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トロリ線の用語が4つも5つも出てきて、どれがどれなの?
この記事の要点
トロリ線の勾配とは、隣り合う二つの支持点でのトロリ線の高さの差と、径間長との比率のことです。比率なので、長さそのものではありません。
紛らわしいのが径間です。こちらは支持点から次の支持点までの区間そのものを指します。
令和8年度の1級では、この勾配に径間の説明を貼り付けた肢が誤りとして出ました。
トロリ線まわりの用語は、「何と何の間を測っているか」で1つずつ分かれています。
だから覚え方も、語の意味を丸暗記するのではなく、測る起点と終点をそろえて並べるのが早いです。
まず、トロリ線そのものの定義から確認します。
JIS E 2001:2002 電車線路用語 2204(トロリ線)
架空電車線において集電装置が接触する電気導体
パンタグラフがこすりながら電気を取り込む、あの1本の電線がトロリ線です。
そのトロリ線の勾配は、次のように定義されています。
JIS E 2001:2002 電車線路用語 2513(トロリ線のこう配)
隣接する二つの支持点において、レール面から測ったトロリ線の高さの差と径間長との比率
言い換えると、「高さの差を、その区間の長さで割った値」ということです。
例えば、支持点の間隔が50mで、その両端でのトロリ線の高さが5.00mと5.05mだったとします。
このとき高さの差は0.05mなので、勾配は0.05÷50となります。
ここで押さえておきたいのは、勾配を出すのに径間の長さが分母として要るという点です。
勾配と径間は、こうして計算の中で隣り合います。関係が近いからこそ、試験では入れ替えられます。
架高やサグを読むには、トロリ線が1本だけで張られているわけではないことを先に押さえます。
JIS E 2001:2002 電車線路用語 1103(架空電車線)
上部車両限界の上方(又は側方)に設置し、屋根に取り付けられた集電装置を通じて車両に電気エネルギーを供給する電線
この架空電車線という大きなくくりの中に、トロリ線が含まれます。
JIS E 2001:2002 電車線路用語 2201(ちょう架線)
1本又は2本のトロリ線を直接又は間接にちょう架する(線路方向の)より線
ちょう架線は、トロリ線を上からつり下げるための線です。
つり下げに使う金具にも名前が付いています。
| 用語 | JISの定義 |
|---|---|
| ハンガ | トロリ線を直接ちょう架するのに用いる金具(2402) |
| ドロッパ | スパン線から振止スパン線を、ちょう架線から補助ちょう架線又はトロリ線を、補助ちょう架線からトロリ線をちょう架するために用いられる部品(2402) |
言い換えると、「上にちょう架線、下にトロリ線、その間を金具でつないでいる」ということです。
この上下の関係が分かると、架高という語の意味がそのまま読めます。
架高は、線と線の間を測る語です。レール面は出てきません。
4つとも「垂直か水平か」「どこを起点にするか」で分かれます。
| 用語 | 起点と終点 | JISの定義 |
|---|---|---|
| 高さ | レール面 → トロリ線 | トロリ線のレール面に対する垂直な高さ(2512) |
| サグ | 支持点 → 径間中央点 | トロリ線の支持点の高さと径間中央点の高さとの差(2510) |
| 架高 | ちょう架線 → トロリ線 | 支持点で測定された(主)ちょう架線とトロリ線との間の垂直距離(2505) |
| 径間 | 支持点 → 次の支持点 | 支持点から次の支持点までの架空電車線の区間(2504) |
ここでグループに割ると、見え方が変わります。
垂直方向を測るのが3つ、水平方向の区間を指すのが1つです。
勾配だけが、この4つのどれとも違って比率です。
混同しやすい語
勾配と径間:勾配は高さの差と径間長との比率、径間は支持点から次の支持点までの区間です。勾配の計算に径間長を使うので隣り合いますが、別の語です。
サグと架高:どちらも垂直方向の差ですが、サグは同じトロリ線の支持点と中央点を比べ、架高は支持点でちょう架線とトロリ線を比べます。
高さと偏位:高さは垂直方向で、偏位は水平方向です。偏位はトロリ線の軌道中心面からの偏りの寸法(2514)で、パンタグラフのすり板を平均して摩耗させるために付けます。
1級では、この4語の定義を並べて誤りを選ばせる形が令和元年度と令和8年度に出ています。引っかけは大きく2つです。
| 年度・級・問 | 問われ方 | 引っかけ |
|---|---|---|
| 令和8年度 1級 第一次検定 No.40 | JIS上の用語の定義として誤っているものはどれか | 勾配の位置に径間の定義(支持点から次の支持点までの区間)を置いた ←① |
| 令和元年度 1級 学科試験 No.44 | JIS上、不適当なものはどれか | 架高の位置に高さの定義(レール面に対する垂直な高さ)を置いた ←① |
令和8年度で正しくは、勾配は高さの差と径間長との比率です。区間そのものを指す語ではありません。
令和元年度で正しくは、架高は支持点におけるちょう架線とトロリ線との垂直距離です。レール面から測る語ではありません。
2年度とも、入れ替えに使われたのは同じ問の中に並んでいる語でした。
架高については、平成29年度1級No.44の選択肢2「支持点におけるちょう架線とトロリ線との垂直間隔を、架高という。」が正しい側に置かれています(この問の答えは選択肢3のコネクタの肢)。定義そのままの形で出た年度です。
4語を覚えるより、起点と終点の組み合わせを4通り覚えるほうが速いです。
4つの語が並んだときは、次の順に見ると絞り込めます。
この4つで足りるのは、JISの定義がどれも「起点」「終点」「向き」の3つで書かれているからです。
例えば架高なら、起点がちょう架線、終点がトロリ線、向きは垂直となります。
逆に、この3つのどれかが説明文から抜けていたら、別の語の定義を持ってきた肢を疑います。
| 用語 | 起点 | 終点 | 向き・単位 |
|---|---|---|---|
| 高さ | レール面 | トロリ線 | 垂直・長さ |
| サグ | 支持点のトロリ線 | 径間中央点のトロリ線 | 垂直・長さ |
| 架高 | ちょう架線 | トロリ線 | 垂直・長さ |
| 径間 | 支持点 | 次の支持点 | 水平・区間 |
| 勾配 | 支持点のトロリ線 | 隣の支持点のトロリ線 | 高さの差÷径間長・比率 |
トロリ線の勾配は、何と何から求めるか?
隣り合う二つの支持点でのトロリ線の高さの差と、径間長です。その比率が勾配で、長さではありません。
サグと架高は、それぞれどこの差を測っているか?
サグはトロリ線の支持点の高さと径間中央点の高さとの差です。架高は支持点における、ちょう架線とトロリ線との間の垂直距離です。
「支持点から次の支持点までの架空電車線の区間」は、どの語の定義か?
径間です。この説明を勾配のものとして出した肢が、令和8年度の1級で誤りとされました。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の規格・出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
勾配という語は、道路や配管では「高さの変化の度合い」として長さ抜きで語られることがあります。
トロリ線の勾配は径間長で割った比率と定義されているので、区間の長さがセットで要ります。ここが道路や配管の感覚と違うところです。