ども、Tです。あなたは
- 「アトリエ系構造設計事務所ってどんなとこ?」
と思っていませんか。将来構造設計者になりたい方は、就活先の選択肢としてアトリエ系構造設計事務所があると思います。
僕は組織設計事務所で構造設計の仕事をしていました。今回はその経験を元に、アトリエ系構造設計事務所とは?有名構造家、組織設計事務所、構造設計事務所との違いついてお話しします。
組織設計事務所が気になる方は、下記もどうぞ。
有名な構造家
2019年で存命の方の名前を示します。
- 佐々木睦朗
- 金箱温春
- 梅沢良三
- 金田勝徳
- 佐藤淳
- 池田昌弘
- 今川 憲英
- 江尻憲泰
- 大野博史
アトリエ系構造設計事務所、組織設計事務所、構造設計事務所との違い
アトリエ系構造設計事務所の大きな特徴は、
- 作家性があること
です。これは意匠設計でも同じです。組織設計事務所や普通の構造設計事務所と違い、1つの建築物に対して長い時間をかけ、建築家と一緒になって建築物をつくる、という意識が強いと思います。
よって、アトリエ系構造設計事務所が設計する建築物は、斬新で洗練され新建築などの雑誌に掲載されるものが多いです。構造的に挑戦した設計を行うため、個々の能力が高いです。
一方、普通の構造設計事務所や組織設計事務所は、そのような個人の作家性は無いです。どちらかというと、ビジネスとしての側面が強いですね。
気になる働き方は、確かに不安定です。アトリエ系構造設計事務所の所員は、将来独立することが前提です。薄給でも経験と技術を積めます。土日や祝日関係無し、朝から終電まで毎日働く、という感じでしょうか。
僕が組織設計事務所で働いていた頃、僕の上司から「アトリエ系の同世代は君の2倍は働いている」と言っていました。それは事実だと思います。
ちなみに、だからと言って組織設計事務所が楽とは言いません。残業はしっかりあります⇒ 建築設計は残業が多い?1ヶ月に残業130時間した結果感じたこと
最近のアトリエ系設計事務所
最近のアトリエ系設計事務所の特徴を説明します。
日本の近代建築をつくった巨匠前川國男はかつて、「私一人で組織をまとめるには30人が限界だ」という旨の発言をしました。
時は流れ、現在の有名建築家のアトリエをみると、隈研吾氏の事務所100人以上、伊東豊雄氏で50名以上、アトリエ系がいわゆる「個人商店」ではなく大団体の様相を呈しています。
100人以上の人数で、所員は育つか?
前述したように、所長の目が行き届く人数は、30人と言われています。
経営学では、スパンオブコントロールという考え方があります。これは、元々は軍隊で部隊を編成する際の概念です。
これらの研究によれば、管理可能な人数はおおむね10人とされています。
またモンゴル帝国の部下管理の単位は10名だった、という話もあります。
かつて世界最強であった中世のモンゴル帝国の部下管理の単位は「10名」であり、この階層を増やすことによって1万人の部隊を容易に統率できたという例を示されています。
少なくとも100名以上のアトリエ系事務所では、所長の目は行き届かないのが現状です。
さて、アトリエ系事務所で働く理由の一つが、スター所長の考えやスキルを盗む、ということです。
しかし、所長が忙しく会う間も与えてもらえないような状況で、本当に正しいスキルアップができるか疑問です。
隈研吾氏は一年の半分以上を海外で過ごしているようです。そんな状況でTOKYOオフィスのスタッフは、隈研吾氏から何が学べるのでしょうか?
若手のアトリエ系事務所に入所するのはどうか?
伊東豊雄さんの事務所でも昔は人数が数人から始めた。
伊東さんの目が行き届いて、その頃に入所した若手は思いっきり怒られて怒鳴られた。だから成長したのだと。
今はどうでしょう?隈研吾氏の100人以上いる大所帯の事務所で、隈さんの理念や思想は受け継ぐことはできない、と思います。
確かに経歴にビッグネームを書けるのは魅力的ですが、むしろ、彼らの弟子が独立したアトリエ事務所に入所する方がよい、のではと思います。
例えばSANAAは、比較的少人数で設計をしています。妹島さん、西沢さんという建築家の目が行き届く状況であるので、キャリアを積むには良い場所かもしれません。
まとめ
今回はアトリエ系構造設計事務所についてお話ししました。最後はアトリエ系設計事務所が組織化している、という点も良く考えましょう。将来、構造設計者として独立したい方はアトリエ系も有りです。その代わり10年程度のキツイ修業期間は覚悟しましょう。
僕は組織設計事務所でしたが、それでも辛かったです。アトリエ系に入社したら1ヶ月でギブアップだったかも・・・。