構造設計に関すること

増築工事は既存建物の庇に気をつけましょう

それは僕が3年目の頃でした。当時、EV棟の増築設計を沢山担当しておりました。ご存じない方に、どんな仕事か一応説明します。

昔の学校やマンションはバリアフリーとかユニバーサルデザインを無視した設計が多くて、屋外階段や屋内階段で行き来する計画でした。

 

それが最近は厳しくなって身障者の方でも利用できるように、とEV設置が求められるようになったのですね。

その頃、僕は毎月のようにEV増築の設計を担当したのです・・・

で、事件が起きました。

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庇があるから杭に継手が必要じゃないか!

事件というのは、既存建物に庇があって、杭が1本ものじゃ施工できなかった、ということ。杭を打つためには重機が必要です。その重機は建物の外壁面からある程度は慣れないと、杭を打つことはできません(当たり前ですが)。

これは「外壁面」じゃなくても、建物に杭打機と干渉する障害物があるなら、そこからの距離になる。その典型例が「庇」。

 

事件が発生した建物には庇が2m位出ておりまして、確かに外壁面からは十分離れているけど、庇から杭芯位置まで結構ギリギリだったのです。

具体的に言うと、外壁面から杭打機の芯まで500くらいあれば施工可能であるところ、実は380mmくらいのクリアランス。

どうしよう・・・と冷や汗がでました。恐る恐る上司に相談し、解決法は3つくらい考えました。

 

意図的に杭位置を偏心させるか?

上司と話し合って出した解決案の1つ。意図的に杭位置を偏心させよう、というもの。問題の杭芯を100mm偏心させれば、なんとか杭は打てる。100mmの杭ズレ検討は行っているので地中梁は問題なさそう、ということ。

あらかじめの検討が、「あらかじめ、でなくなる」ことに違和感を覚えましたがアリだなと思いました。

 

庇の下に杭打ち重機を潜り込ますことはできないか。

2つめは、庇の下に杭打ち重機を潜り込ませることができないか、というもの。杭打ちと庇が干渉するから悩んでいるのであって、高さ的に干渉しなければ問題ありません。

が、今回の杭長さは6m。3階建ての既存建物の3階に庇が付いています。階高が3m程度ですが、僅かに干渉する。

また、施工サイドとしてもギリギリの寸法は怖いし、杭打機は上下左右にぶれるから、と却下されます。

 

 

杭に継手を設けるしかない。

残された選択肢は杭に継手を設けて、庇の下に潜り込む方法でした。6mの杭を半分の3mにします。これなら十分な余裕をもって、庇の下に重機を潜り込ませて杭を打つことができます。

もちろん、1本物杭と継手を設けた杭で、両者の性能に問題がないことを証明する必要があります。これは、各杭メーカーで溶接継手や機械式継手の評定をとっています。特に問題なく、1本物から継手へ移行できました。

 

 

ただ、杭メーカーが先走って杭を1本もので施工しており、杭をもう一度造りなおすことになりました。結果、工期が2週間ほど伸びてしまったと思います。

とまぁ数年前の記憶を呼び起こしたわけですが・・・EV棟なんてちっぽけな建物なんですよ。その割に転倒とか、既存建物との関係とかね。考えることが多くて嫌になりますわ。

皆さんも、増築工事は既存建物の庇に気をつけましょうぜ。

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