令和3年度 技術士第一次試験 建設部門 Ⅲ-8 を解説、疲労寿命は平均応力の影響を受ける
令和3年度 建設部門Ⅲ-8は、鋼構造物の疲労を5つの記述で問う設問です。
この問題のポイント
選択肢5は「変動応力の平均値の影響は受けない」と書いていますが、実際は受けます。
同じ振幅でも、引張側の平均応力が高いほど疲労寿命は短くなります。溶接構造物で疲労が問題になるのは、溶接で降伏点に近い引張の残留応力が残るからです。
※ 問題文と選択肢そのものは、公益社団法人 日本技術士会が公開している公式PDFで確認できます。
正答:選択肢5(最も不適切なもの)
> この論点をやさしく解説:鋼橋の維持管理|遅れ破壊はF10TやF8Tでは起きない
各選択肢の正誤
5つのうち4つは正しい記述なので、誤っている1つを探します。
| 選択肢 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 疲労の定義 | ○(正しい) | 時間的に変動する荷重の繰返しでき裂が発生・進展する破壊現象 |
| 2 き裂の起点 | ○(正しい) | 主に溶接止端・溶接ルート・溶接欠陥が起点になる |
| 3 進展寿命と鋼種 | ○(正しい) | き裂の進展寿命に対して鋼種の影響はほとんどない |
| 4 疲労強度向上法 | ○(正しい) | グラインダー処理で溶接止端形状を滑らかにする |
| 5 平均応力の効き方 | ×(誤り) | 疲労寿命は平均応力にも左右される。受けないは誤り |
残る4つは定義・起点・進展寿命・グラインダー処理の教科書どおりの記述です。き裂の進展寿命に鋼種の影響がほとんどないという選択肢3は、正しい記述です。
選択肢5のポイント(ここが誤り)
疲労で効く量と効かない量
平均応力が効く理由
疲労き裂は引張応力で開き、圧縮応力では閉じます。平均応力が引張側に寄っていると、き裂が開いている時間が長くなります。
そのぶん1回の繰返しで進む量が増えるので、寿命が短くなります。溶接部で疲労対策が残留応力の低減に向かうのは、この平均応力を下げるためです。
鋼種が効かないのは進展寿命の話
き裂が発生するまでの寿命は、強度が高いほど長くなる傾向があります。いったんき裂が入ってからの進展速度は、鋼種が変わってもほとんど同じです。
だから選択肢3の「進展寿命に鋼種の影響はほとんどない」は正しい記述です。発生と進展で話が変わる点を押さえておくと、この肢に引っかかりません。
覚え方
- 疲労は「振幅で進み、平均応力で加速する」と覚えます。令和6年度Ⅲ-7も同じ崩し方なので、1組で用意しておけます。
理解度チェック
疲労寿命は応力振幅だけで決まるか。
決まりません。引張側の平均応力が高いほど短くなります。
き裂の進展寿命に鋼種は効くか。
ほとんど効きません。発生までの寿命とは分けて考えます。
出典
公益社団法人 日本技術士会「令和3年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」4ページ Ⅲ-8
公益社団法人 日本技術士会「令和3年度 技術士第一次試験 試験問題の正答」
※ 問題文と選択肢は掲載していません。上の表は各選択肢で問われている論点で、実際の設問は公式PDFで確認できます。
※ この記事の確認日:2026年7月