐候性鋼材はどんな環境に適用するか。
塩化物イオンのほとんどない、腐食性の低い環境です。
ジンクリッチペイントはどう鋼材を守るか。
塗膜中の亜鉛末が先に溶ける犠牲防食作用です。
出典
公益社団法人 日本技術士会「令和3年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」5ページ Ⅲ-9
公益社団法人 日本技術士会「令和3年度 技術士第一次試験 試験問題の正答」
※ 問題文と選択肢は掲載していません。上の表は各選択肢で問われている論点で、実際の設問は公式PDFで確認できます。
※ この記事の確認日:2026年7月