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小梁はX、Y方向の、どちらに架けるほうが有利か?

構造設計

ども、Tです。

仮定断面を検討するとき、小梁をどちらの方向に架けるか悩ますよね。建物が正方形なら、小梁をどちらに架けようが、大梁せいは変わりません。

しかし、X、Y方向でスパンが違うとき、小梁の架け方次第で建物全体がお得かどうか決まります。これが直感だ判断できれば一番良いのですが(汗)

直感で理解する! 構造設計の基本

そもそも、建物のコストというのは、なるべく階高を下げた方が良いといわれています。階高を下げると鉛直部材の寸法が短くて済むほか、地震力が小さくなるので、柱や梁を小さくできるからです。また、外装材や内装材も寸法が短くなれば、安くなるのは当然です。

 

というわけで、小梁の架け方1つで建物全体のコストを左右するといっても過言ではありません。

今回はX,Y方向に1スパンの構造物を考えましょう。X方向は6m、Y方向は8mスパンの建物で、平米荷重=2.0kN/㎡です。どちらに小梁を架けた方が得でしょうか?

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計算する前に想像する。X方向に小梁を架けた場合

スパンはY方向が長いです。ですから、X方向に小梁を架けるということは、Y方向の梁に力を集めること。Y方向の梁が大きくなりそうです。一方、X方向は負担幅がスパンの1/4になるので、小さな断面にできそうです。

X方向大梁が小さく、Y方向大梁が大きいフレームになることが予想できます。また、X方向に架けた小梁もスパンが短いので、断面を小さくできそうです。

 

応力の比率をザックリ計算します。X方向大梁に作用する応力は、負担幅1/4でスパンは6の二乗ですから、2.0×8×1/4×6×6/8=18.0kNmです。

Y方向大梁は負担幅が1/2で(集中荷重で作用しますが簡単のため略)、スパンは8の二乗ですから、2.0×6×1/2×8×8/8=48.0の係数です。

 

以上のように、X方向大梁とY方向大梁では48.0/18.0で、2.7倍ちかく応力が違うことがわかりましたね。

 

計算する前に想像する。Y方向に小梁を架けた場合

次に、Y方向に小梁を架けた場合を考えます。Y方向に小梁を架けると、X方向の大梁に力を集めますが、X方向はスパンが短いです。

まず、X方向の梁に作用する応力は2.0×8×1/2×6×6/8=36.0。Y方向に作用する応力は2.0×6×1/4×8×8/8=24.0です。

 

応力の比率は、36.0/24.0=1.50となるので、X方向に作用する応力が大きいものの、X,Y方向でほぼ梁せいが同じになると予想できます。

 

大梁のトン数は、どちらが大きいかざっくり予想する。

先ほどから、X方向またはY方向に小梁を架けた場合の応力について考察しました。この結果を踏まえて梁せいと、トン数について考えます。

まずX方向に小梁を架けた場合、X方向大梁に必要な断面係数は110cm3です。これに見合う部材は、H-175x90x5x8、重量は18.0kg/mです。

Y方向の大梁は応力が2.7倍違いましたが、必要断面係数は307です。これに見合うH鋼を探すと、H-250x125x6x9で、重量は29.0kg/mです。

 

つまり、大梁のトン数は、

大梁トン数=18.0(t/m)x6.0(m)×2(ヶ)+29.0(t/m)x8.0(m)×2(ヶ)=680kg➾0.68(t)。

次にY方向に小梁を架けた場合、X、Y方向大梁の応力が同じくらいになりましたね。X方向大梁の必要断面係数は231です。これに見合うH鋼はH-250x125x6x9で、重量は29.0kg/mです。

 

次にY方向大梁の必要断面係数は153です。これに見合うH-200x100x5.5×8で、重量は20.9kg/mです。つまり大梁のトン数は、

大梁トン量=29.0(t/m)x6.0(m)×2(ヶ)+20.9(t/m)x8.0(m)×2(ヶ)=682.4(kg)➾0.68(t)。

 

となります。以上のように、今回のスパンや梁本数なら、ほとんど有意な差がありません。ですが、小梁せいも小さくなる、X方向案が良いかと思います。但し、この計算は実際のトン数でないことに注意してください。あくまで比較するための仮定結果です。

 

手計算でトン数をざっくり予測することが大事です。

以上のように、ざっくりトン数を予想することが大事です。計算方法は各自、自由で良いと思います。今は手計算で当たらなくても、電算で入力した方が早いと思いますし。

ただ手計算をやっておくと、電算とのダブルチェックになるのでおススメです。たとえ、手計算の結果が間違っていたとしても、電算の計算結果に疑いの目を向けるきっかけにもなるので。

 

結局、計算してみなきゃわかりません(僕は。)

どちらがお得か?の答えは、時と場合によります。結局、計算してみないと何とも言えません。単純に、応力の比率分だけトン数を計算できればよいのですが、必要な断面係数に対して選定した部材の重量は、比例的に重くなりません。

例えば、H-200x100x5.5x8のZは181、重量は20.9で、H-300x150x6.5×9のZ=481、36.7です。それぞれ比率を求めると、断面係数は481/181=2.66倍、重量は1.76倍となります。

 

つまり、応力が数倍違っても、ワンサイズアップで断面が納まって、重量はそこまでアップしません。逆に、応力的にXとY方向梁で違いがなくても、丁度いい断面が見つからなくて、思い切ったサイズダウンができないこともあります。

また納まりの関係もあります。以上を加味すると、最適な小梁の掛け方は設計者の判断だと思います。建築の設計は評価事項が多すぎるので、コレだ!という決め方ができませんから。

要するに、サボらず両方スタディしなさいってことですね。中々、楽はできないものです。今回の例は、少ししょうもない結果になりましたが、トン数をざっくり当たる参考になればと思います。

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