設計者による考えの違いって本当に邪魔くさいと思うことがあります。僕が1年目の頃、A部長の元に配属になりました。席も右隣です。左隣はB課長。この課長は、元々転職で現在のブラック事務所に入社した人で、A部長との接点はそれほどありません。つまり、部長と課長の設計思想は違います。
僕は部長の元に配属となりましたが、数か月は課長から仕事をもらって進めることになりました。このとき、小さな鉄骨造を設計します。最初は課長の言われた通りに設計を進めるのですが、部長が計算や図面をチェックすると、課長の考えを否定するようなことを言うのです。
例えば、仕事の進め方が違う。
課長は比較的若いので、CADも電算も使えます。ですから、僕にはすぐ電算を教えてくれて、『ある程度、仮定断面が決まったら図面を描き始めた方が早い』と言ってくれました。仮定断面を無事決めたので、そのように図面を進めると、部長が『おい、計算が全部終わってから図面を描け。』と言うのです。
2人が真逆のことを言うので、当時の僕はパニックです。課長の言うことも部長の言うことも一理あるのですが、一体どうしたらよいのか。『課長に言われました』なんて気を使って言えない僕は、『すみません・・・』と謝ることしかできません。
なにせ、考え方の違う課長と部長に挟まれた席ですから。両者からのプレッシャーやストレスを相当感じていました。
ちなみに僕は、課長の仕事の進め方が正しいと思います。部長の頃はCADも無くて、図面の間違いが命取り。しかし、現在は図面も計算も修正が非常に楽です。計算が間違っていたからと言って、図面の作成スピードが落ちる訳でもありません。
それに、図面を先に描くことで建物全体をイメージすることができます。部長たち(60歳)のように経験豊富な者は、平面から立体をイメージできます。しかし僕らには無理です。ですから、伏図・軸図を描くことで、ようやく納まらない箇所や部材が必要だった部分が明らかになります。
特に大きな物件になると、まずは図面を描いてみないと、良くわかりません。
根巻き柱脚の設計方法が違う。
A部長は、根巻き柱脚の設計で、曲げとせん断に対して、鉄骨柱又はベースプレート断面を無視して設計することを奨めています。まぁ、接合部指針に書いてある一般的な方法です。
そんな根巻き柱脚をB部長が見て『これはイカン!』と怒り出すのでした。スタッドが無ければ根巻き柱脚として成立しない!と言い出します。B部長は、根巻き柱脚に作用する曲げは、スタッドのせん断耐力で伝達させたい人みたいです。
A部長から承認を受けた設計図に茶々を入れられているので、直せるハズもなく、適当に誤魔化して乗り切りました。
設計者は我が強くてキモい人間ばかり
設計者は本当に我が強い人間ばかりです。自分の考えを押し通します。根巻き柱脚の設計方法も建築基準法で定めてくれたら楽なのに。何でもかんでも設計者に裁量を与えるのもどうかと思います。