本の紹介

【書評】構造設計とは建物が壊れる理由を知ること。 

構造設計は、いかに部材を壊すか?と言われています。つまり、地震時に部材の壊れ方をイメージしてよりエネルギー吸収に優れた建物を設計する、という意味合いです。この話題の延長として、建物が壊れる理由をすることは構造設計の本質を探れる?、ような気がします。

そもそも、技術の失敗はエンジニアが一番目を向けたくない側面です。もちろん、過去の失敗があるからこそ今の技術があるのです。が、建築や土木技術の失敗=人の死に直結するので、失敗が起きても話題自体大きく取り上げられることがありません。ですから、建物が壊れる理由を知りたくても、知るきっかけが少ないのです。

今回紹介するズバリ『建物が壊れる理由』は、構造系の建築学生必読の『建築の構造』著者のマリオサルバドリー氏が執筆しています。と、いうことで今回は建物の成り立ちではなく、建物の崩壊にスポットライトを当てながら、本の紹介をしてきます。

 

初めて崩壊した建物は『バベルの塔』

旧約聖書に登場するバビロン人はかつて1つの言語で生活していました。現代に生きる我々では考えられないことです。私たちは日本語、英語、ロシア語、フランス語、様々な言語がありますね。当然、他国へ行けば言葉は通じません。しかし、言葉が1つで良いならこれほど便利なことはないでしょう。

これがバビロニアの人々を発展させます。数倍のスピードで言葉を交わすことで、益々技術が発達したバビロニアの人々は天国へ到達する塔を建設しました。これが、『バベルの塔』です。しかし、天国まで続く塔を建設することは神が許しませんでした。バビロニアの人々の『言語』を分けてしまったのです。

すると意思疎通が上手くいかなくなり、バベルの塔は無残にも崩壊しました・・・。このように、本書の始まりはバベルの塔について。僕は、神話が好きで一気に引き込まれましたね。天国まで到達する塔は、スカイツリーの何倍も高くなりそう。もちろん、バベルの塔は神話ですが、崩壊したバベルの塔も、スカイツリーのように末広がりの構造なら大丈夫だったかもしれません。

 

見抜けなかった破壊モード タコマ橋

アメリカに全長1600m超の橋が建設されました。タコマ橋と言います。斜張橋の構造で梁桁を、大きなポストからケーブルで引張っています。当時設計した担当者はその道の権威。周りからも優秀な設計者という評判だったようです。

その証拠に、同じような斜張橋の実績はいくつも行ってきました。自重はもちろん風荷重についても設計が行われました。しかし、無残にも崩壊のときがやってきます。ある日、この地域では強風が吹いていました。しかし、強風と言ってもタコマ橋は耐えられる風荷重のはずです。が、タコマ橋はぐにゃぐにゃと踊るように曲がり、崩壊しました。

実は、設計者が想定していなかった壊れ方があったのです。それが、ねじれです。風は何も水平から吹くとは限りません。斜め方向から吹き下げたり、吹き上げたりもします。また、タコマ橋はこれまで設計した橋とは違って幅員が狭い橋でした。幅が狭いと、ねじれ抵抗は弱くなります。

風が斜めから吹き上げたり、吹き下げる影響で梁桁(H鋼です)は上へ下へツイストしたのです。このツイストが連続することで次第に変形が大きくなり崩落へと繋がりました。

 

崩壊する建物の3割は人的要因によるもの。

実は、建物が崩壊する大きな要因は、人によるもの。人的要因も大きく見れば自然現象なので、致し方ないとも言えます。また、現代の構造設計はコンピューター依存となりました。技術の進歩が逆に新たな問題を生み出すことは常です。

盲目的にコンピューターを信頼することはとても危険です。特に、人的要因で一番多いのが入力ミスですよね。1つ1つの数字の意味が薄くなっている気がします。

 

まとめ

この他にも、建物が壊れる理由が数多く紹介されています。ビルに直接飛行機が突っ込んだことが理由であったり、地震だったり。または、接合部の設計不備が理由だったこともあります。

とにかく建物が壊れる理由は1つではありません。つまり、構造設計者は数多くのことを知識として知っていないとダメなんですね。構造設計とは、建物が壊れる理由を知ることです。参考書ではなく、読み物ですから手元において気軽に読んで読むのもいいかと思います。

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