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降伏比は何を意味するのか?SS400をルート3で使って良い?

構造設計

SN材(建築用鋼材)は降伏比の上限規定しています。

なぜか?

皆さんご存知のように、降伏比が大き過ぎるとエネルギー吸収の観点で不利だからです。おさらいですが、降伏比とは降伏強度/破断強度の値。

なぜ、こんなものが必要か、もう少し詳しく読んでいきましょう。そもそもSN材はなぜできたのか?これは他サイトさんに詳しく書いてありました。

以下抜粋(JWESより)↓

一方,昭和56年6月に新耐震設計法が施工され,鉄骨造建築物では鋼材の塑性変形能力を活用して地震入力エネルギーを吸収させ,建築物の耐震安全性を確保しようとするものになった。

つまり,建築構造物の鋼材には,所定の応力で降伏し,しかも降伏後の変形性能が確保されることが求められることとなった。

このような状況では,JISの規格を満足しているSS400やSM490Aなどの鋼材を使用しても,新耐震設計法の思想や,建築固有の使用状況に対し,不都合が生じる可能性をはらんでいた。

と書いてあります。

鉄骨構造の設計ルートには、大まかに強度型と靭性型があります。規模の小さな建物は強度型でよいのですが、大きくなると部材の塑性を考慮しなければ、とても設計ができません。

そして、塑性設計法(その思想をもつ新耐震設計法)を満足させるために、SN材が開発されたのです。

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降伏比が極端に大きな部材の耐震性について

さて、SN材は降伏比の上限が80%までと規定されています。ここでは、降伏比が99%の部材を想定して、両者の耐震性について考えましょう。

まず、降伏比が99%の部材は現実にはありません。が、イメージしやすいので考えていきます。この部材は、降伏強度が大きい材料です。破断強度=400に対して、降伏強度=396。そのため、降伏して直後に破断しました。

ほとんど弾性材料と同じなので、その吸収エネルギーは三角形の面積です。

一方、降伏比が80%の場合、降伏してからもまだまだ変形します。変形が進み、その後破断強度に達しました。降伏強度を保ちながら変形している最中も、エネルギーは吸収しています。

吸収エネルギーは、近似的に菱形のような面積で表すことができます。両者の吸収できるエネルギー量の優劣は明らかです。

 

SS400材はルート3の設計に用いてもよいか?

僕自身、あまり理解していので恐縮ですが、ルート3の設計にSS400は用いて良いのでしょうか?あぁ、法律的にはもちろん良いですよ。

しかし、新耐震設計法の思想を満足させるために開発されたSN400材。降伏比の上限に規定がないSS400材を用いることは、果たして・・・?と思います。

エネルギー吸収の観点から適切でないように思いますが。

まぁ、Qu/Qunを満足しているからOKと言えるのかもしれませんけど。きちっとした説明ができない限り、塑性変形能力を期待する部材へSS400の使用は適切でないように思うのです。

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