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剛度増大率を上げる要因とスラブによる増大率。

構造設計

ども、Tです。

剛度増大率とは、元々部材が持っている剛性(要するに断面二次モーメント)を増大させる係数のことです。

確認申請へ出せば、やれ剛度増大率がどうの嫌になるくら質疑がきます。建物のバランスを崩すやっかいものです。

 

今回は、一般的なスラブの剛度増大率や『なぜ剛度増大率が厄介なのか?』ということを紹介していきます。実務者の皆さんは日頃苦労して重々承知なんでしょうけどね。

ちなみに僕も新米のときは、これを読んで勉強しました⇒ 実務から見たRC構造設計 改訂版

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スラブによる剛性増大を考慮しよう。

元々の剛性を原剛性とすれば、この原剛性を増やす要因の1つがスラブです。RCの梁や鉄骨でも必ずRCの床が用いられます。RC床はそれなりに剛性が高いので、この影響を考慮します。

例えばRC造の場合、梁の剛度増大率は簡単に決まります。スラブが片側付きで1.5倍、両側付きで2倍、が実務で使われています。簡単に式で示しましょう。原剛性をIとしましょう。スラブにより増大した後の剛性をI’とすると、剛度増大率φとの関係は、

φ=I’/I

片側スラブ付き φ=1.5

両側スラブ付き φ=2.0

ざっくりとした定め方ですが、実務で使用するにはとても使い勝手がいいですね。実は細かい式もあります。梁の剛性に関係するスラブの幅(協力幅と呼ぶ)を計算します。この式は梁が単純梁、連続梁で場合分けして算定するので、ちょっと面倒。叉の機会に紹介しましょう。

今回は、『RCスラブは元々の梁の剛性を増大させる』ことを覚えてください。

やっかいな剛度増大率

剛度増大率は部材の応力を急変させるやっかいな奴です。確認申請でも指摘事項が多い項目です。特にRC造は剛度増大率を考慮することが多い。

意匠設計者は簡単にRCの塊で形を造ろうとしますがそれは困るのです。ここでは剛度増大率を急変させる厄介な事例を紹介します。

増し打ち

増し打ちは剛度増大率を考慮する一番多い事例かと思います。特に意匠設計者は考えるのが嫌いで、なんでもかんでも増し打ちで処理しようとします。『増し打ちすればいいじゃん』と考えているわけですね。

しかし、構造的にはコンクリートの塊が増えるので、この剛性を梁や柱に考慮しないとダメです。

雑壁

例えば梁上の腰壁や、梁下の垂れ壁は剛度増大率に大きく影響します。スリットを切れるのなら、それが一番。柱に袖壁が付くだけで柱の剛性は大きく上昇して、水平力が集まります。すると、柱の鉄筋が持たなくなりますので注意しましょう。

ただ、袖壁の場合は袖壁付き柱として補強筋を入れて設計すればOKにできます。

パラペット

審査機関によってはパラペットの剛度増大率を考慮していますか(まだ、この指摘を受けたことがない)という指摘もあるようです。確かにパラペットは屋上の梁と一体化しています。が、配筋をみると、構造的に配慮されているわけではないですよね?

つまり、すぐにひび割れて剛性低下を起こすので剛性に考慮する必要は無さそうに思います。が、確かに現実問題よく分かりません。よく分からない時は、両方とも検証するのが通例なので、仕方なく検証を行うのです。

 

ところで、部材の剛性を上げる要因の1つに、剛域も関係します。下記の記事は、剛域の意味と設定方法を説明しています。

あわせて参考にしてください。

 

こちらの記事は、腰壁の剛域について書いた記事。腰壁の剛域も、部材の合成を大きく変える要因の1つ。

まとめ

今回は剛度増大率について紹介しました。剛度増大率を増やす要因の1つがスラブであること。他にも、増し打ちや雑壁があることを覚えてください。

一部の柱や梁の剛性が大きくなれば、地震力が一部のフレームに集まります。これは好ましくありません。例えば、耐力壁付きラーメン構造のように意図して力を集める構造形式もあります。が、一般のラーメン構造で剛度増大率が増える要因があれば下手に力が集まります。

 

これでは一部の柱や梁を大きくする必要があり、イタチごっこの世界に突入します(力が集まる⇒断面大きく⇒力が集まる⇒・・・)普通のラーメン造を設計するなら、力は分散させた方が部材断面を小さくできるのです。

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