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架空絶縁帰線もクロスボンドも、正しい年と誤りの年があるよね。
対策の名前じゃなくて、どこが変わってるの?
この記事の要点
帰線路とは、走行レール又は帰線レール、それらの電気的接続及び変電所引込帰線からなる電気回路のことです。
対策の向きは3つだけです。帰線抵抗を小さくする、レールからの漏れ抵抗を大きくする、レール電位の傾きを小さくする。
試験は、対策そのものではなく、対策に付けた理由づけを書き換えて出してきます。
直流電気鉄道では、走行レールを電流の帰り道に使います。変電所から架線へ送った電流は、パンタグラフを通って車両に入り、車輪からレールへ降りて、レールを伝って変電所へ戻ります。
ところが、レールは大地から完全には絶縁されていません。枕木や道床を介して大地とつながっているため、戻る途中の電流の一部がレールから大地へ逃げます。これが漏れ電流です。
逃げた電流は大地の中を通り、途中に金属の水道管やガス管があればそこを通って変電所へ向かいます。電流が金属から大地へ出ていく側で、金属が溶けます。これが電食です。出題では「レール漏れ電流により、周辺の埋設金属体に電食が発生する」(平成30年度1級No.45・令和8年度1級No.41)が正しい肢として置かれています。
対策は、この逃げ道を通りにくくすることに尽きます。
まず用語の範囲を確かめます。
JIS E 2001:2002「鉄道-電車線路用語」 4101/4102/4103
4101 帰線路(return current circuit) 走行レール又は帰線レール,それらの電気的接続及び変電所引込帰線からなる電気回路。
4102 単線方式 走行レールが電気運転用電流の帰路の一部を形成するシステム。
4103 複線方式 帰線路を形成する導体が線路から絶縁されているシステム。
言い換えると、「走行レールそのものが電気回路の一部になっている」ということです。
例えば、レールを帰りの電流に使わず、別の導電レールを立てる方式もあります。この場合の導体は、同じJISで帰線レールと呼ばれています。
同 3201
3201 帰線レール 走行レールを帰線回路として使わずに,別途帰線電流を流すために用いられる導電レール。
5年度分の正しい肢を並べると、対策が3つの向きに分かれます。どれも、レールから大地へ逃げにくくするという1点に向いています。
| 向き | 正しい肢として出た対策 |
|---|---|
| 帰線抵抗を小さくする | ロングレールを採用する/クロスボンドを増設する |
| レールからの漏れ抵抗を大きくする | 道床の排水をよくする |
| レール電位の傾きを小さくする | 変電所数を増加してき電区間を短くする/変電所への架空絶縁帰線を多数設ける |
帰線抵抗が小さいほど、電流はレールを通ったほうが楽になります。逆に、レールから大地へ出る側の抵抗が大きいほど、逃げにくくなります。どちらも、レールと大地のどちらが通りやすいかという比べ方です。
3つ目は、電流を押し出す力そのものを弱める向きです。レール電位の傾きとは、レールに沿って離れるほど電位がどれだけ変わるかという度合いです。この傾きが緩いほど、レールと大地の間の電位差も小さくなり、大地へ押し出す力が弱まります。
なお、ロングレールはJISに長さの定義があります。
JIS E 1001:2001「鉄道-線路用語」
ロングレール 200m以上の長さのレール。
(参考)定尺レール 標準長さのレール。
ここがこの問題の本体です。5年度に出た20の肢を、書かれ方でまとめると次のようになります。
| 肢の書かれ方 | 出た年度(1級 第一次) | 扱い |
|---|---|---|
| 道床の排水をよくして、レールからの漏れ抵抗を大きくした | 平成29・令和元・令和4・令和7 | 正しい |
| 変電所数を増加し、き電区間を短縮(縮小)した | 令和元・令和4・令和7 | 正しい |
| ロングレールを採用して、帰線抵抗を小さくした | 平成29・令和元 | 正しい |
| クロスボンドを増設して、帰線抵抗を小さくした | 平成29・令和4 | 正しい |
| 変電所への架空絶縁帰線を多数設け、レール電位の傾きを小さくした | 令和7 | 正しい |
