令和5年度 1級電気工事施工管理技士 第一次検定 No.44は、交流き電方式と比較した直流き電方式に関する記述として、不適当なものを選ぶ問題です。
この問題は、直流をつくるのに何が要るかを分かっているかを問うものです。整流器が要るので、変電設備は交流より複雑になります。
簡単なのは交流のほうです。
正解:選択肢1(変電設備が簡単である)
> この論点をやさしく解説:直流き電方式とは?交流き電との違いを電食と変電所の数で整理
| 選択肢 | 内容 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 変電設備が簡単である | 整流器が要り複雑。不適当 |
| 2 | 地下埋設物の電食を考慮する | 直流特有の問題。適当 |
| 3 | 変電所間隔を短くする必要がある | 電圧が低く電流が大きい。適当 |
| 4 | トンネル断面が小さくできる | 絶縁距離が短くて済む。適当 |
不適当なのは選択肢1です。
引っかけの核心は、直流1,500Vが交流20kVより低い電圧なので、設備も小ぶりで簡単そうに思えるところです。電圧の高さと設備の複雑さは別の話です。
電力会社から届くのは交流です。直流き電にするには、変電所で交流を直流に変えなければなりません。
| 方式 | 変電所に置くもの | 設備 |
|---|---|---|
| 直流 | 変圧器+整流器 | 複雑になる |
| 交流 | 変圧器だけ | 簡単 |
交流き電なら電圧を下げるだけで電車線へ送れます。直流はそこに整流器が加わるうえ、大きな電流を扱うので機器も大きくなります。
そのかわり、直流は車両側が簡単になります。かつては車両に変圧器や整流器を積む必要がなかったので、直流が広く使われました。複雑さを地上に置くか車両に置くかの違いです。
選択肢3の変電所間隔は、電圧の低さから来ます。
同じ電力を送るとき
電力 P = 電圧 V × 電流 I
電圧が低いほど、同じ電力を送るのに必要な電流は大きい
電流が大きいと電圧降下(I×R)も大きくなる
直流1,500Vは交流20kVの10分の1以下です。同じ電力なら電流は10倍以上になり、電圧降下も大きくなります。だから変電所を数kmごとに置いて、電圧が下がりすぎないようにします。
| 項目 | 直流1,500V | 交流20kV |
|---|---|---|
| 変電所間隔 | 数km と短い | 数十km と長い |
| 電食 | 起きる | ほとんど起きない |
| 絶縁距離 | 短くてよい | 長く要る |
| 通信誘導障害 | 小さい | 大きい |
選択肢2の電食は、直流だけに起きる現象です。レールに流れた帰線電流の一部が大地へ漏れて、近くの水道管やガス管を通って変電所へ戻ります。
電流が金属から大地へ出ていく場所で、その金属が溶け出して穴があきます。交流は向きが絶え間なく入れ替わるので、溶け出しと戻りが打ち消し合ってほとんど進みません。
選択肢4のトンネル断面は、絶縁に必要な距離の差です。電圧が低ければ電車線と天井の間を詰められるので、トンネルを小さく掘れます。地下鉄が直流を使う理由の1つです。
直流き電方式の変電設備が交流より複雑なのはなぜか。
電力会社から来る交流を直流に変える整流器が必要なためです。交流き電なら変圧器で電圧を下げるだけで済みます。
電食が直流き電で問題になるのはなぜか。
レールから漏れた帰線電流が地下の金属管を通って戻る際、電流が金属から出ていく場所で金属が溶け出すためです。交流は電流の向きが入れ替わるのでほとんど進みません。
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月