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鉄骨梁上の床スラブにおける有効幅の勘所

構造設計

鉄骨造の建物では、床にRCを用いることが一般的です。室内環境や、床剛性を確保したほうが構造的に有利だからです。ただし、構造的に留意する点がいくつかあります。

まず、荷重が重くなること。これは当然です。続いて、「剛性評価」。鉄骨造はRC造ほど剛性評価にうるさくないですが(そもそもRCのように雑壁が躯体と一体にならないので)、床は別です。

RC床を、そのまま鉄骨梁の上に載せただけでは、せん断力を上手く伝達できません。そのため、鉄骨梁上にスタッドを打ち、そのスタッドとコンクリートを一体化させることで、せん断力を伝達します。

さて、梁上スタッドとRC床が一体になると、梁の剛性を「原剛性(鉄骨梁そのものの剛性)」で評価することは少し乱暴です。

そのため、RC梁と同じように有効幅を考慮します。この有効幅baはスパンと隣の鉄骨部材との距離で決まる値なのです。

式はこんな感じ↓。

係数aの考え方、baの取り方は下図の通り(建築学会 各種合成構造設計指針・同解説より)

ちょっと面倒な式です。aとLの判定により式が変わる。ですから、計算間違いしないためにも、ある程度の「勘所(あたり)」をつけておきたいものです。

今回は、鉄骨梁に考慮するスラブの有効幅baの「勘所(あたり)」を整理しました。

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Baはスラブ幅の15~40%程度、スラブ幅の50%より大きくはならない。

今回、aの値は1~3mまで変化させました。鉄骨梁の場合、ほとんどフラットデッキで床を受けます。フラットデッキの標準的なスパンが3.0mなので、これを上限としました。

鉄骨梁の場合、あんまり短いスパンはありませんから4mを最低値として、よくある偶数割のスパンで14mまで。ラーメン及び連続梁の場合、単純梁の場合に分けてグラフ化します。

下図は、不静定梁における有効幅をa=1、2、3mで場合分けし、プロットしたものです。

すると、スラブの幅aが大きくなればなるほど、有効幅が大きくなります。考えてみれば当然の結果です。

しかし、スラブ幅aと有効幅baの関係でみると話は別です。例えば、a=1のとき、baの最大値は0.46mでおよそ46%が有効幅です。a=2のとき、baの最大値は1.11mで37%が有効幅となります。

計算すると、aの値が大きくなるほどaに対する有効幅baの割合は低下しました。スラブ幅はフラットデッキに合わせて3mとすることが一般的でしょうから、15~40%くらいが、一般的な有効幅と言えます。


また、この基準式を眺めると、Lの値が無限に近づくとき0.5aとなります。つまり、有効幅は極端に考えても、スラブの半分以上にはならないのです。

 

次に単純梁の有効幅について考えます。単純梁も傾向は同じですが、値の大きさに違いが見えました。具体的には、単純梁の方が不静定梁よりも5~7%ほど有効幅が大きくなったのです。

 

スラブの有効幅は、スラブ幅の15~40%が一般的。不静定梁よりも単純梁が5~7%大きい。

タイトルの通りなのですが、スラブの有効幅は、スラブ幅の15~40%が一般的でした。また不静定梁よりも単純梁が5~7%大きい結果です。

ラーメンや連続梁は固定度があるので、スラブの効果が小さくなる。単純梁は両端の固定度が0なので、スラブの効果がモロにでる、といったところでしょうか。

今回は、スラブの有効幅について勘所、ざっくりとした数値を整理しました。これを覚えるだけで計算間違いに気づけそうです。間違ってもスラブ幅の50%以上を有効幅にとらないよう、気を付けたいですね。

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