本の紹介

【書評】建築に夢をみた、を読んで。

安藤忠雄さんの著書です。随分前に執筆された本ですが、実はNHKのテレビ番組?を

編集してつくったものらしい。

あとがきの文体と、本文の文体が明らかに違っていて、あとがきが本当の忠雄氏だと思います。よって、本文は読みやすい。編集の人ありがとう。

 

さて、安藤忠雄と名前が付いていれば色眼鏡で本を読んでしまいます。僕が想像している忠雄のイメージは、「傲慢、芸術家、偏屈、上から目線・・・」などご覧のとおり、良く思っていませんでした。

それが本書を読んでイメージが一変したというか、大変な思慮の上に建築に取り組まれているのだと感服したのです。なぜ彼が高卒から独学で建築を学び、そして大成できたのか?もちろん時代が求めていた建築をつくりだす「運」もあります。

しかし、芸術や文化、近代建築の潮流を読み解き、時代に呼応する建築を見出す才があったのだ、と納得したのです。

 

例えば光の教会、これは忠雄氏の代表作の1つ。RCの箱に十字型の開口を空けることで暗闇の室内に、光の十字架が差し込む仕掛け。これはコルビュジェのロンシャン教会に衝撃を受け、影響を受けたもの。日本でそのような光の使い方は画期的で、一躍時代の寵児となりました。

代表作、住吉の長屋も海外を見て回り、海外の土着建築に影響を受けたのかもしれません。日本の画一的で経済優先、合理主義の建築から脱却が見られます。「雨が降ったら、雨を感じれば良い。」というように、建築の既成概念をぶち壊す挑発的な一手のように思えます。

 

また忠雄氏の建築にはRC造が多く、しかも素地をみせるデザインが印象的です。これは、欧州の石造り建築に着想を得たのでしょうか。

忠雄氏の建築には批判を受けるものが少なくありません。普通、一度批判を受けると萎んでしまうのが人間です。しかし忠雄氏はそれすらも跳ね除け、強烈な我を持って日本の画一的で経済優先の建築を壊そうとした1人だったのだ、と思いました。

 

今でも「住吉の長屋」に批判的な業界関係者は多くいます。しかし、現在でも住み続けている施主をみれば、そんな批判は全く無意味でしょう。

本書を読み進めているうちに、欧州や欧米の巨匠たちに影響を受けているのがわかります。それを日本へ輸入してきたのが忠雄氏だったのかなぁと思います。つまり建築家の才能はもちろんですが、これは売れる!という「商売人の才覚」が並みならぬものだったとも感じました。

文庫本の割に読み応えがあります。丸二日ないと読めないヴォリューム。片手間に読みたいのなら1~2週間。良い本でした。

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