久々の更新で、今日はこんなテーマについて。先輩から、ラーメン構造は必ず梁降伏が基本と言われたので、本当かいな?という疑問です。
まず事実をおさえておくと、黄色本を見る限り「しなければならない」という文言はない。望ましい、とかそんなニュアンスだと思います。
冷間マニュアルを読んでも同じことが書かれてあって、必ずしも梁降伏型にする必要はないけど、やった方が良いくらいの書き方。
例えばルート1に関しては、「応力割増し」をすることになっている。柱が通る内ダイアフラム形式と、その他の形式(例えば通しダイア、ちなみに外ダイアも柱は通るがその他の形式に属する)。さらにSTKR400とBCR295で割増し係数が違ってくる。
この割増し係数は「柱のみに掛ける」という点がポイントで(だと思っているが)、要は梁降伏型をイメージした設計思想のように思います。確かに、梁が壊れるよりも、柱が倒壊する方が危なそう。
次にルート2を飛ばして、ルート3。ルート3ではいよいよ梁降伏を設計する。では、どうやるか?
皆さんご存知の柱梁耐力比というものを算定する。つまり、柱の全塑性時の曲げ耐力、梁の曲げ耐力、パネル部の曲げ耐力を比較して、梁より柱の曲げ耐力を大きくすれば、「先に梁が壊れるよね」という設計なのです。
梁の曲げ耐力は1.5倍した値、パネル部は1.3倍して、両者の小さい値に対して、柱の曲げ耐力と比較します。なぜ、1.5倍やら1.3倍するのか、ハッキリとした理由は分かりませんが、鉄骨の曲げ耐力が予想以上に大きくなる、ことに安全をみているかもしれません。
例えばSS400材は現在でもラーメン構造に使用されていますが、降伏比の上限が無いので、極端な話、降伏強度が公称値よりずうっと大きい可能性もあります。そういった不測の事態に対して安全率で対処、ということでしょうか。
でルート3は、必ずしも梁降伏型である必要はなくて、Qu/Qunを満足していればOK。(STKRの場合、梁降伏型は絶対ですが話は省略しました。)
で、ルート2。わざわざルート2を最後に残しておいたのは、ルート2が「完全なる梁降伏型」を目指した設計手法だから。
ルート2は柱梁耐力比が、柱頭と柱脚以外必ず1.5倍を超えるように設計します。
ルート1では、梁降伏型を少し意識し⇒ルート3では梁降伏型を目指すけど、やらなくてもOK⇒ルート2だと、梁降伏型絶対!
というような設計体系が、現状の鉄骨造の計算になっています。
ルート2という計算手法は、とても頭の固い柔軟性の無い子に育っておりまして。平面的、立面的に剛性の偏りは許されないし、上記のように、梁降伏型も絶対。
だったらルート3で設計しちゃうわ、というのが設計者の本音でしょう。なんでこんなルートがあるの、改めてそう思っちゃいました(話のオチは変わってしまったけど)。