ども、Tです。
構造設計は大まかに捉えると、2つの過程が見えてきます。1つが構造計画、2つ目が構造計算。理想は構造計画に重きを置き、それに基づいて構造計算を行うことです。
しかし、構造設計の手法としては、構造計画が軽んじられている場合も多々あります。理由は一貫計算プログラムの普及です。
柱、梁の断面、荷重を入力すれば勝手に計算できるので、極論を言えば構造計画しなくても設計はできます。
電算入力し、NGになる部材を大きくして、後はTry and Errorの繰り返し。しかも計算速度は格段に向上していますから、時間もかかりません。
本書は、そういったブラックボックス化した構造計算とは真逆の、構造計画を大事にした構造設計事例をまとめた本です。
構造計画の手法が明記されている珍しい本
本書は、現在の構造設計を危惧するかのように「構造計画」の原理が説明されています。そもそも、構造計画は個人で異なるため、この手の本は出版されませんでした。珍しいタイプの本です。
本書の著者は、JSCAの会長でもある金箱さんです。彼の豊富な設計作品を例にして、「この建物は、こんな風に構造計画しました」という金箱さんの頭のプロセスが見えるから面白いです。
ところで金箱さんの事務所からは、実力ある構造家が次々と輩出されています。ブラックボックス化した電算ばかり使わない設計姿勢とか、構造計画を大事にする思想が組織づくりには大事かも。
下記の記事では、優秀な構造家が育つ組織の在り方について言及しました。参考にどうぞ。
先人の知恵を取り入れよう。
学ぶは、真似ることから始まります。構造計画も先人の真似をして昇華していくことを考えれば、この本はぜひシリーズ化して、色んな構造設計者で構造計画の原理と実践について解説してもらいたいですね。
あと僕は、構造家の中ではカラトラバが好きですねぇ。有機的な建築が世界的に高評価を得ています。
下記の記事は、そんなカラトラバの、設計の流儀が分かる一冊。ちなみに翻訳は偶然にも金箱さんです。あわせて参考にしてください。
というわけで、今回は以上です。