菱形と四角形では断面係数が違います。
どの程度違うのか?
正方形が菱形の1.4倍強いです。僕はいつも疑問に思うのですが、菱形って何となく強く感じませんか?正方形を曲げるよりも、菱形を曲げる方が大変そうですもの。
なぜ、こんなことを言うのか?というと、僕らは生まれた時から重力の下で生きています。生活の中で、重力の扱いを経験的に知っているのです。例えば、本を積むとき、何も考えずとも崩れないよう積みます。食事をするときの箸は床に落ぬよう、天秤にかけます。
僕たちの重力に対する感覚って、割と正確なんですよ。
で、本題。菱形を曲げようと思ったとき、中々曲がらないような気がするのです。何となく、正方形よりも強そう。このギャップを感じたとき、大抵、感覚の方が正しいんですが、このギャップに関しては感覚が間違っています。答えは、一番最初に書いたとおり、断面係数の違いです。
では、なぜ断面係数が1.4倍も違うのか、考えていきましょう。
なぜ正方形と菱形で断面係数が違うのか?
まず正方形の断面係数はご存知のとおり、bh^2/6ですね。ところで、断面係数を求める方法は2通りあって、1つは断面二次モーメントを算出してから、中立軸からの縁端距離で除して求める方法。Z=I/yの式です。2つ目が、断面に作用する応力度の関係から、中立軸から圧縮、引張に作用する偶力を求めて、それがモーメントと釣り合う関係式をつくる方法。M=σZの式です。
どちらの方法でZを算定しても良いです。
さて、菱形の断面二次モーメントは、実は正方形と全く同じ値になります。不思議ですね。同じ重さを載せたとき、両者とも同じように変形します。が、先に壊れるのは菱形断面です。
同じIの両者が、Zが小さくなる理由は、中立軸からの縁端距離が長いこと。正方形の場合、1/2ですが菱形は√2/2です。この距離が長いほど、Zとしては小さくなるので、効率の悪い断面と言えます。
普通、四角形は梁せい(高さ方向の断面)を大きくすることで、Zが二乗の効果で大きくなります。しかし、菱形はせいを大きくしても、さほど効果がないように思います。試しに試算してみました。結果だけ述べるので、各自チェックしてみてね。
例えば、四角形の幅を固定して、梁せいを10cmづつアップします。菱形も幅固定でせいをアップ(イビツな形になりますが)。すると、四角形の方が2倍近く、断面係数が大きくなります。一方、菱形のZは梁せいを大きくしても、思っている以上に効果ができません(二乗の効果がありません)。
例えば、建物の形が菱形だった場合?
四角形と菱形では、菱形が明らかに不利な断面であることが分かりました。梁せいを大きくしても効果が少なそうです。これを部材の断面ではなく、建物の平面形状で考えると、どうなるでしょうか?
え?そんな建物ないって?いや、あるじゃないですか。そう、地震力の方向が斜めだったとき、菱形の断面として抵抗するでしょ?普通、鉄骨造なら二軸曲げを考慮して検討するので、問題になりません。柱も沢山建っていれば、冗長性があるし。
でも、柱が四本とか、モロに菱形の形になりそうな建物は注意しろよ、ってことです。黄色本に書いてある通り。
平面形状も丸、柱も丸が最強。
四角形は方向性があるからダメなんですよ。いっそのこと、平面形状から柱まで丸形状にしたらいかが?方向性なんて気にせず断面設計すれば良いですよね。地震力の方向なんてX,Y考える必要ないですし。
丸ビルって意外と構造設計は簡単じゃないかな?と思います。逆に意匠のプランニングは難しそうですが。形状って面白いですね。四角、三角、菱形、丸形、建築ではこの4つが基本だと思います。どの形状が強いのか?どういう性質があるのか?理解しておきたいですね。