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【書評】ガウディ―建築家の見た夢、を読んで

構造設計

ども、Tです。

今日読んだ本はコレ。

ガウディ:建築家の見た夢 (「知の再発見」双書)

この本を読了するのは疲れました。元々、数式や数字ばかりを追っている人間に、芸術や美術の抽象的価値観を理解するのは時間がかかるのです。

今回は、ガウディの歩んできた建築人生を再認識する旅に出ましょう(壮大)

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ガウディのおすすめ建築が分かる。

さて、本書はガウディの歩んできた建築家人生を、彼の建築物とともにひも解くもの。これはとても分かりやすかったし、勉強になりました。

彼の建築で一番有名なサグラダ・ファミリアはもちろん、カサ・バトリョやカサ・ミラ、グエル公園など。写真付きで解説があります。

 

ガウディを語る上で大きなポイントがいくつかあります。1つ目が、色。彼の名言に、「自然には必ず豊かな色彩がある。建築も色が必要だ」的なことを言っています。

その通り、彼の建築はとても色彩豊かです。2つ目が破砕タイル。破砕タイルとは陶器質のタイルを粉々に砕き、それを外壁材に用いたもの。

 

ガウディの建築は、この「色」と「破砕タイル」で様々な外壁の表現をしています。

その逸話が残っています。タイルの工事をするとき、彼は必ず工事現場に現れて、職人達に色付きの破砕タイルを、どこに配置するか大声を出して指示したそうです。

 

ガウディの建築は、適当?ランダム?に色彩計画をしているわけではなく、彼なりに緻密な計算があるのだと、驚きました。

 

3つ目が、彼の力学的センスとパラボラアーチ(放物曲線)について。これらを象徴するのが、逆さづりアーチです。紐に重量物を垂らすと糸は放物線を描きます。これを逆からみると、重りを載せたときに出来上がるアーチの形状がわかるのです。

ガウディはこの方法で、合理的な天井の形状を決めました。技術が高度化、分業化した今では考えられません(現代ではカラトラバ?そういえば彼もスペイン出身ですね)。力学的センスを持ち合わせ、それを実践する建築家がガウディですね。

 

最後のポイント。有機的な建築です。彼は前時代のゴシック建築を「確立されているが、死んだ建築」と揶揄しました。あまりに形式的 でツマラナイと言うことです。

また直線や直角を嫌い、自然界にあるような曲線美を好みました。サグラダファミリアはもちろんですが、僕が驚いたのは「グエル公園の陸橋」です。

 

この構造物は、2列の柱が全て傾斜し床を支えています。しかも、その柱は複数の細かな石をコンクリートで纏めたような、なんとも形容しがたい建築です。

石やコンクリートは無機物です。ガウディは、この無機質な材料に命を吹き込み、生き物のような建築にした、いわば錬金術師かもしれません(スペインではガウディのことを、神の末裔?と言っていました)。

 

ガウディとコルビュジェのあれこれ。

しかしガウディが生きた19世紀、20世紀前半、彼の仕事ぶりは世界で評価されませんでした。

今でもその建築物は衝撃を与えるものですが、当時は別の意味で衝撃を与えていました。特に、フランスを代表する建築家のコルビュジェはガウディの建築を批判します。

 

「ガウディの建築はバルセロナの恥だ」と書いてしまうほどです(1927年)。ただしコルビュジェは、その後、ガウディ建築は素晴らしいと意見を変えるのですが・・・(1950年頃)。

その証拠に、コルビュジェがスペインを回ったとき、ガウディの建築をスケッチした画が残っているらしいのです。

 

ところで、ロンシャン教会ができたのが1950年代ごろ。大体な曲面屋根のロンシャン教会ですが、ガウディに影響された?と思うのは、僕の穿った見方でしょうか(専門家の方、教えてください)。

またフランスのマスコミも、ガウディを非難します。氷菓子のようだ、と言ってみたり、見世物小屋にある建物だとか、これは建築でない、など。散々な言われようです。

 

では、誰がガウディの建築を評価したのか?それは紛れもなくスペインの人々。特にカタルーニャ地方の方々。

地中海に住む人々の風土でしょうか。新しいものに寛容で、周りの意見にとらわれず審美眼が備わっています。

 

今でも人々を魅了するガウディ。彼の思い描いた建築の数々、そして歴史。もっと言えば、人生そのもの。その一端に触れることができる良書です。

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