令和6年度 技術士第一次試験 建設部門 Ⅲ-7 を解説、鋼構造物の疲労
令和6年度 建設部門Ⅲ-7は、鋼構造物の疲労を5つの記述で問う設問です。
この問題のポイント
疲労の定義とき裂の起点、グラインダー処理はどれも教科書どおりに書かれています。
分かれ目は「疲労寿命に平均応力が効くか」の一点だけです。
※ 問題文と選択肢そのものは、公益社団法人 日本技術士会が公開している公式PDFで確認できます。
正答:選択肢2(最も不適切なもの)
> この論点をやさしく解説:鋼橋の維持管理|遅れ破壊はF10TやF8Tでは起きない
各選択肢の正誤
5つのうち4つは正しい記述なので、誤っている1つを探します。
| 選択肢 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 疲労の定義 | ○(正しい) | 変動する荷重の繰返しでき裂が発生・進展し破壊に至る現象 |
| 2 疲労寿命と平均応力 | ×(誤り) | 振幅だけでなく平均応力にも依存する。引張側の平均応力が高いほど寿命は短い |
| 3 溶接残留応力 | ○(正しい) | 引張の残留応力が重なるため、外力が圧縮側でもき裂が出ることがある |
| 4 き裂の起点 | ○(正しい) | 溶接止端・溶接ルート・溶接欠陥が起点になる |
| 5 疲労強度向上法 | ○(正しい) | グラインダー処理で止端形状を滑らかにし応力集中を下げる |
選択肢2は効かないと言い切り、選択肢3は圧縮の変動応力でもき裂が出ると言っています。
選択肢2のポイント(ここが誤り)
★この2つは同時に成り立ちません。圧縮でもき裂が出るのは引張の残留応力が重なって平均応力が上がるからで、平均応力が効くことを選択肢3が自分で認めています。
選択肢2のどこが誤りか
疲労試験の結果を整理する線図は、応力振幅と繰返し数の組で描かれます。ただし同じ振幅でも、平均応力が引張側に寄っているほど寿命は短くなります。
溶接構造物で疲労が問題になるのは、溶接によって降伏点に近い引張の残留応力が残るためです。選択肢2はその効き方をまとめて否定しているので、不適切です。
選択肢だけで2に絞る
選択肢3は、外力による変動応力が圧縮であってもき裂が出ることがあると書いています。圧縮なのにき裂が出る理由は、引張の残留応力が重なって実際の応力が引張側になるからです。
つまり選択肢3は平均応力が効くことを前提にしています。その前提を選択肢2が否定しているので、両方が正しいことはありません。
覚え方
- 疲労は振幅で進み、平均応力で加速します。溶接部の疲労対策が止端形状の改善と残留応力の低減に向かうのは、この2つに対応しています。
理解度チェック
疲労寿命は応力振幅だけで決まるか。
決まりません。同じ振幅でも引張側の平均応力が高いほど寿命は短くなります。
外力が圧縮側でも疲労き裂が発生することがあるのはなぜか。
溶接で残った引張の残留応力が重なり、実際に部材が受ける応力が引張側になるためです。
出典
公益社団法人 日本技術士会「令和6年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」4ページ Ⅲ-7
公益社団法人 日本技術士会「令和6年度 技術士第一次試験 試験問題の正答」
※ 問題文と選択肢は掲載していません。上の表は各選択肢で問われている論点で、実際の設問は公式PDFで確認できます。
※ この記事の確認日:2026年7月