ども、Tです。
現場が始まると、色々と変更が生じますよね。中でも杭の施工誤差(杭ズレ)は必ずと言っていいほど、発生します。杭芯ピタリの位置に設定するのは、中々難しいのです。
さて、構造屋として興味があるのは、杭の施工誤差が何ミリ発生したのか、ということ。今回は、そんな杭施工誤差が生じたときの対処法について考えます。
杭施工誤差によって、どの部材が影響するか?
杭ズレが生じると、どの部材が影響するのか。簡単です。地中梁に偏心応力が作用します。
というのも、柱芯位置はかわらずに杭芯位置(すなわち支点)が偏心するので、
- 偏心曲げ=支点反力×杭施工誤差
が追加されます。この偏心曲げは、地中梁だけで負担することが絶対条件。戻した応力を柱に伝える、なんてやってしまうと応力状態が滅茶苦茶になりますからね。
あらかじめ、杭の施工誤差は±100mmを考慮した地中梁の配筋とする。
実は杭施工誤差は、「あらかじめ検討しておく」ことが一番簡単です。但し、杭の施工誤差のあらかじめの検討を認めていない特定行政庁もあるので注意です。
とは言っても、内々で100mmくらいの杭ズレは考慮しておくと心理的に安心できます。地中梁の配筋は、最低でも1割程度の余裕を見込んでおけば良いでしょう。
杭施工誤差が生じたら、杭ズレを電算に入力して地中梁を再検討
先に述べたように、杭施工誤差のあらかじめの検討を認めていない特定行政庁もあります。この場合、現場が始まって杭芯の実測図が挙がってきたときに、杭ズレの検討を行いましょう。
検討は電算を使いましょう。「手計算じゃないとダメ」と言われる可能性もありますが、とりあえず電算に叩きこめば答えはでてくる。
「手計算じゃないとダメ」になった場合でも、電算の応力を使って地中梁を追加検討すればいいですし(とは言っても書類を纏める時間が掛かるケド)。
2本打ち杭の場合、それぞれの偏心距離の平均値とする。
1本打ちの杭ズレは、その値のまま電算に入力すればOKです。では2本打ちの杭は、というと平均値を用います。
元々2本打ちの杭の支点は、互いの杭の芯を支点と考えています。例えば柱に向かって左側の杭(杭A)が-10mm、向かって右の杭(杭B)が+10mm偏心した場合、これは、
- 偏心距離=(―10+10)/2=0
です。つまり、互いの杭の芯は変わっていないからです。一方、杭Aが-50mm、杭Bが+10mm偏心した場合、これは、
- 偏心距離=(―50+10)/2=-20
となります。
杭の上下方向(鉛直方向)のズレは、フーチングを平行移動させ対処する。
杭が上下方向にズレた場合、どうするか。この場合、杭ズレの数値と同様の値分、フーチングを平行移動させて対処します。
例えば、杭頭天端がー30㎜ズレたとしましょう。であれば、フーチングもー30下げます。理由は、杭の飲み込み長さを確保するためです。
杭の飲み込みが短くなると、適切なかぶりや杭頭補強筋の溶接長が満足されない可能性があります。
まとめ
- あらかじめ、杭の施工誤差は±100mmを考慮した地中梁の配筋とする。
- 杭施工誤差が生じたら、杭ズレを電算に入力して地中梁を再検討
- 2本打ち杭の場合、それぞれの偏心距離の平均値とする。
- 杭の上下方向(鉛直方向)のズレは、フーチングを平行移動させ対処する。