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「佐野震度」について。昔の本は本当に勉強になる、その2

構造設計

引き続き、前回の記事から↓

武藤清の力学本は読み応えがあって良いですね。
昔の力学本は読み応えがあってとても良いです。 もちろん、過去の本ですから基準法にそぐわない説明も多々あるのですが(例えばせん断力係数の考え方など)、力学に関してはほとんど一緒。 何がおすすめかって、「不静定問題を頑張って手でとこ...

昔と今で大きく違っている設計方針が「震度(せん断力係数)」の設定方法です。家屋耐震構造論では、震度K=0.1でした。

当時でも、K=0.3という実験データや観測地は得られていたのものの、終局強度もあり、安全率もあり、部材の余裕度もあるので、K=0.1で問題ないとしたのです。

 

この頃、構造設計者のよりどころは家屋耐震構造論に書かれていた佐野利器先生の震度法。中々面白いので一部を紹介します。

  1. へい・壁・煙突は、地震時の荷重を分布水平力とすること。
  2. 建築物の場合は、各階床位置に集中水平力を加えること。
  3. 通常は水平震度だけを考慮し、上下震度は長期荷重に対する耐力上の安全率があるからこれを無視する。

1の考え方は今でも同じですね。工作物の設計で、擁壁の自重は分布荷重です。2は今でも同じ。数十年前から今まで考え方が全く同じなんて、すごいですね。

ただし、柱の自重は分布しているので、水平力も分布荷重として作用しそうなのですが・・・。全体重量からみれば僅かなので影響は少ないかもしれません。計算が煩雑になりますし。

3番は比較的最近までこうでしたね。平成19年の告示で大きく変わったかと思いますが、2m以上の片持ち部材は鉛直震度を考慮して設計します。

 

今の耐震設計の根幹をつくった「佐野震度」。今とほとんど変わらない地震力の考え方は、改めて、佐野先生の研究成果が確かだったことを裏付けていますね。

それでは。

 

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