学生や社会人1年目、今でもそうですが細い柱って憧れますわ。100mm以下の柱で屋根を支える―部材を極限まで細くすることは、構造屋さんにとっては挑戦です。
構造屋としての楽しみもあれば、構造家の仲間入りができたような気がする。
でも、注意したいのが「意図なき細い部材」です。僕も同じ罠に引っ掛りました。1年目の頃の話です。
丁度いい平屋建物で、細い柱にしてみた結果
丁度いい平屋建物の設計担当が回ってきました。1年目の半ばだったと思います。建物用途は店舗で、200㎡くらい。一部、ちょっとした休憩所を併設することになっていて、それは屋根だけをうける構造物。
上司と相談して、この休憩室は屋根だけを受けるのですから細い柱で設計することに。僕も大賛成で、「やってやる!」と思っていました。
とはいっても、構造的にチャレンジしたわけではなくて、荷重を丁寧に拾って柱は鋼棒を用いて断面を強くしただけ。
それでも構造図に描いた図面は思い切ったな、と思うくらい細い柱ができました。
事件が起きたのは施工後でした。
思っているほど良くないな・・・
竣工後、できあがった建物を見に行きました。だけど僕の想像と僅かに違ったのです。もっとスレンダーでカッコよく新建築の雑誌みたいに、なんて思っていました。
でも現実は、どこか野暮ったい。柱は確かに細いが、安っぽい。まるで仮設みたいだ。なぜだろう・・・。僕は外周を歩いてみました。あることに気づいたのです。
それは屋根の厚み。もっと見付けが薄い屋根を想像していたのに、柱の太さよりも厚い屋根がノッペリとみえている。なんだか野暮ったい原因はコレでした。そして、2つめの理由も気づきます。
それは、樋。柱と屋根があるなら樋がある。柱の横に取り付けられた樋は柱より大きくて、柱が安っぽく見えてしまう。
意図なく細い部材にするくらいならやめてしまえ
これらの反省は、「意図なく細くした部材」は何のデザイン性も無いのです。結局、建築物の外観は意匠設計者(建築家)が端を発します。構造設計者はそれに追従するのみで、有名な構造家だってそう。
佐々木睦老さんが平凡な意匠設計者と組んで、良い建築ができますか、ということ。構造屋だけ盛り上がっちゃって、意図なく細くした柱は全然カッコよくなかったのです。
もしかして、今担当している物件で部材を細くしようとしていますか?それは意匠屋の意図がありますか?
抜け殻みたいな建築になるので、皆さんも気をつけましょうぜ。