1年目。入社して1ヶ月経った頃、隣の先輩にポイと図面を渡されました。「これ、やってみろ」というのです。その先輩、仕事の丸投げが有名な人物。僕はまんまと、丸投げ先輩の罠にかかったのです。
僕は「は?なにするの?」という状態ですから、何も進みません。1ヶ月何も進んでいない状況を見かねた上司が救いの手を差し伸べてきました。
・・・
手書きで構造計算書をつくり、図面作成しました。設計工期を超過しながらも、ようやく確認に提出することができました。
そして事件が起きるのです。
ルート1にはできませんよ?
確認審査機関から指摘がきました。初めての確認申請だったのですが、指摘の数が30項目以上。不整合やら誤記、誤字など、たくさんありましたね。
それらは構造的に影響のない項目でしたから、問題ありません。しかし、問題がおきそうな指摘が1つだけあったのです。
それが、「Y方向について、Aw=0ではルート1(ルート2-1及び2-2)は適用できません(ICBA質疑番号64)」というもの。
まず、この時担当した建物を紹介します。簡単に言うと、X方向は耐震壁が沢山あって、ルート1を明らかに満足する設計。Y方向は、立面がカタカナの「コ」型をした形状で先端に柱はありません。
ただし建物の重量が軽いこと、柱断面積と雑壁をAcに加えて壁量を満足しますよ~という設計をしたのです。Awは0ね。
さて、指摘の内容に戻ります。指摘には、
「Y方向について、Aw=0ではルート1(ルート2-1及び2-2)は適用できません(ICBA質疑番号64)」と書いてあります。
計算ルート1前提で設計していた建物だけに焦りました。少し言い訳をさせてもらうと、「僕は上司の設計方針に従っただけ」ですが、もちろんそんなことは言いません。
でも、入社1ヶ月目だしなぁ・・・設計方針の判断を求められる立場でも何でもないから。
それはさておき、早速ICBAをみると、下記のように書かれていました。
Q RC造ルート1の壁量規定Σ2.5αAw+Σ0.7αAc≧ZWAiは、Aw=0で式が満足される場合にも適用できるか。
A 本規定の式(ルート2-1、ルート2-2についても同様です)の安全性は、耐力壁を有する建築物の被害事例に基づき検証されており、その観点から、Aw=0となるような建築物に適用することは技術的に適当ではありません。
・・・なるほど。どうやらAw=0のときルート1は適用できないようですね。僕は上司に聞いて回りました。といっても、その上司に設計方針を聞いたのですから、まさかこんな指摘されるとは思ってもみなかったのでしょう。
「何でそんなことをするんや!」
(いや、僕にいわれてもねぇ・・・指摘した人に大声だしなさいよ。)
結局、この問題は下記のように解決しました。
結局両側柱付き壁とした。
Awに算入するためには耐震壁にする必要があります。そこで、片側柱だった架構を両側柱付きとしました。
そうは言っても、同じ大きさの柱を建てるなんて影響が大きい。柱の最少寸法を守って、小さな柱を建てました。
元々、応力が作用する柱ではありませんから、断面は何でも良かったのですが。無事、確認申請は通ります。
僕の体験はレアなケースかと思います。普通、壁量を満足するのならAwは必須ですから。荷重が少ないRC造とか、危ないかも。皆さん気をつけましょうぜ。