令和5年度 1級電気工事施工管理技士 第一次検定 No.43は、電気鉄道におけるトロリ線の温度上昇対策として、不適当なものを選ぶ問題です。
この問題は、温度上昇の原因が何かを絞り込めるかを問うものです。熱の元は電流による抵抗損なので、抵抗を下げるか熱に強くするかの2方向です。
硬点は集電の追随の話で、熱とは別です。
正解:選択肢3(硬点を少なくする)
> この論点をやさしく解説:パンタグラフの離線とは?硬点を減らす理由と防止対策の整理
| 選択肢 | 内容 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 耐熱性の優れたトロリ線を使用 | 熱に強くする。適当 |
| 2 | 断面積を大きくする | 抵抗が下がる。適当 |
| 3 | 硬点を少なくする | 離線・摩耗の対策。不適当 |
| 4 | すり板は接触抵抗の少ないもの | 接触部の発熱が減る。適当 |
不適当なのは選択肢3です。
引っかけの核心は、硬点を減らすことが電車線路では確かに良いことなので、目的が違っていても正しく見えてしまうところです。硬点が引き起こすのは離線とアーク、そして偏った摩耗です。
トロリ線の温度が上がる理由は2つあります。
| 熱の出どころ | 式 | 減らし方 |
|---|---|---|
| トロリ線自身の抵抗損 | I²R | 断面積を大きくして抵抗Rを下げる |
| すり板との接触抵抗 | I²R | 接触抵抗の少ないすり板を使う |
どちらも電流の2乗と抵抗の積です。抵抗を下げれば熱が減るという一本の筋で、選択肢2と4がつながっています。
選択肢1は、発熱そのものは減らせないが同じ温度に耐えられるようにするという別の方向です。銀入り銅トロリ線などは、軟化する温度が高くなっています。
硬点は、これらとは別の問題です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 硬点とは | 金具などが付いていて、電車線が上下に動きにくくなっている点 |
| 起きること | パンタグラフが追随できず離線する。アークが出る |
| 対策の目的 | 集電性能の確保と、局部的な摩耗の防止 |
硬点があると、そこでパンタグラフが跳ねて電車線から一瞬離れます。離れた瞬間にアークが飛び、その点だけが局部的に傷みます。だから硬点を減らすのは正しい施工ですが、狙っているのは温度ではありません。
電車線がたわむ量を場所ごとにそろえることを、押上げ量の均一化といいます。ちょう架方式やハンガの間隔を工夫して、どこでも同じように動くようにします。
選択肢4のすり板は、パンタグラフの上でトロリ線に接する部品です。
| すり板の材質 | 特徴 |
|---|---|
| カーボン系 | トロリ線を傷めにくいが、接触抵抗はやや大きい |
| 鉄系・銅系 | 接触抵抗が小さく、大電流に向く |
接触抵抗が大きいと、その一点に熱が集中してトロリ線が局部的に高温になります。とくに停車中や低速走行では同じ場所が接し続けるので、影響が出やすくなります。
硬点を少なくするのは何のためか。
パンタグラフが追随できずに離線し、アークが出て局部的に摩耗するのを防ぐためです。集電性能の確保が目的で、温度上昇の対策ではありません。
トロリ線の断面積を大きくすると温度上昇が抑えられるのはなぜか。
抵抗が小さくなり、電流の2乗と抵抗の積で決まる発熱が減るためです。
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月