EV棟の設計を多くやりました。慣れたら簡単。でも既存との関係、転倒の検討が面倒です。今回は、数棟やったEV棟の設計マニュアルを紹介します。
EV棟とは?
建物の階数が多くなると階段の他にEVが必要です。新築ならEVを建物の中に設置して設計します。一方既存の建物に増築する形でEVを設置したい場合、別棟としてEV棟が必要。
注意① 既存建物との関係
EV棟を造るなら、必ず既存建物があります。既存建物に対してEVを設置したいからです。すると既存建物の基礎形状、基礎深さが重要です。
基礎工法は既存と合わせよう。
既存基礎が直接基礎で設計されているなら、今回の基礎も直接基礎です。現在まで問題ない建物が直接基礎なのに杭基礎を使う理由がない。
必ず既存の基礎工法と合わせるようにします。
基礎底は既存と合わせよう
基礎底も、既存と今回で合わせます。基礎をつくるとき余分に土を掘っています。既存より浅く基礎を造ると、盛土の上に基礎を造る形になるので危険です。
また既存より深く掘っても危ない。既存の基礎が倒れる可能性があるからです。必ず、基礎底は既存の基礎に合わせて設定しましょう。
基礎形状は既存基礎と干渉しないように
今回基礎は既存の基礎と干渉しないよう設計します。クリアランスを100mm程度空けて今回の基礎を造ります。
4本柱なので斜め方向加力を検討
EV棟は4本柱が多い。EVの幅×長さは大きくないからです。で、4本柱の場合、構造的に少し不安。柱が1本駄目になると構造として成立しないため。これを『冗長性が無い』と言います。
建築基準法では冗長性が建物を『長期軸力を20%以上負担する柱』という表現をしています。4本柱の場合、長期軸力は100/4=25%。冗長性がない建物に該当します。これに該当するとき、斜め方向の地震を考慮する必要があります。
しかし、斜め加力の検討はSS3では行えません。簡単なのは地震力を1.25倍する方法です。地震力を1.25倍してX,Y方向を検討すれば斜め方向の検討はしなくても良いです。
あらかじめ地震力を割増しましょう。
次回は転倒について・・・
EV棟の検討は柱が少なくて簡単に見えます。ただ計算は簡単でも柱が4本で、ひょろ長い『危ない構造』です。変形や転倒など注意して設計しましょう。
次回はEV棟で一番重要な転倒の検討について紹介します。