僕が構造設計を始めた頃、一番わからなかったことが基礎の設計と部材接合部の納まりです。一番初めに鉄骨造の小屋を設計させてもらったのですが、ガセットプレートや高力ボルトの留め方がわからず本を調べました。
当たり前の情報なので、本に書いてなかったこともあります。そんなときは、先輩に聞いて怒られるなど・・・。今になってはいい経験ですが、この本があれば嫌な経験をしなくても良かったかもしれません。
その本が『実例でわかる 工作しやすい鉄骨設計』です。本書の大きな特徴は実例を示していること、それもごく当たり前の実例なので実務に置き換えやすい。今回は、鉄骨部材の接合部の納まりについて勉強するおすすめ本の紹介です。
ダメな例と良い例の対比があるからわかりやすい。
この本がとっても分かりやすいのは、左側にダメな例の詳細図があって右側にその改善例が示してあることです。これで、どう改善すれば良いのか?何がダメだったのか?瞬時に理解することができます。
沢山の事例が紹介されているのですが、仕事始めた当初僕も知らなかった接合部の納め方について2例紹介したいと思います。
失敗事例1 露出柱脚の柱を切り欠いた納まり
これ本当によくあります。と、いうか僕もやります。小さな鉄骨の建物ですと固定度もいらないし、柱脚も割と少ないボルト本数でも大丈夫です。また、柱を切り欠いてその穴にアンカーボルトを差し込むと、ベースプレートを小さくできるんですよね。基礎柱や腰壁との納まりで、ベースプレートをちっちゃくできるのは助かります。
この失敗事例は切り欠き寸法が小さいことでナットが閉まらないことです。切り欠き幅が70mm程度だと、レンチが入っていかないんですね。
この改善例が、コラムの外にボルトを打つ方法。ベースプレートは大きくなりますが、ボルトが締められないより良いです。ちなみに、切り欠く納まりでも幅を100mm程度にすればレンチで締めることができます。
根巻き柱脚にするとき、アンカーボルトは仮設ボルトみたいなモノですから、切り欠く納まりにします。が、基礎柱の主筋の間からアンカーボルトを締めることになるので、これも併せて注意しましょう。
失敗例2 小梁の下フランジカットは安易にやらない。
よくやりませんか?はい、僕はこの納まり好きなんですけど。鉄骨屋さんは嫌いみたいですね。大梁に対して小梁を留めるとき、ガセットプレートを大梁に溶接して、小梁のウェブと高力ボルトで留めますよね?
このとき、小梁の下フランジをカットしてガセットプレートを取り付けることがあります(ガセットプレートが台形みたいな形状ですね)。これは失敗例というか、やらない方がいい事例。なぜなら手間だから。H鋼にはr部分があります。
r以外はガス切断で垂直に切れますが、残りはグラインダー仕上げです。平滑に仕上げるため加工工数が増えるので好ましくないのです。
この改善事例が、フランジを切り欠かずにガセットプレート形状を作る方法。つまり、一番下のボルト端空きから水平に線を引っ張って、大梁のフランジに垂直に線を下ろしたような形状ですね。この方法であれば、フランジに干渉しないプレート形状ですから問題ないです。
一方で、せん断力に対してガセットプレートのせいが小さいので、長期で大きな力が作用する場合には注意が必要ですよ。
まとめ
以上のように、工作しやすい鉄骨設計はダメな例と改善例が対比形式になった分かりやすい実例集です。実務に置き換えやすく、困ったときにいつでも使えます。
現に僕も、実際の設計で何度かお世話になりました。柱、梁、溶接、ボルト接合、ありとあらゆる納まりに対応しています。
また、胴縁や母屋など手の痒い納まりまで網羅しているのもポイント高いですね。実務で悩んでいるけど先輩に聞けない!という皆さん、おすすめですよ。