ども、Tです。
構造力学には、架構の不静定次数を計算する公式があります。
※不静定次数とは、不静定構造物の複雑さを表す指標みたいなものです。
この不静定次数を求めて一体何ができるかというと、架構の静定、不静定、不安定の判定が可能なのです。
といっても、学校の授業ではそんなに重要視されておらず、ぶっちゃけ実務でも、どうでもいい話題です。
「じゃあ何でこんな記事書くんだよ」ということですが・・・
実は一級建築士の試験で定番だった問題なんです!もちろん学校のテストでも出題されるでしょうし。理解は必須ですよね。今回は、そんな架構の不静定次数の計算と、静定・不静定・不安定を判別方法について説明します。
① 公式を理解しよう
まずは公式を確認します。訳が分からない式ですね。但し、この公式を使うことで、3つの判定ができることは覚えてください。
n+s+r-2k=0・・・静定(建物が安定している状態)
n+s+r-2k<0・・・不安定(建物が不安定な状態)
n+s+r-2k>0・・・不静定(建物が、より安定している状態)
n:反力数
s:部材数
r:剛接接合材数(部材が剛接合として繋がっている部材数)
k:節点数
です。静定とは、力の釣り合い式だけで反力を求められる状態です。例えば、片持ち梁や単純梁が該当します。
不静定は、釣り合い式だけで解くことができない状態。両端固定梁や支点が3つ以上あるとき等です。
これは余談として頭の片隅にしまっておけばいいのですが、支点が多い方が建物は安定します(力がより集まって部材がNGになることもありますが・・・)。そのため不静定は建物がより安定している状態です。
不安定とは構造が成り立っていない状態。荷重を加えると、たちまち崩れてしまう。そんな状況を不安定と言います。あえて例えるなら、片持ち梁の端部がピン支点になったとき。
過去問の回答手順について。
問1 下図の構造物の不静定次数として正しいものを示せ。
①反力を数える。
反力の数とは、支点の反力の数を合計したものです。下図の場合ですと、ピン支点で鉛直、水平方向の反力が存在します。右側の固定支点で、鉛直・水平・回転方向の反力が存在します。つまり、この構造物の反力数n=2+3=5となります。
②部材を数える。
この「部材」とは支点若しくは節点で区切られた区間と考えてください。つまり、右側の柱は1本の部材ですが、左側の柱については、2本の部材でカウントします。
なぜなら、中間に節点があるからです。この中間節点により、部材は2本に分かれていると考えます。さらに、梁が1本の部材ですから、合計でs=4となります。
③剛接接合材を数える。(部材が剛接合として繋がっている部材数)
ここが一番良くわからないと思います。剛接接合材という良くわからない言葉の意味は無視して、要するに『部材が剛接合として繋がっている部材数』を数えましょう。つまり、節点が剛接合で繋がっている部分を確認し、部材数を計算します。
注意していただきたいことですが、上図の例でいくと、r=1になります。一見すると、2つあるように思えるのですが、rは部材が剛接合として繋がる部材数ですので、1つの部材に注目して、その部材に何本剛接合として繋がっているか考えます。
もし良くわからないという人は剛接合となっている部材を全部数えてー1した値としてください。ちなみに、左側の柱は節点で繋がっているため、剛接合はありません。よって、r=1となります。
④節点数を数える。
次は節点数を数えます。節点は支点も含めた節点となります。また、中間の節点も含めます。よって、上図の節点数k=5となります。
⑤n+s+r-2kの式に上記で求めた値を代入し、判定を行う。
最後にn+s+r-2kの式に上記で求めた値を代入します。
n+s+r-2k = 5+4+1-2×5=0となります。よって、この構造物は静定構造であることがわかりましたね。
まとめ
公式に当てはめるだけの簡単な問題です。が、それぞれの未知数を正確に数える必要があります。この手の問題は数え間違いのようなケアレスミスが命取りです。特に、④の剛接接合部材数の計算には気を付けてください。
あとはパターン化された問題ですから、色んな支点の問題を解いて慣れることも重要かと思います。覚えておいてくださいね。
最後に、一級建築士の構造力学を勉強するときに役立つ本を紹介しますね。
一級建築士の構造で役立つ本3冊
ちなみに一級建築士試験の構造力学が苦手、という人は下記の本がおすすめ。一般的な構造力学の書籍より分かりやすく説明してあります。
社会人で、構造が専門で無い人(意匠、設備、施工、営業系の方)、構造を勉強して間もない方に推奨です。タイトル通り、一級建築士の試験用に構造力学が理解できればイイや、という人向け。
学生の方なら下記の本を推奨します。分かりやすい、と評判の本です。2部構成になっていて、(1)は静定構造力学について。構造力学の基本が勉強したい人は、この本1冊で十分。
大型本(A4サイズ)なのでリュックやカバンにも丁度いいサイズ。手に持つには少し大きいのが難点ですが、勉強するには使いやすい大きさです。
先に述べた2部構成の(2)が下記の本。不静定構造力学をテーマにしています。(1)の本だけでは満足できない人は、併せて購入すると良し。大学3,4年~大学院生が対象って感じです。
ということで、参考になれば幸いです。