鋼材の腐食と防食|耐候性鋼材が使えない環境
この記事の要点
耐候性鋼材が効くのは、塩化物イオンのほとんどない環境です。腐食性の高い環境に適用する材料ではありません。
腐食はアノード反応とカソード反応が必ず等量で進むので、片方を止めればもう片方も止まります。
耐候性鋼材は、リン・銅・ニッケル・クロムなどを少量加えた低合金鋼材です。
表面に緻密な保護性さびをつくらせ、それ以上さびが進むのを抑える考え方です。
保護性さびができる条件がある
保護性さびは、適度な乾湿の繰返しを受けることで育ちます。ずっと濡れたままでも、塩化物イオンが多くても、緻密なさび層になりません。
| 環境 | 耐候性鋼材の向き |
|---|---|
| 塩化物イオンがほとんどない・適度な乾湿 | 効く |
| 飛来塩分の多い海岸・常時湿潤 | 効かない |
「耐候性鋼材は腐食性の高い環境に適用される」は、条件をちょうど裏返した記述です。
腐食は2つの反応が対で進む
鉄が溶け出す側がアノード反応、それと対になるのがカソード反応です。2つは必ず等量で進むので、片方の反応が抑えられれば自動的に他方も抑えられます。
| 反応 | 進むのに要るもの |
|---|---|
| アノード反応(鉄が溶出) | 水分と鉄の接触 |
| カソード反応 | 水と酸素 |
塗装や被覆が効くのは、水と酸素の到達を断って反応そのものを止めるからです。
防食法の並べ方
| 方法 | 効き方 |
|---|---|
| ジンクリッチペイント | 塗膜中の亜鉛末が鋼材に接触し、傷が入っても犠牲防食が働く |
| 溶融めっき | 溶融した金属浴に浸漬し、表面にめっき皮膜をつくる |
| 金属溶射 | 溶融金属を吹き付けて皮膜をつくる。直後は気孔が残るため封孔処理が要る |
| 厚膜被覆 | ゴムやプラスチックを1mm以上に被覆し、飛沫帯や干満帯を守る |
金属溶射の封孔処理を落とすと、気孔から水分が入って不具合が出ます。
技術士一次ではこの形で出た
令和7年度 建設部門Ⅲ-8が、鋼材の腐食及び防食から不適切なものを選ぶ設問でした。正答は③で、耐候性鋼材の説明の末尾に「腐食性の高い環境に適用される」と付け足した記述です。
同じ誤り記述は平成30年度 建設部門Ⅲ-6にも一字同じで出ており、そのときの正答は⑤でした。7年あいて、位置だけ⑤から③に動いた形です。
令和6年度 建設部門Ⅲ-8は、同じ腐食を語句の組合せで問う形になっていました。正答は①で、アノード反応・カソード反応・水・酸素・耐候性鋼材の並びです。
理解度チェック
耐候性鋼材が海岸部で使いにくいのはなぜか。
飛来塩分の塩化物イオンが緻密な保護性さびの形成を妨げるためです。さびが緻密にならず腐食が進みます。
カソード反応を止めると腐食はどうなるか。
アノード反応も止まります。2つは必ず等量で進むため、片方を抑えれば全体が抑えられます。
金属溶射のあとに封孔処理が要る理由は何か。
溶射直後の皮膜に多くの気孔が残るためです。気孔に水分などの腐食因子が侵入すると不具合が生じます。
まとめ
耐候性鋼材は塩化物イオンの少ない環境で効きます。腐食性の高い環境に適用する、と書いてあれば誤りです。
この一文は7年あいて位置を変えて2回出ています。番号ではなく文の中身で覚えます。
出典
公益社団法人 日本技術士会「令和7年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」5ページ Ⅲ-8
公益社団法人 日本技術士会「令和6年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」4ページ Ⅲ-8
公益社団法人 日本技術士会「平成30年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」Ⅲ-6
公益社団法人 日本技術士会「技術士第一次試験 試験問題の正答」(平成30年度・令和6年度・令和7年度)
※ 問題文と選択肢は掲載していません。実際の設問は上記の公式PDFで確認できます。
※ この記事の確認日:2026年7月