ども、Tです。
鉄骨造の設計って柱脚をしっかりやらないとダメですよね。さて、柱脚はアンカーボルト、ベースプレートで構成されます。
その中でも、アンカーボルトはせん断力や引張力を負担するばかりか、建物の固さを決定づけるもの。
そんなアンカーボルトの種類には、大きく分けて2つある。1つはABM。もう1つがABR。今回は、両者の意外な違いについて考えます。
ABMとABRって、そもそも何が違うの?
ABMは切削ねじといって、ねじ部分を機械加工したもの。鋼棒を機械で削ってつくったんですね。
ABRは転造ねじ。ねじ部分を、転造加工(塑性変形をりようした加工)します。ABRは、軸部の断面積とねじ部の断面積をあまり違わないように配慮しています。
そのため、ABRの軸部径は呼び径よりも大分小さい。例えばM20の軸径は18.2mmです。
「ABRは軸径が、呼び径より小さい」
はい、この事実をしっかりと暗記して次へどうぞ。
性能的に劣るABMだが、バネ剛性は大きくなる?
現在、アンカーボルトはABRが主流です。それは「伸び能力」の点で、ABMより優れているからで、先に述べた「切削ねじと、転造ねじの違い」が関係しています。
伸び能力が大きい、ということは塑性変形能力が大きい。つまり大きな耐力が期待できるわけです。
但し、軸部断面積がねじ部断面積と同程度に抑えられていますね?鉄骨造の柱脚のバネ剛性は、こんな式で求められました。
KBS = (E × nt × Ab × (dt + dc)2) ÷ (2 × Lb)
E : アンカーボルトのヤング係数(N/mm2)
nt : 引張側アンカーボルトの本数
Ab : 1本のアンカーボルトの軸断面積(mm2)
dt : 柱断面図心より引張側のアンカーボルト断面群の図心までの距離(mm)
dc : 柱断面図心より圧縮側の柱フランジ外縁までの距離(mm)
Lb : アンカーボルトの長さ(mm)
そう、バネ剛性は「軸部断面積」が重要なんです。つまり、降伏比を調整するため、軸部断面積を調整したABRを使うと剛性が落ちます。
ちょっとの違いかもしれませんが、層間変形角で悩んでいるなら大きな違いですね。
ABMは降伏比の制限で性能が劣りますが、ルート1やルート2など弾性設計で終了するルートでは活躍できるのでは、と思います。
まとめ
- ABRは転造ねじ、ABMは切削ねじ
- 柱脚のバネ剛性は、軸部断面積が重要
- ABMの軸部断面積 > ABRの軸部断面積
久々の構造ネタでした~。