労働のこと

構造設計がどんな仕事が知りたい?誤解されている点も説明するよ。

このブログでは建設業界の労働環境に切り込んできました。また断片的に『構造設計は辛い仕事だよね』ってことも書きました。

でも具体的にどんな仕事か? これが無かったように思います。また学生さんが誤解されていることも多いでしょう。

この記事は、これから構造設計職を目指す方、何となく構造設計なんてどうか、と思っている方に捧げます。

辛いことも楽しいことも、フェアに書いていきましょう。

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一言で何をする仕事か?

構造設計を一言で言えば、建物を成り立たせる仕組みを考え、各部材の断面を決定する仕事です。

『建物を成り立たせる』と言っても、必ず安全でないとダメです。ですから、安全でない建物は『成り立っていない』のです。

また、建物を成り立たせる仕組みは様々です。ラーメン構造、ブレース構造、梁構造、アーチ、ケーブル・・・。これらを取捨選択し、比較検討を行い、最も合理的な仕組みを採用します。建物を成り立たせる仕組みは、構造形式と言います。

さらに、何の材料を使うか? これも重要なファクターです。建築基準法では、4つの材料を構造部材に用いてよいと決められています。

  • 鉄筋コンクリート
  • アルミニウム

以上を構造材料と言います。

構造形式と構造材料は、相互に関係しあっています。例えば、鋼は高強度で高剛性ですが、ゆえに細い断面にできます。しかし、細い断面では圧縮力に耐えられませんから、アーチ構造には不向きです。

構造設計者は、上述した構造形式と構造材料を、建物に最も適した(合理的な)ものを採用するのです。

以上の一連を、構造計画と言います(設計者で考えは異なりますが、一般論です)。次に、よく誤解されている点を説明します。

 

構造設計で誤解されていること

まず構造設計で誤解されていることを説明します。

 

・構造設計はコミュ障でもできる

構造設計はコミュ障でもできる。これは間違いです。僕も社会人になって気づいたのですが、どんな仕事もコミュニケーション能力は必要です。構造設計も漏れなく。

また学生の時はコミュニケーション能力がある、と思っていても実際はわかりません。なぜなら、学生時代は同世代との繋がりがほとんど。一方、社会人になると上は親よりも年上で、30、40、50代~と様々。

世代間のズレを強烈に感じるでしょう。社会人になって、『自分はコミュ障だったのか』と気づく人も少なくありません。

さて、構造設計は意匠や設備との連携が不可欠です。例えば、意匠から『ここの柱を小さくしたい』と言われることがあります。しかし、構造としては断面を小さくできないとき、意匠とのバトルが始まるわけです。

お互いけっして譲れないのですが、しっかりとコミュニケーションをとれる方でないと、自分の意思を伝えることはできません。

 

・今の時代、コンピュータで全て計算できる。

これも誤解です。大学の先生たちは、ほとんどが実務を経験していない方々。ですから、現場の実態を知りません。確かに、フレーム(主柱や大梁)は一貫計算プログラムと呼ばれるソフトで解析します。

しかし、スラブや小梁、間柱といった二次部材はまだまだ手計算かエクセルシート、簡易計算表を使って計算します。これは、手計算が便利になったレベルで自動計算ではありませんから、手計算を理解しないと設計できないのです。

また、案外と細かい部材はコンピューターで解けません。いや、本当は解けるのですが時間的な制約を考えると、FEMに実際の形を入れて解くよりも、簡単なモデル化を行って解いた方が、審査機関にも説明しやすいですし、スピーディーです。

『構造設計は全てコンピューターで・・・』は誤解だと、わかっていただけでしょうか。

 

・高度な数学的能力を必要とする

これも誤解です。一般的な構造設計で行う計算は、四則演算のみ。数学的なテクニックは一切必要としません。

それよりも力の釣り合いを理解できること。物理的な感覚が大切です。

但し、ハイレベルな構造設計者を目指すとき必要になります。

 

構造設計で楽しいこと

実は楽しみ方は人それぞれ。計算よりも図面を描く方が好きだ、ということもいます。新しい構造形式を考えるこが好き、と言う人もいれば、実施設計が始まって計算を進める方が楽しいという人も。ざっと以下のように整理できます。

  1. 構造計算が楽しい人(理論式を解く)
  2. 柱や梁の大きさを決定するのが楽しい人
  3. 構造図を作成するのが楽しい人
  4. 構造計画が楽しい人
  5. 意匠設計者との議論が楽しい人
  6. 最新の計算ソフトをいじるのが楽しい人

僕の場合、1が好きな人です。ですから、実際に構造設計の仕事をして楽しくなかったのです。

構造設計の本職は、2番と4番ですからね。3番は重要な仕事ですが、一通り図面の描き方を理解したら、後は描かなくなります。と、いうのも構造設計事務所では構造図はCADオペさんに依頼することがあるからです。

5番の人は、構造設計の本業ではありませんが、仕事ができる人です。管理職になったとき、さらに力を発揮するでしょう。

6番は、設計者というより研究者に向いています。

重要なのは、楽しみ方を『見つけること』。学生の内に目星をつけておくとなお良いですね。

 

構造設計で辛いこと

構造設計は楽しいことばかりではありません。いや楽しいことなんて、全体の5%で残り95%は辛いことです。

このブログでは構造設計の辛いことを実体験として書いてきました。それを紹介しましょう。

設計終盤にブレース構造からラーメン構造へ変更させられたこともありました。

【定期報告】ブレース構造からラーメン構造へ変更。【構造設計辞めたい】

 

とても小さな建物を1年間かけて設計したことも。

50㎡の建物が確認申請を出すまで1年かかって病んだ件。

 

日々、ITリテラシーの低い方々を相手にすることも。

中堅設計事務所にいる老害とITリテラシーの話

 

いよいよ辞めたい!と思っていたり。

建築設計を辞めたい!と思ったときチェックする項目3つ

などなど、色々と書いています。

 

まとめ

学生の皆さんに再確認して欲しいこと。それは、構造設計という業務にも種類があり、その特色は会社ごとに違っているということ。

例えば中小規模の組織設計事務所の構造設計者なら、人事体制がしっかりしていないので計算から図面まで全部自分でやります。

一方、構造設計者も大所帯になると分業化され、図面はキャドオペさんに任せっきりかもしれません。

HPやネットの情報だけを鵜呑みにせず、OB訪問やできればインターンで仕事体験できるといいですね(最後はありきたりな忠告になってしまいました・・・)。

それでは。

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