建設業界のこと

『団塊の世代』の設計者に建設業界や今の若手について聞いてみた。

『団塊の世代』とは、高度経済成長以降の1968年ごろ、第1次ベビーブームによって生まれた世代です。これまでの世代に比べて最大の人口規模。小学校でも1クラスに50人、60人。特に競争が激しい世代でした。

一方、高度経済成長によって働き口は沢山あった時代ですから、団塊の世代は東京や大阪へ一極集中して就職します。さらにこの頃、『24時間戦えますか?』というCMが流行しました。団塊世代には『努力は人を裏切らない』という意識が強くあったのです。働けば働くほど経済は成長する時代でしたから。

とにかく仕事が溢れた時代、会社のために家族や友人を犠牲に働く人たちを『企業戦士』や『モーレツ社員』と呼んで、讃えていたのです。

今の働いても働いても賃金が上がらない状況では、モーレツ社員なんて嘘みたいな話。一発で労基行きです。

さて、以上『団塊の世代』ですが、そろそろ定年を迎えて一斉に居なくなります。僕たち世代とは、考えが相容れない彼らですが、日本を支えた『屋台骨』であったことには違いありません。

今回、インタビュー形式で団塊世代の設計者に、『建設業界、今の若手について』聞いてみました(Tは僕、Dが団塊世代の設計者)。

 

後進国に行くやつは時間を無駄にしている。

T 貴重な時間ありがとうございます。ではよろしくお願いします

ーーD『なんでも聞けや』

T はい、まずは建設業界の行く末なんですが、今後、益々厳しい時代になると思います。新築物件は減り続け、今まで通りの仕事があるのでしょうか?

ーーD『僕らが若いころに比べて、今の新築物件の数は1/2くらい。それが、あと10年もすれば1/3になるんやろうな。構造設計者は元々数が少ないから、食うには困らんやろ。が、意匠屋さんの中には食えない連中が沢山でてくるで』

T なるほど。さらに厳しくなるんですね。でも、東京オリンピックで好景気になるのでは?

ーーD『あの恩恵を受けているんは、東京だけやな。地方創生とか政府は言ってるが、結局東京だけ肥えていくんやろ。現に、地方の物件が増えている実感はないで。』

T 僕自身、今後は地方再生がキーワードだと思っていました。東京以外の地域は、今後どういう時代になると思いますか?

ーーD『益々、東京一極集中やろな。あと20年もすればリニアが開通する。名古屋ー品川は40分で移動可能らしい。今の55%も所要時間を減らして、賃料は6%しか上がらんと言ってる。だったら、名古屋人は賃金の高い東京へ出稼ぎに行くやろ?大阪の連中だって、東京に行くかもしれん。駅前にはマンションがまだまだ出来るかもしれんで』

T 確かにおっしゃる通りですね。地方の大都市名古屋が、ベッドタウンになるとは思いませんでした。東京は経済発展の好循環が出来そうですね。

ーーD『東京は本当に経済のレベルが違う。世界の都市やからなあ。地方の底上げを図るより、東京を成長させる方が、効率が良いんやろうあ。』

T ありがとございます。では次の話題に・・・。新築物件は今後、益々減るとご意見いただきました。一方、3.11から話題の天井改修は増えそうですが設計事務所としてメリットはありそうですか?

ーーD『あんなもん、やるべきやない。』

T なぜでしょう?

ーーD『まず複雑すぎる。既存の配管ダクトや意匠の吊りものを活かしつつ、構造で必要な天井部材を通すなんて、あり得ん。天井改修は構造だけが苦しむ仕事やんか。だから、大手の設計事務所は天井改修の仕事は一切やらん。小さな設計事務所は、構造設計者が居ないから外注するだろうが、外注先にも、やりたがる設計者が居ない。うちの事務所も何度が天井改修をやったが、構造だけ苦しむ仕事や。あんなもんやらせ続けたら人が辞めてくで。』

T そうなんですね・・・。

ーーD『そうや。鉄骨部材のガセットプレートに少し当たるだけで、部材が通らん。すると現場が納まらん!と文句を言ってくるんや。意匠と設備は現状維持、構造だけ部材が納まるように、しかも構造的に持つように設計するなんてアホぬかせ。』

T な、なるほど。分かりました。天井改修は何のメリットも無い仕事なんですね。では、次の話題です。団塊世代が一気に抜けると、今後、構造設計業界はどう変わると思いますか?

