ども、Tです。
僕は大学院で鉄骨造に関する研究室にいました。そのため入社当初は『剛域』という存在すら知らなかったのです。それでよく構造設計やってるな、と思われそうですが・・・。言い訳すると、鉄骨造は剛域が無いので。
さて、太さのある部材を線材としてモデル化する場合、実状とモデル化のズレが必ずあります。このズレを補正する場合もあれば『安全率』という余裕で問題無しと判断できます。
剛域はちょうど『実状とモデル化のズレを補正すること』に該当します。本来は厚みや幅がある柱・梁を細い線でモデル化し、接合部は『剛域』とします。
では剛域とは具体的に何でしょうか?今回は剛域とは何か?実際の使い方について紹介します。
僕も1冊持っていますが、剛域だけでなくRC造全般の構造計算を勉強するなら、下記の本がおすすめです。記事の終わりに書いていますが、実務の初学者や大学院生におすすめ。大学生が持つには、まだ早いですが後々構造設計のに携わるなら損はないです。先行投資ですね。というわけで気になる人は下記のリンクからどうぞ。
剛域とは何か?
RC造で、柱と梁の接合部部分は剛体で変形しません。構造計算では全て線材でモデル化しますが剛体で変形しない部分も同じモデル化で良いでしょうか?変形しないのなら、そのようにモデル化すべきです。
この全く変形しない部分を『剛域』と呼びます。剛域の長さは『構造芯から部材面の距離ーD/4』が一般的。Dは、部材のせいです。柱の剛域長さを計算するとき、Dは梁のせい。梁の剛域長さを計算するとき、Dは柱のせいです。
剛域の設定は慎重に?
剛域は変形しない部分です。このため柱の長さが見かけ上、短くなります。柱が短くなると剛性が高くなるので、地震時のせん断力が集中します。例えばスリットを切らない腰壁がある場合、梁芯から腰壁の天端ーD/4までが剛域長さです。
一般的に柱にとりつく袖壁はスリットを切ります。剛域が長くなると地震時の水平力分担が不自然になります。避けるようにしましょう。
一方、剛域が役に立つこともあります。それは『変形を抑えたいとき』です。先ほど書いたように剛域を長く出来れば柱が短くなります。これは相対的に剛性が増加しています。
例えば鉄骨造で『根巻き柱脚』があります。根巻き柱脚の高さを可能な限り高くすれば、その分剛域も伸びます。これにより、露出柱脚よりも圧倒的に層間変形角を抑えることが可能です。
以上のように剛域の設定は、構造設計を良くも悪くもさせる存在。いずれにしろ設計者の注意深い判断が必要ですね。
確認申請でよくある指摘
剛域関係でよくある指摘の1つとして、『増打ち部・腰壁部の剛域が評価されていません。』とあります。増打ちだから(構造的に考慮していないのだから)剛域を考慮する必要もないだろうと思います。
が、そんなコメントでは許してくれない判定機関も多い。
この場合、忠実に剛域を設定する必要が有ります。増し打ち厚さが異なる場合、面倒な作業です。特に1階は他の階に比べてスラブダウンが多いことが特徴です。
設計時には、剛域が極端に長くなる柱は、あらかじめチェックしておくのがベターですね。ところで腰壁の剛域についての対処法は、下記の記事にまとめました。あわせて参考にしてください。
まとめ
今回は剛域について説明しました。剛域とは厚みや幅のある部材を線材置換することで必要になった補正であること。剛域は剛体で変形しないこと。
剛域が長くなれば見かけ上の柱が短くなり、水平力が集まったり変形が抑えられる効果があること。以上を覚えてください。
RC造は、鉄骨造以上に気をつかうポイントが多いんです。下記の記事は、RCの曲げひび割れについて書いた記事です。RC部材はひび割れに注意したいので、合わせて参考にしてください。
下記の記事は、RC造の出隅スラブについて書いた記事です。片持ち梁がでない出隅スラブは、普通の片持ちスラブよりも注意したい部材です。こちらも気を付けたいポイントの1つ。
僕も1冊持っていますが、剛域の考え方を含め鉄筋コンクリート造の構造計算を勉強するなら下記の本がおすすめです。実務初学者、大学院生が対象ですかね。大学生には少し早いですが、後々構造設計の仕事をするなら持っていて損はないですよ。