ども、Tです。
「ベースパックとハイベースの違い」
って気になりませんか。
鉄骨造で一番既製品が使われる箇所の1つが「柱脚」、だと思います。
なんたって設計は早いし(電算に放り込んで、図面は型番を描いて、標準図付ければ終了)、型式を選ぶだけというお手軽さ。ファストフード以上にお手軽。
そんな既製柱脚は様々なメーカーが商品を売り出しています。今回は、そんなメーカー5社の既製柱脚の、性能などの違いを比較してみました。設計するときの参考になれば幸いです。下記も参考にご覧ください。
ちなみに僕が柱脚関係で、いつもお世話になっている書籍はこちら。
そもそも既製柱脚とは
前述しましたが既製柱脚とは、各メーカーが製品として売り出している柱脚の製品です。本来アンカーボルト径、本数、ベースプレート厚を計算で決めるところを、既に「決められている」ので型番を選ぶだけで柱脚の設計は終わりになります。
構造設計者としては、「柱脚の設計」を考える必要が無いので、設計のスピードが早くなります。
既製柱脚の性能の違いは?メーカー5社の性能を比較してみた
今回比較した5社は下記となります。比較した柱は、角型鋼管の300x12です。この部材に適合する柱脚で、最も曲げ剛性が小さいものを選びました。
ベースパック | 30-12V |
ハイベース | EB300-4-30 |
ISベース | SS302 |
NCベース | PK-300-4S-27 |
ジャストベース | J300-12 |
ベースプレートの大きさ、厚み
ベースプレートの断面(外形)と厚みを比較した結果を下記に示します。ベースプレートが小さくできれば、柱型も小さくなる。すなわち、すっきりとした納まりにできるかと。
ベースパック | 縦×横×厚=520x520x32 |
ハイベース | 縦×横×厚=460x460x32 |
ISベース | 縦×横×厚=500x500x40 |
NCベース | 縦×横×厚=440x440x39 |
ジャストベース | 縦×横×厚=530x530x36 |
比較した結果、NCベースが最も外形が小さいベースプレートでした。最も大きなベースはジャストベースです。厚みは32~40です。
ベースプレートのアンカーボルト本数・径
アンカーボルト本数と径は、柱型や地中梁との納まりを考える上で重要です。下記に比較した結果を示します。
ベースパック | 8―M30 |
ハイベース | 4―M30 |
ISベース | 8―M36 |
NCベース | 4―M27 |
ジャストベース | 8―M36 |
メーカーによっては、ボルト本数4~12本とバラエティに富んだボルト本数を持つ柱脚があります。今回は、□-300x300x12に適合する既製柱脚の中で、最も曲げ剛性が低い製品を選ぶと、自然と上記の結果になりました。
ハイベースやNCベースは、製品の種類が豊富みたいですね。
柱脚の曲げ剛性について
既製柱脚を使う時、柱脚の曲げ剛性は最も気にする項目です。下記に比較した結果を示します。
ベースパック | 90.0x1000 kNm/rad |
ハイベース | 70.1x1000 kNm/rad |
ISベース | 72.0x1000 kNm/rad |
NCベース | 56.4x1000 kNm/rad |
ジャストベース | 89.6x1000 kNm/rad |
ベースパック、ジャストベースが最も曲げ剛性が大きいことが分かりました。ボルト本数が異なるので、単純に比較はできませんが・・・。またNCベースが極端に曲げ剛性が小さいですね。
保有耐力接合か否か
柱脚が保有耐力接合か否かは、保有水平耐力に関わってきます。詳しくは省略しますが、保有耐力接合を満足しない場合、Ds値を0.05加えるなど対応が求められます。下記に比較結果を示します。
ベースパック | 保有耐力接合、非保有耐力接合の両タイプあり |
ハイベース | 保有耐力接合、非保有耐力接合の両タイプあり |
ISベース | 保有耐力接合、非保有耐力接合の両タイプあり |
NCベース | 非保有耐力接合。※1 |
ジャストベース | 全て保有耐力接合 |
※1但し、Dsを0.05加える必要のない大臣認定を取得済み(Qu/Qun=1.1以上など、条件付き)。保有耐力接合はこちらをどうぞ⇒ 柱脚の保有耐力接合の検討方法について
ブレース取り付けは可能か
ブレース構造で既製柱脚を用いるケースもあります。既製柱脚にブレースは取り付け可能か、比較しました。
ベースパック | ブレース可 |
ハイベース | ブレース可 |
ISベース | ブレース可 |
NCベース | ブレース可 |
ジャストベース | ブレース不可 |
ジャスベースのみ、ブレース取り付きが可能な情報が見つかりませんでした。他の柱脚は全てブレースの取り付けが可能です。こちらも参考になります⇒ 柱芯とブレース芯がズレたときの柱脚の設計について
偏心柱脚にできるか
外壁との納まり上、偏心柱脚にする場合もあります(柱芯とベース芯が偏心した柱脚)。下記に比較しました。
ベースパック | 偏心不可 |
ハイベース | 偏心可 |
ISベース | 偏心不可 |
NCベース | 偏心不可 |
ジャストベース | 偏心不可 |
ハイベースのみ偏心柱脚が可能でした(厳密にはスーパーハイベースという工法)。ハイベースのバリエーションの豊富さが伺えます。柱芯とブレース芯が偏心する場合はこちら⇒ 柱芯とブレース芯がズレたときの柱脚の設計について
まとめ
今回は5社の既製柱脚について比較しました。雑感として、ハイベースは他メーカーに比べてバラエティに富んでいますね。今回説明した柱脚は下記の本が参考になります。合わせてどうぞ。
柱脚の関連記事として、下記も参考になりますよ。