建築構造は計画が最も重要であると、松井源吾先生が著書の中で述べています。松井源吾先生は、早稲田大学の教授を務められた建築構造の権威です。氏は、数多くの名著を残されていますが、僕はその1冊を学生の頃購入しました。
題名は建築構造計画入門です。中身をパラパラとめくってみると、氏が設計された実例を元に簡単な構造力学を使った検証が説明されています。とても分かりやすい本だと感じました。ただ、ある程度実務を積んでないと理解できないかもしれませんね。実務歴2~3年すれば読める本かなと思います。
今回は、おすすめ本の紹介ということで松井源吾先生の建築構造計画入門を紹介します。
松井源吾氏の構造計画が学べる。
これ非常によかった点です。松井源吾氏といえば、建築構造の研究者としても設計者としても超一流の方。氏が設計された実例を学べるのは面白いです。各章の構成はこんな感じになっています。
1.概説
2.屋根
3.床
4.梁
5.柱
6.架構
7.耐震壁と筋交い
8.基礎
9.階段
10.プレファブ
11.経済設計
章立てが実務向けの構成になっていて面白そうですよね。今回も2つだけ本の中身を紹介しましょう。
松井源吾氏が考える 梁の設計
梁には曲げモーメントが作用することは皆知っていますね。では、梁の曲げモーメントを小さくするにはどうすれば良いでしょうか。単純梁の真ん中に集中荷重や等分布荷重が作用したとき、中央曲げMoが一番大きくなります。一方、集中荷重が少し支点へ近くなれば曲げ応力は小さくなります。
そう、曲げ応力を小さくするには1つは支点の近くに荷重を作用させること。一方、単純梁としている支点に固定度を持たせるとどうでしょうか。例えば、固定端にすれば端部にも応力が作用する代わりに、中央曲げは小さくなります。結果、部材に作用する応力は減少します。ただ、必ずしも固定端にできない場合どうすればいいですか?
よく考えれば、単純梁に片持ち梁がついた跳ね出し梁であれば、固定端と同じような応力状態にできそうです。このように、曲げ応力を小さくする目的で片持ち梁を跳ね出させた構造が早稲田大工の渡り廊下だそうです。
とても簡単な応力を小さくする発想なので、実務で使えそうですよね。
松井源吾氏が考える 経済設計
経済設計は、私たち構造設計者がいつも考えていることです。極端な話、安全性だけを追い求めるのは簡単です。部材をでっかくして免震装置やらを設置すればいいのですから。でも、そうはいきません。予算には限りがあります。
さて、本書ではRC造における経済設計が追求されています。例えば、RC梁の曲げ耐力は2つの方法で確保することができます。1つは梁せいを落として鉄筋を沢山いれること。2つは、梁せいを大きくして鉄筋量を減らすこと。氏は、これらのどちらが経済的になるかは、世の中の情勢によるとしています。
ただ、RCの場合梁せいを大きくすれば型枠費用も増えますし、やはり梁せいを小さくしたほうが得かなと思います。その辺は、鉄筋量と型枠費用の相関図を氏が提案されているので、本を購入して確認してみましょう。
まとめ
今回は、おすすめ本ということで松井源吾氏の建築構造計画入門を紹介しました。結構、古い本なんですが読みやすい。技術書って古い方が読みやすいんですよね。最近の本になればなるほど、内容も高度化して読み解くのが難しい。
昔は、そんなに高度な力学は使わず設計していたので、本の中身も読み進めやすかったです。この本は、読み物なので勉強には向かないかなあと思います。が、スーパー有名人の書かれた名著ですので、その考えの一端を知れることは中々ありません。僕としては、手元に1冊あっても損はないかなあと思います。