| 理由づけを付けない形(道床の排水を良くする/クロスボンドを増設する/架空絶縁帰線を設ける) | 平成26 | 正しい |
| 架空絶縁帰線を設けて、レール電位の傾きを大きくした | 平成29・令和元・令和4 | 誤り |
| き電用の変電所数を減らす | 平成26 | 誤り |
| クロスボンドを減らし、帰線抵抗を大きくした | 令和7 | 誤り |
架空絶縁帰線もクロスボンドも、正しい肢と誤りの肢の両方に出ています。対策の名前は同じで、変わっているのは後半だけです。
それがはっきり分かるのが平成26年度です。この年度だけ、肢に理由づけが付いていません。「架空絶縁帰線を設ける」とだけ書かれた肢は、正しい側に置かれています。対策そのものは正しいということです。
ところが平成29年度から令和4年度までは、同じ対策に「レール電位の傾きを大きくした」を付けて3年度とも誤りにされ、令和7年度には「傾きを小さくした」を付けて正しい肢になりました。正しい向きは、令和7年度の肢そのものが示しています。
クロスボンドも同じで、増設して抵抗を小さくするのが正しい向き、減らして抵抗を大きくするのが誤りの形です。
変電所の数だけは、平成26年度に単独で問われました。「減らす」と書いた肢が誤りで、以後の3年度は「増加し、き電区間を短縮(縮小)した」の形で正しい側に置かれています。
3つの向き、すなわち帰線抵抗は小さく、漏れ抵抗は大きく、レール電位の傾きは小さく。ここから外れた肢が答えです。
1級の第一次で、平成26年度No.65・平成29年度No.65・令和元年度No.65・令和4年度No.77・令和7年度No.74の5年度に出ています。いずれも「不適当なものはどれか」を選ぶ形で、肢の並びもほぼ同じです。
誤りの作り方は2つに絞られます。
平成29年度・令和元年度・令和4年度は、誤り肢が一字一句まで同じです。この1文を覚えるだけで3年度ぶん切れます。
令和7年度だけは、その1文が「傾きを小さくした」に直されて正しい肢の側へ移り、代わりにクロスボンドが誤りの側へ回りました。1文を覚えるだけでは足りず、向きで判断する必要があります。
帰線の漏れ電流の肢は、次の順に見ます。
混同しやすい語
帰線抵抗と漏れ抵抗:帰線抵抗は小さくする側、レールからの漏れ抵抗は大きくする側です。向きが逆なので、どちらの抵抗の話かを先に読みます。
単線方式と複線方式:JISでは、走行レールが帰路の一部になるものが単線方式、帰線路を形成する導体が線路から絶縁されているものが複線方式と定義されています。列車の線路が1本か2本かという意味ではありません。
走行レールと帰線レール:帰線レールは、走行レールを帰線回路に使わずに別途設ける導電レールです(JIS E 2001 3201)。
ロングレールと定尺レール:ロングレールは200m以上の長さのレールです(JIS E 1001)。
帰線路とは何か?
走行レール又は帰線レール、それらの電気的接続及び変電所引込帰線からなる電気回路です(JIS E 2001:2002 4101)。
漏れ電流を減らすとき、帰線抵抗とレールからの漏れ抵抗は、それぞれどちら向きにするか?
帰線抵抗は小さくし、レールからの漏れ抵抗は大きくします。ロングレールやクロスボンドが前者、道床の排水が後者として出題されています。
架空絶縁帰線を設けるとき、レール電位の傾きはどちら向きにするのが正しいか?
小さくする側です。令和7年度1級No.74で「変電所への架空絶縁帰線を多数設け、レール電位の傾きを小さくした」が正しい肢に置かれています。傾きを大きくしたと書いた形は、平成29年度・令和元年度・令和4年度の3年度とも誤りとされています。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の規格・出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
対策の名前だけを見ると、4つの肢が全部それらしく見えます。読むべきは後半の理由づけです。
「架空絶縁帰線を設ける」も「クロスボンド」も、正しい肢として出た年度があります。誤りにされたのは、そこに逆向きの一句を付けた形です。対策名で判断せず、文の後半まで読んでください。