普通、建物の基礎は固定で計算します。ここで言う固定は「固定端」のように、支点が曲げモーメントを伝達する意味とは違います。
基礎固定とは、鉛直荷重や水平荷重に対して「変形しない」ことを意味します。基礎固定として良い根拠ですが、上部構造に対して地盤が明らかに高い剛性であることが挙げられます。
しかし、耐震壁付きフレームのように地震力を集める構造形式は、壁直下に大きな反力が発生します。力が大きければ、いくら地盤が固くても変形は大きくなりますし、基礎の自重を加えたところで負の反力(引き抜き力)が発生します。
片方の支点が圧縮力で地盤が変形し、もう片方が浮き上がる状態は、「建物が回転」しており、これを回転変形といいます。もう1つ、壁の変形要因がせん断変形です。さらに曲げ変形があるのですが、低層建物では顕在化しないため省略できます。
耐震壁のD値について
ところでD値は、変形量の逆数なので、1/Dsをせん断変形、1/Drを回転変形とすれば、
1/Ds+1/Dr=1/D
を計算し逆数をとればD値が求まります。
せん断変形は壁の面積が大きく関係する。
せん断変形の計算式は簡便な略算式が用意されています。これは、標準剛度、壁の面積、壁高さがあれば求められる式です。
壁の面積が大きければせん断変形は小さくなります。
回転変形はフーチングの大きさ、境界梁の剛性、地盤の剛性、荷重が関係する。
回転変形を算出するには、色んな係数を算出して計算します。が、ざっくり関係するファクターを示すなら、4つあります。1つはフーチングの大きさ。これは、何となく想像できるでしょう。フーチングの面積が大きい方が、接地圧が小さく見かけ上地盤は固くなります。
2つ目が、境界梁剛性。耐震壁は普通、梁で拘束しています。この境界梁も曲げ剛性に加えます。境界梁がしっかりしていれば、回転変形を押さえることができます。
3つ目は地盤の剛性。平板載荷試験など、実験で得られた変形と力の関係から算出するもの。4つ目は外力。最上階が一番小さく、2階床に作用する外力が最も大きくなります。
以上、大まかに4つのファクターが決まれば回転変形量が算出できます。
回転変形はせん断変形より1ケタ~2ケタ違うほど大きい。
実際に計算すると分かりますが、せん断変形は思っているよりも小さいのです。また、何階にあろうが変形量は変わりません。
逆に回転変形は大きい。せん断変形と比べて、1ケタ~2ケタも違います。
耐震壁が本当に性能を発揮できる地盤か?
上記の説明で分かるように耐震壁は地盤の強度に大きく左右されます。基礎が回転すれば、耐震壁の耐力は大きく減少するからです。
建築基準法を読むと、原則、構造計算は基礎固定で問題ないと書いてあります。しかし本当のところ地震時は基礎下の地盤が変形しそうだし、100%耐震壁に期待して良いものか、と思ってしまいます。
地盤が不連続な場合、地盤調査を2カ所以上行いたいですし、なるべく杭基礎にした方が無難かもしれません。
変な地盤の上で計算するのは嫌なものです。
それでは。