昔の力学本は読み応えがあってとても良いです。
もちろん、過去の本ですから基準法にそぐわない説明も多々あるのですが(例えばせん断力係数の考え方など)、力学に関してはほとんど一緒。
何がおすすめかって、「不静定問題を頑張って手でとこうとする」点ですね。最近のRC基準や黄色本を読んでいても、応力算定については何も言及していません。
でも昔の本を読むと、例えば「ラーメン構造の解析方法云々・・・」など、今では当たり前に解かれている構造形式を、とても丁寧に説明しているんですよね。
で、僕たち世代は手で計算することをあまり知らないので、とても勉強になる。最近、武藤清先生の本を愛読していますが、構造設計法が確立された系譜などが書いてあって、すーと文章が頭に入ってくる感じ。
普段何気なく使っている「Co=0.2」も、こんな理由があったのか!とかね。今は、構造設計法がほとんど確立されていて、僕たちは昔に何があったのか、知るよしがありません。
でもそれって、とても不平等。
「10」ある知識を僕たちは「10」のまま無理やり覚えていかなきゃならない。学校と違って時間の制約がありますから、体系的に覚えることはできませんし。
でも、昔の人たちは「1」→「2」→「3」・・・と知識を積み上げていける。理解がスムーズなんです。そういった意味でも、昔の本を読むのはとてもおすすめ。
旧市街地建築物法の震度をK=0.1
例えば・・・旧市街地建築物法の震度をK=0.1としていた根拠について。
昔は、「設計に採用されていた外力より大きな力がかかっても、材料の安全率もあるし、部材の余裕度もある。耐力に見込んでいない壁もある、だからK=0.1でOK」という考え方をしていたみたいですね。
なんともザックリな設計方針です。今では、材料の安全率に過度な期待はしていません。また、耐力に見込んでいない壁は、むしろ剛性として評価しなきゃならない。
随分と精密な設計になりました。
柱の断面算定はX方向とY方向を別々に考える。
地震力はあらゆる方向から作用します。しかし、全ての方向に対して計算するのは時間的制約からも不可能です。
そのため、X,Yの2方向で検討すればOKと考えられています。
ここまでは現在でも同じ考えですが、昔は、X、Y方向のそれぞれで検討すればOKなのです。その理由は、「終局強度から考えると斜め方向の強度の低下は問題にならない・・・」というもの。
一方、今ではX,Y方向の二軸曲げを考慮して断面算定しますね。
とにかく武藤本がおすすめ。
現代の耐震設計の祖を気付いた人物ですから、とにかく武藤先生の本はおすすめ。良い写真が見つからなかったのですが、とりあえず「武藤清」と冠がついた本を買えば間違いないですよ。
読めば読むほど面白く奥深さを知ることができます。
それでは、また明日。
あ、今日からお休みに入ります。ブログや記事の執筆等は休みなく通常営業ですが。
良いお年をお迎えくださいね。