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直流と交流って、どっちが変電所を多く要るの?
回生電力の肢も、使えるの?使えないの?
この記事の要点
直流き電方式とは、き電線を通じて電車線に直流の電気を送る方式のことです。
交流と比べたときの特徴は3つです。電食を考慮する、変電所を多く設置して間隔を短くする、運転電流と事故電流の判別が難しい。
そして回生電力を利用する方法がないと書いた肢は、2年度とも誤りにされています。
き電線は、電車線に電気を送るための電線です。
そのき電線から電気を受けて、実際にパンタグラフと接するのがトロリ線です。き電線とトロリ線はき電分岐でつながっています。
そこに流す電気が直流か交流かで、設備の作り方が変わります。違いの出どころは、送る電圧の高さです。令和5年度1級No.44の問題文が、その数値を書いています。交流き電方式は単相交流20,000V、直流き電方式は直流1,500V。開きは10倍以上です。
同じ電力を送るとき、電圧が低ければ電流は大きくなります。直流き電の電流が大きいのはこのためで、平成26年度1級No.45の選択肢4も「負荷電流が大きいので、変電所を多く設置する必要がある」と、理由ごと書いています。
直流き電で起きることの多くは、この「電流が大きい」から辿れます。
JIS E 2001:2002「鉄道-電車線路用語」 5202/5203
5202 き電線 電車線に平行して架設されるか,又はそれと並列接続で設置され,き電分岐点で給電したり,又は電車線の有効断面積を増大させるための架空電線。
5203 き電分岐 き電線からトロリ線に電気を供給するための,き電線とトロリ線との間の接続箇所。
直流と交流で並べ直すと、次のようになります。
| 項目 | 直流き電方式 | 交流き電方式 |
|---|---|---|
| 電食 | レール漏れ電流により、周辺の埋設金属体に発生する | レール電流漏えいによる電食は発生しない |
| 誘導障害 | ー | 通信線に発生する誘導障害への対策が必要 |
| 変電所の数 | 負荷電流が大きいので多く設置し、間隔を短くする | ー |
| 変電設備 | 交流を直流に変換する半導体整流器が要る(簡単ではない) | ー |
| 高調波 | き電用変電所から発生する | ー |
| 事故電流 | 運転電流が大きく、事故電流との判別が難しい | ー |
| トンネル断面 | 小さくできる | ー |
電食と誘導障害は、ちょうど裏返しの関係で出ます。電食の話が出たら直流の側、電食が発生しないと書いてあれば交流の側です。漏れ電流をどう減らすかは、帰線の漏れ電流の側で問われます。
変電設備と高調波は、どちらも整流器の話です。直流き電の変電所は交流を直流に変換するので、その機器が要ります。整流器があるから、変電設備は簡単ではなく、高調波も出ます。どちらも整流器から来ています。整流器が高調波を出すことと、その抑え方は高調波の抑制で扱っています。変電所に何を置くかは屋外変電所の施工にまとめました。
隣接する変電所と並列にき電する方式が標準的である、という肢も平成27年度・平成30年度・令和8年度の3年度で正しい側に置かれています。き電方式そのものの分かれ方はき電方式の種類で扱っています。
例えば、肢に「直流き電方式は交流き電方式に比べて変電所の間隔を長くできる」とあれば、そこで切れます。直流は電圧が低いぶん電流が大きくなり、電圧降下も大きいので、変電所は多く置いて間隔を短くします。
言い換えると、「電圧が低い側ほど、変電所を詰めて置く必要がある」ということです。数値を覚えていなくても、電圧の高低から向きを出せます。
この論点だけは、2年度とも誤りの側で出ています。
| 年度・級・問 | 誤りとされた記述 |
|---|---|
| 平成27年度 1級 No.45 | 変電所に整流器を用いているため、電気車の回生電力を利用する方法がない |
| 平成30年度 1級 No.45 | 回生電力は、同じ回線の他の列車で消費する以外に利用する方法がない |
どちらも「方法がない」で終わっています。では実際にどう使うのか。それは別の問題に書かれています。
令和元年度1級No.45は、回生失効の低減策として不適当なものを選ばせました。誤りは「12パルス整流器の設置」で、残る3つが正しい低減策です。
令和8年度1級No.41も、選択肢3で「回生電力失効対策として、複線区間では上下線一括き電が有効である」を正しい側に置いています。
つまり「他の列車で消費する以外に方法がない」は、少なくとも3つの意味で誤りです。戻す、融通する、貯める。方法はこの3通りがあります。
なお12パルス整流器は、令和7年度1級No.41でも電圧降下の軽減対策として誤りの側に置かれています。2年度とも、別の目的の機器として誤りに使われています。
同じ形の引っかけは、電圧フリッカでも使われます。そちらではSVR(自動電圧調整器)が、電圧調整の機器として正しいのにフリッカ対策としては誤りの側に置かれます。機器が正しくても、相手にしている現象が違えば誤りになります。
1級の第一次で、平成26年度No.45・平成27年度No.45・平成30年度No.45・令和5年度No.44・令和8年度No.41の5年度に出ています。誤りの作り方は2つです。
令和8年度No.41だけは型が違い、「三相電力をシリコン整流器で直流電力に変成するため、三相回路の電圧不平衡対策が必要である」が誤りとされました。前半の整流の話は正しく、後半の「対策が必要」が誤りの側です。この年度も、後半まで読まないと切れません。
電食あり、変電所は多く、判別は難しい。この3つが直流の側です。
直流き電方式の肢は、次の順に見ます。
混同しやすい語
直流と交流の変電所の数:直流のほうが負荷電流が大きく、変電所を多く設置して間隔を短くします。
電食と誘導障害:電食は直流でレール漏れ電流が埋設金属体を侵すもの、誘導障害は交流で通信線に生じるもので、対策が必要とされているのは交流の側です(平成26年度の正しい肢)。
き電線とトロリ線:JISでは、き電線は電車線に平行して架設されるか並列接続で設置される架空電線、き電分岐はき電線からトロリ線に電気を供給する接続箇所と定義されています。
トンネル断面:令和5年度では、直流き電方式はトンネル断面が小さくできるという肢が正しい側に置かれています。
電食を考慮する必要があるのは、直流と交流のどちらか?
直流です。交流き電方式はレール電流漏えいによる電食が発生しないという肢が正しい側に置かれています。
直流き電方式の変電所は、交流と比べてどうなるか?
負荷電流が大きいので、多く設置して間隔を短くします。隣接する変電所と並列にき電する方式が標準的に用いられています。
回生電力を、他の列車で消費する以外に使う方法は何通りあるか?
方法は次の3つです。
令和元年度1級No.45で、この3つが回生失効の低減策として正しい側に置かれています(誤りは12パルス整流器の設置)。だから「利用する方法がない」と言い切る肢は、平成27年度・平成30年度とも誤りです。
参考資料
※ この記事の規格・出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
問題文の主語が、年度によって直流と交流で入れ替わります。
平成26年度は「交流き電方式は電食が発生しない」、平成30年度と令和5年度は直流について「電食が発生する」。どちらが主語かを先に読んでから、電食の有無を当ててください。令和5年度は「交流き電方式(単相交流20kV)と比較した直流き電方式(直流1500V)」という前置きが付いています。