直線すべり面の安全率|cosとsinをどちらに置くか
安全率は、抵抗力と滑動力の比です。
分子と分母のどちらにcosを置くかで、選択肢が5つに分かれています。
重量を2方向に分ける
すべり面が水平からα傾いているとき、土塊の重量Wを2方向に分解します。
| 成分 | 大きさ | 役割 |
|---|---|---|
| すべり面に沿う | W sinα | すべらせる(滑動力) |
| すべり面に垂直 | W cosα | 押さえつける(摩擦のもと) |
斜面が急なほどαが大きく、sinαが増えてcosαが減ります。つまり急斜面ほど滑動力が増え、摩擦抵抗が減ります。
抵抗はモール・クーロンで出す
すべり面のせん断強さは、粘着力と摩擦の和です。すべり面の長さをlとすると、粘着による抵抗が cl です。
摩擦による抵抗は、垂直力W cosαに tanφ を掛けて W cosα tanφ です。
摩擦にかかるのはtanφであってsinφではありません。選択肢にはsinφの形も並んでいるので、ここで落とされます。
組み立てるとこの形になる
抵抗力は cl+W cosα tanφ、滑動力は W sinα です。したがって Fs=(cl+W cosα tanφ)/(W sinα) が出ます。
分母にcosが来ている選択肢は、滑動力の取り方を間違えています。
技術士一次ではこの形で出た
令和4年度の建設部門Ⅲ-4が、この式を選ばせる設問でした。直線すべり面AB上の土塊ABCについて、勾配α、すべり面長さl、粘着力c、内部摩擦角φ、重量Wが与えられています。
モール・クーロンの破壊規準に従うとして安全率の式を選ぶ形で、正答は(cl+W cosα tanφ)/(W sinα)でした。
令和元年度に同じ設問が出ている
この設問は令和元年度のⅢ-4と同じで、図も選択肢の中身も変わりません。
違うのは並び順で、令和元年度の正答は②、令和4年度の正答は⑤です。設問文は令和元年度の「次のうち最も適切なものはどれか」から、令和4年度は「次のうち適切なものはどれか」に変わっています。
理解度チェック
安全率が1を下回るとどうなるか。
滑動力が抵抗力を上回るので、斜面はすべります。設計では1より十分大きい値を確保します。
斜面を緩くすると安全率はどう変わるか。
αが小さくなりsinαが減ってcosαが増えるので、分母が減り分子が増えて安全率は上がります。
摩擦抵抗にtanφを使うのはなぜか。
モール・クーロンの破壊規準がτ=c+σtanφの形だからです。垂直応力に摩擦係数tanφを掛けたものがせん断抵抗です。
まとめ
沿う方向がsin、垂直方向がcos、摩擦はtanφです。この3つの割り当てだけ固定しておけば、選択肢は1つに絞れます。
出典
公益社団法人 日本技術士会「令和4年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」3ページ Ⅲ-4
公益社団法人 日本技術士会「令和元年度 技術士第一次試験問題〔専門科目 建設部門〕」3ページ Ⅲ-4
公益社団法人 日本技術士会「技術士第一次試験 試験問題の正答」令和元年度・令和4年度
※ 問題文と選択肢は掲載していません。実際の設問は上記の公式PDFで確認できます。
※ この記事の確認日:2026年7月