ーーD『それは大変な時期がくるんやろ。構造設計者は成熟するまで時間がかかる仕事やんか。40代でも若手と言われるくらいやし。僕の先輩なんてまだまだいるで。僕は今60歳だけど、あと10年したら引退やな。そんな連中が大量に抜けると、図面や計算書を正しくチェックする人材がおらんくなる。今の若手は貴重な人材やで。』

T なんだか急に責任重大になりますね。ところで今の学生は、構造設計の道に進まない人が多数と聞きます。そんな現状をどう思いますか?

ーーD『学生の気持ちもわかるわ。何をわざわざ、色々と文句を言われる仕事をする必要がある?意匠から文句を言われ、設備から文句を言われ、適判から虐められる。それでいて仕事は責任重大、建物が出来上がっても構造屋は蚊帳の外。壊れたら文句を言われる。なんちゅう仕事や、と思うで。入った若手もスグに辞めていくのも、しょうがないわ。』

T ええ。現代の若者の心情も反映していると思います。経済が不安定な中で、安定した仕事を求めるのは当然です。大企業や公務員への就職が第一希望になるも当然でしょう。また、今の若者は生活にゆとりを持ちたい世代が多数ですから、設計事務所のイメージも良くありません。今の若い男子は、事務職希望も多いと聞きます。現に僕が学生の頃も、構造設計志望は10人中1人(僕だけ)でした。

ーーD『構造の若手はめちゃくちゃ貴重やな。頑張ってや。』

T ありがとうございます。最後に、若手設計者へのアドバイスありますか?

ーーD『とにかく若い時は何でも吸収できる時や。仕事を徹夜してでも、何でもやって実力が付く。ほら、最近の若い子は、海外へふら~と行くやろ?あれは論外やな。』

T と、言いますと? 海外留学のことでしょうか。

ーーD『海外留学というか、ほら、何やったけ。青年なんとか・・・』

T ジャイカ(青年海外協力隊)ですか?

ーーD『それやんか!ジャイカで、日本の若手技術者が技術支援をしに後進国へ行くやろ?あんなもん自分のためには全くならん。後進国なんか行って、自分の技術を教えて何になるんや。その数年分、時間を無駄にしとるわ。せっかくの成長の機会をふいにしてな。日本の技術は世界トップやんか。日本で学び続ける方がよっぽど将来のためになる。』

T 成長、ですか・・・。

ーーD『そうや。日本はまだまだ成長せんと。今の生活水準を維持して高めるには。まだまだ成長やな。』

T つまり、若手はとにかく仕事、勉強に忙しくしろってことですね?

ーーD『そういうことやな。』

T はい!今日はどうもありがとうございました!貴重なご意見感謝いたします。

ーーD『おう、またな。』

 

インタビュー後記

団塊の世代らしい、ご意見頂きました。最後は『成長』というキーワードで締めて頂きましたし。団塊世代には『成長神話』が根強いみたいですね。今の若手は、頑張った分成長した時代を知らないから、違和感があるかと思います。

特に、『後進国へ行くやつは時間を無駄にしている』という意見は、現代の若手とは真逆。むしろ、後進国に魅力を感じる若者が多いですからね。

さて、あなたはこのインタビューを読んで何を感じたでしょうか。『意外と良いこと言ってる!』又は『さすが老害』でしょうか?肯定・否定の感情が沸き上がると思いますが、話を聞くことで自分のアイデンティティが、より強くなると思います。

僕はインタビューしてみて、『もっともっと成長しないと』という考えに違和感を感じました。資本主義の競争原理が働き、成長すれば、さらに成長が促進されます。しかし、ご存知のように今の成長した日本を、人々は『幸福になった』とは感じていません。むしろ、自殺者は増えて経済の格差は広がっていませんか?今の日本人と同じ生活レベルを、後進国が始めたら地球はどうなるのでしょう?

後進国へ行くことは、僕たちが忘れてきた『お金が無いけど幸福な生き方』を学ぶためにも良いきっかけだと思います。後進国だから、学ぶことが無いなんて大きな間違いです。世の中トレードオフの関係です。成熟した日本がけっして優れているわけではないし、経済が発展しただけ失った物も大きいのでしょう。

そんな風に感じました。

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