EV棟は細長くて高い建物です。このような形だと地震時の反力が大きくなります。そのため、転倒しないように杭又は大きな基礎を造ります。
前回、杭の引き抜き抵抗力の話をしました。今回は大きな基礎で抵抗する場合を説明します。
直接基礎の場合 長期時の反力を増すことが目的
直接基礎は引き抜き力に抵抗できません。そのため、引き抜き力が起こらないくらい大きな基礎を造ります。今回は、底盤の計算に習って基礎断面の決め方を紹介しましょう。
地耐力の算定
地耐力とは地盤のN値から算定される地盤の耐力です。建築基準法や建築基礎指針で示されている長い式を使います。式の説明は省略します。
長期時の反力分布を算定する。
底盤基礎(べた基礎)の場合、支点はなく『支面』という言葉が合います。なぜなら、荷重を点で受けないからです。底盤を使った基礎は面全体で荷重を支えます。1本の柱の支点反力がNとすれば反力分布は、
σc=ΣN/A
ΣN 柱の反力Nの合計値
A 底盤の平面積(縦×横)
σc 長期時の反力分布
です。
下向きの荷重に対して、上向きの反力分布です。
地震時の反力分布を算定する。
地震時には、押し引きの反力が作用します。『押し引きとは、片方の柱が上向き、もう片方が下向きの反力』です。押し引きの反力N‘は必ず±反転した値です。また柱脚に曲げモーメントが作用します。底盤に作用する曲げMdは、
Md=N‘×L + ΣM
N‘ 押し引きの反力
L 柱芯間距離
M 柱脚に作用する曲げの合計値
です。
さらに曲げモーメントに対する反力分布は次式で算定できます。
σ=±Md/Z
Md 底盤に作用する設計用曲げモーメント
Z 底盤の断面係数(bd^2/6)
です。底盤の断面係数とは加力方向に対する『せい』と『幅』の関係から上式より算定可能。
2つの反力分布を組み合わせる。
長期と地震時の反力分布を組み合わせます。すると、圧縮側、引き抜き側2つの反力分布が出ました。このとき、圧縮側の反力分布が重心位置を超えていれば転倒しません。
但し、引き抜き側の反力を圧縮側で支える必要があります。一方、引き抜き側の反力分布が重心位置を超えると転倒します。底盤をもっと大きくしましょう。
まとめ
いかがでしたか?EV棟の設計は転倒の計算さえやれば終わります。初めは難しいですが慣れたらルーティーンです。1週間もあれば計算、図面が終わるでしょう。
資料が参考になればと思います。