以前、『構造設計者の倫理観』というタイトルで記事を書きました。その数日後、エンジニアの倫理観が問われた事件が起きたのです。
事件が起こる前、僕はこのように書きました。『エンジニアの倫理観は薄氷の上に成り立っている。』
起きてしまった偽装事件
そして現実に起きてしまった東洋ゴムの免震ゴム偽装事件です。東日本大震災の月日から2日後の発表だけに、世間の人々にも強烈な印象を与えたでしょう。
大臣認定品の偽装とは?
今回は『大臣認定品』が偽装されました。大臣認定品とは簡単に言えば国土交通大臣のお墨付きの製品です。
建築基準法で網羅できていない新技術や構造方法は大臣認定を取得します。取得すれば、建築設計で用いることが可能です。
大臣がお墨付きを出した製品が偽装されたわけですから国交省も怒り狂っています。予想通り、国交省は免震ゴムの大臣認定品を取消しました。
つまり、東洋ゴムの免震装置を使用している建物は違法建築に変わったのです。
国交省では、「大臣認定不適合や大臣認定不正取得は、国民の不信・不安を高めることにつながり、断じてあってはならない」と判断。既に大臣認定を受けている全ての免震ゴムについて調査を実施する。
とのことです。
違法⇒適法建築物にするためには?
手段は2つです。
1.現状の免震ゴムの性能で建物が安全であることを証明する
2.再び大臣認定を取り直して、免震ゴムを取り換える。
恐らく取り替え工事となるでしょう。
東洋ゴムは何を偽装したのか?
簡単に言います。東洋ゴム側が数値を誤魔化して審査側を騙した。
審査する側がいとも簡単に騙されたと思いますが高度な計算になるほど中身が見えづらい。審査期間を長くかけることはできません。そのため審査側も細かい中身の数字までチェックしていません。
せいぜい計算のコンセプトや、考え方、ざっと数字を当たってチェック終了です。
倫理観について。僕の単純な疑問。
『エンジニアの倫理観はどうやって磨けばよいか?』ということ。
東洋ゴム事件に関しては、『製品の納期』が担当者の技術者倫理を壊しました。仕事の納期が倫理観を脅かすという事例は珍しくない話です。
だから今回の事件も『そりゃ起きるよな』と内心思っているはずです。
国が取り組みことは東洋ゴムを罰するだけではありません。『技術者倫理を組織的に実施できるような組織環境を創ること』だと思います。