均等にフレームが組まれたラーメン構造の場合、吹き抜け部があっても特に問題になりません。なぜなら、均等にフレームがあることで、地震力は各フレームそれぞれで負担するからです。これを、ゾーニングで負担しているとか、大分の負担をしている等言います。
一方、ブレース構造や、特定のフレームが地震力を負担している構造形式の場合、吹き抜け部があると要注意。吹き抜け部は地震力が伝わらないので、他の箇所に水平力(せん断力)が集中する可能性があります。これが、移行せん断力(正式名称かどうかわかりませんが)です。
床や屋根がRCスラブの場合、移行せん断力を伝達できるか?ということは、あまり問題にしません。スラブを厚さ150mmの大きな壁と考えれば(Qa=t×L×fsを計算すると余裕だと気づきます)、少々地震力を多めに負担したって全然伝達できるからです。ゆえに、剛床です。
問題になるのは、水平ブレースで水平力を伝達し、鉛直ブレースなどの耐震要素まで力を伝える場合です。フレームに大分の負担する地震力を、ブレース本数で均等割りすると、全く足りないケースもあります。
経験が積めば、その辺も直感的に理解できるんでしょうけど。
移行せん断力の算定方法
まず、地震力が均等に負担しているのか?それとも特定のフレームに流れているのか確認します。そのためには、実際に負担しているせん断力と、負担するはずだったせん断力を比較するのです。実際に負担しているせん断力Q1とは、電算結果より得られている柱1本あたりのせん断力です。
負担するはずだったせん断力Q2とは、ちょっと表現が悪いですが、要は、『Q2=柱の節点重量W×層せん断力係数Ci』で算定されるせん断力です。フレームが均等に地震力を負担したときの値と考えて良いでしょう。
もし、Q1とQ2が概ね同程度の値であれば、柱が負担している重量に対して過不足なくせん断力を負担できています。一方、Q2>Q1であったり、Q2<Q1という結果になれば、どこか別のフレームで力を負担しているといえます。
で、Q2-Q1が移行せん断力というわけです。耐震要素は大抵、外側に配置しているので、真ん中あたりのフレームからせん断力が釣り合わないなら、移行せん断力を順次累加していって、耐震要素に伝わるときの移行せん断力を算定します。
この移行せん断力に対して、引張材の検討を行って水平ブレースの断面を決定します。
ラーメン構造でもスパンが短いときは注意。
ラーメン構造でも、スパンが短いと剛性が高くなり、せん断力を負担しやすくなります。外周部に沢山柱を設けている場合も同じです。フレーム毎に柱のせん断力をにらんでおいて、力がどこに流れているか確認したいですね。
せん断力を全然負担していない柱があるとき、負担するはずだったせん断力はどこかに流れています。で、流れるとき水平構面(床)を伝っていきます。剛床が成り立つかどうかチェックしましょう。
丸鋼がダメならL型アングルを使います。
こうした移行せん断力の問題は、適判機関からよく指摘されます。特に、均等なラーメン構造では無い場合など。一度やり方を覚えてしまえば難しい計算ではありませんね。
指摘が来る前に片づけておいたいものです。丸鋼ブレースで力が伝達できないときは、L型アングルが納まりがよくておすすめですよ。