元々、建築は自然の脅威から身を守るためのハコでした。猛獣や雨、台風、地震など。それが現代では様々な用途となり、「身を守るためのハコ」と言うには意味が多すぎるようになっています。
さて現代の建物は木造、鉄骨、RCが基本ですが、素材を頑丈にすればするほど、僕たちは自分の首を絞めているように思います。
つまり、巨大な地震が発生して家が倒壊したとき、その重みによって圧死するリスク、ガスや電気機器の破損によって火災が起きるリスクが大きくなりました。
もちろん、それらに対して安全なように構造設計をするのが、構造設計者の使命なのですが・・・「倒壊しても人が死なない建物」はないものか?建物は倒壊してもよいのではないか?と常日頃から思っています。
今回は地震で倒壊しても人命が守られる建物、建物は倒壊してもよいのではないか?考察していきましょう。
建築基準法では、最大級の地震(震度6強~)で建物が倒壊しないことを目標としています。これは、建物が倒壊すると人の命に直結することから定められています。しかし、逆に考えれば倒壊しても人の命が保証されれば、建物は倒壊しても良いということです。
さて、倒壊が人の命に直結する大きな理由が「圧死」です。要は、建物の重みに潰されて死んでしまうこと。
当然です。軽いと言われる鉄でさえ、7.85t/㎥あり、RCは2.4t/㎥あるのですから。よって、倒壊しても問題ない建物とは「比重が極端に低い部材を使うこと」が重要です。例えば特定天井に該当しない重さ=2.0kg/㎡以下であれば頭に落ちても大丈夫そうです。
ですから2階建ては禁止。2階の床をつくると、必ずRC等の床が必要になるので。建物は平屋建てに限ります。あとは地震で壁が倒れない機構をつくれば問題は解決しそうです。
1つの解決法は、全ての建築は平屋建てとし屋根重量(天井を含む)は、2.0kg/㎡とすること。
次に思いつく方法は、「倒壊しても人にぶつから無ければ良い」ということです。全く関係ない位置に建物が落ちてくれれば、人命は守られます。
そのためにはどうすれば良いでしょうか?
例えば、「地震力を集める」ことです。耐震的なコアをつくって、地震力は全てそこで負担する。その部屋は倒壊して使い物にならないけど、他は鉛直力を支持できるしラーメン構造として地震力を負担可能にする。
なぜ建物は倒壊してはダメなのか?
ところで、建物はなぜ倒壊したらダメなのですか?いや、もちろん人命を失ってはいけません。しかし、「建物というハコ」は倒壊しても良いかもしれません。
というのは、「倒壊はしないけど元の状況に復旧できない建物」。これは結局建て替えが必要です。しかし、倒壊はしていないのですから、一度解体して更地にします。解体すると、当然費用が発生します。
一方、建物が倒壊すれば、解体作業は少なくなるでしょうから、費用は安くなります。
要するに、倒壊しようがしまいが、どうせ建て替えるのなら倒壊してしまったほうが、解体が楽な分、得です。これは施主側からすれば、どちらが良いのでしょうか?下手に倒壊しなかったがために、建て替え費用も時間もかかってしまう方が良いのか?
よって、僕は単に「倒壊しなければ良い」という考えには疑問を持ちます。これは、建築基準法だけで良し悪しを判断できない例の1つです。
自分の頭で考え、疑問を持ち思考することが大切ですね。