許容応力と安全率|基準強さを安全率で割る
許容応力は、設計で使ってよい応力の上限です。
材料が壊れる値そのままでは使えないので、余裕を見て下げた値を使います。
割る向きを間違えない
安全率は1より大きい値なので、基準強さを安全率で割れば許容応力は基準強さより小さくなります。逆に安全率を基準強さで割ると、応力の単位にすらなりません。
単位を見れば向きは決まります。安全率は無次元なので、応力の単位が残るのは基準強さを割ったほうです。
基準強さを何に置くかで安全率が変わる
| 基準強さ | 安全率のめやす |
|---|---|
| 引張強さ | 2以上 |
| 疲労限度 | 1.3〜2.0程度 |
引張強さは材料が破断する値なので、そこから大きく下げる必要があります。
疲労限度はすでに繰返しを見込んだ低い値なので、そこから下げる幅は小さくてよいです。安全率の値は、荷重の種類や性質、材料の信頼度を考慮して決めます。
安全率を上げると総コストに最小点ができる
安全率を上げるほど壊れる確率は下がりますが、材料費や製造コストは増えます。この2つを足した総コストは、どこかで最小になります。
| 安全率xを上げると | 動き |
|---|---|
| 期待損失額(損傷確率×損失額) | 減る |
| 製造コスト | 増える |
| 合計 | 最小になる点がある |
損傷確率が1÷(1+x)、損失額が9億円、製造コストがx億円なら、総コストは 9÷(1+x)+x です。xで微分して0と置くと(1+x)2=9 となり、x=2.0が最小点です。
技術士一次ではこの形で出た
令和7年度 基礎科目Ⅰ-1-3が、許容応力と安全率の語句を埋める設問で、正答は②です。選択肢には「基準強さ÷安全率」と「安全率÷基準強さ」が並び、引張強さの安全率も1以下と2以上で分かれていました。
令和4年度 基礎科目Ⅰ-1-4は、総コストを最小にする安全率を求める計算で、正答は①の2.0です。2年で、安全率の定義と、安全率をいくつに置くかという判断の両方が問われています。
理解度チェック
許容応力はどちらで割るか。
基準強さを安全率で割ります。安全率は無次元なので、応力の単位が残るのはこの向きです。
疲労限度を基準にすると安全率が小さくてよいのはなぜか。
疲労限度がすでに繰返し荷重を見込んだ低い値のためです。引張強さのように破断値から下げる必要がありません。
総コストに最小点ができるのはなぜか。
安全率を上げると期待損失は減りますが、製造コストが増えるためです。減る項と増える項の和なので最小点が現れます。
まとめ
許容応力は基準強さ÷安全率です。基準強さを何に置いたかで安全率の値が決まります。
安全率は大きいほどよいものではなく、総コストで見ると最適な値があります。
出典
公益社団法人 日本技術士会「令和7年度 技術士第一次試験問題〔基礎科目〕」2ページ Ⅰ-1-3
公益社団法人 日本技術士会「令和4年度 技術士第一次試験問題〔基礎科目〕」3ページ Ⅰ-1-4
公益社団法人 日本技術士会「技術士第一次試験 試験問題の正答」(令和4年度・令和7年度)
※ 問題文と選択肢は掲載していません。実際の設問は上記の公式PDFで確認できます。
※ この記事の確認日:2026年7月