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多導体の問題って、1級でも2級でもよく出るよね。
増えるものと減るものが混ざって、どっちがどっちなの?
この記事の要点
多導体方式とは、架空送電線路の1相を複数の電線で構成する方式のことです。
電線を複数に分けて離して張ると、見かけの太さ(等価半径)が大きくなります。この1点から、ほとんどの特徴が説明できます。
太くなれば表面の電界が緩むのでコロナが起きにくくなり、静電容量は増え、インダクタンスは減ります。その代わり、風や氷雪を受ける面積は増えます。
多導体の特徴は「見かけの太さが増える」の一点から出てきます。
増えるものと減るものを、この理屈で振り分けます。
架空送電線路では、1相を1本の電線で張るのが基本です。これが単導体です。
電圧が高くなると、電線の表面の電界が強くなりすぎてコロナ放電が起きます。放電は電力を無駄に消費し、ラジオ受信障害の原因にもなります。
そこで、1相を複数の細い電線に分けて、間隔を空けて張ります。これが多導体方式です。
合計の断面積は単導体と同じでも、離して並べれば電気的には1本の太い電線として振る舞います。この見かけの太さを等価半径といいます。
いちばん狙われるのが静電容量です。「小さい」「減少する」と書いた肢は、令和2年度1級No.11・令和6年度2級(前期)No.8・令和8年度2級(前期)No.15の3年度とも誤りとされました。令和7年度1級No.10では「静電容量が大きい」が正しい肢に置かれています。
言い換えると、「静電容量は増える側の仲間」ということです。
5年度分の正答肢を並べると、次のように分かれます。
| 増える・大きくなる | 減る・小さくなる |
|---|---|
| 静電容量 | インダクタンス |
| 送電容量 | 表皮効果 |
| 系統安定度(向上する) | コロナ損失 |
| 風圧や氷雪荷重 | 電線表面の電位傾度 |
右の列は、すべて見かけの太さが増えたことから出てきます。
表面が広がれば電界が分散するので電位傾度が下がり、その結果コロナ損失も減ります。逆にコロナ開始電圧は高くなります。放電が始まるまで、より高い電圧に耐えられるという意味です。
インダクタンスも、導体が太いほど小さくなる量です。表皮効果は電線1本ずつが細くなるぶん影響が小さくなります。
左の列も同じ理屈です。太くなれば大地や他相との静電容量は増えます。インダクタンスが減ればリアクタンスが減るので、送電容量が増え、系統安定度も上がります。
ただし風圧や氷雪荷重だけは電気の話ではありません。電線の本数が増えるので、風や雪を受ける面積がそのまま増えます。ここだけ「増える」の意味が違います。
例えば、超高圧の送電線を見上げると、1相が2本や4本の電線で張られているのが分かります。あれは電線を太くする代わりに、細い線を離して並べてコロナを抑えている形です。
単導体で同じことをしようとすると、電線そのものを太くするしかありません。太い電線は重く、鉄塔も大きくなります。細い線を分けて張るほうが、同じ効果を軽く得られます。
コロナ開始電圧は高くなるという肢が、令和2年度に正しい側で置かれています。
風圧や氷雪荷重だけは、増えても利点ではありません。電線の本数が増えるためです。
ここで増減する静電容量とインダクタンスは、線路定数の4つに含まれます。
「コロナ損失が減る」は、多導体の特徴を並べた問だけの話ではありません。コロナそのものを主題にした問で、多導体が答えの位置に置かれています。
令和4年度 2級 第一次(後期)No.10 選択肢3(公表正答は選択肢3)
単導体より多導体の方が発生しやすい。(架空送電線に発生するコロナ放電に関する記述として不適当)
多導体は見かけが太くなるぶんコロナが起きにくいので、選択肢3が誤りです。同じ4肢が令和元年度2級(前期)No.10でも並びました。そちらは選択肢3と選択肢4が入れ替わっていて、多導体の肢は選択肢4の位置です。
もう1つ、対策の側から問われた年度もあります。
令和5年度 1級 第一次 No.24 選択肢1・選択肢3(公表正答は選択肢1)
選択肢1(誤りの側) 多導体の場合、素導体数を減らす。
選択肢3(正しい側) より太い電線を使用する。
素導体とは、多導体を構成する1本ずつの電線のことです。本数を減らすと見かけの太さが戻ってしまうので、対策としては逆向きです。選択肢3の「より太い電線を使用する」が正しい側に置かれているので、太くする方向が対策だと同じ問の中で確かめられます。
「表皮効果が減る」は、平成28年度1級No.12で誤りの向きにして答えにされました。正しい向きは、表皮効果そのものを主題にした問に置かれています。
令和元年度 1級 学科 No.23 選択肢3
合計断面積が等しい場合、単導体よりも多導体の方が表皮効果の影響が小さくなる。
合計断面積が同じでも、多導体は1本ずつが細くなります。表皮効果は電線が太いほど中心部が使われなくなる現象なので、細く分けたほうが影響は小さくなります。
表皮効果の向きそのものは、令和5年度1級No.23と令和7年度1級No.19の2年度で確定しています。周波数が高いほど表皮効果は大きくなるという向きです。
多導体には、単導体には無いものが2つあります。
1つはスペーサです。複数の電線を離して張るので、その間隔を保つ部材が要ります。
令和4年度2級(後期)No.17では、「多導体では、短絡電流による電磁吸引力や強風により電線相互が接近や接触することを防止するため、電線相互の間隔を保持する目的で取り付ける」という説明の機材として、スペーサが答えになりました。
短絡電流が流れると、電線どうしが磁力で引き合います。離して張った意味が無くなるので、押さえておく必要があります。
もう1つはサブスパン振動です。令和7年度1級No.18では、「多導体に固有のもので、風上側導体の後流によって風下側導体が不安定となるために起きる自励振動」という説明に該当する現象として出題されました。
前の電線が乱した風が、後ろの電線を揺らします。電線が並んでいる多導体でしか起きません。
なおギャロッピングは多導体固有ではありませんが、「単導体よりも多導体において発生しやすい」が正しい肢に置かれています(令和5年度1級No.21)。
スペーサそのものの役割は送電線路の資材に、サブスパン振動やギャロッピングはスリートジャンプにまとめました。
多導体そのものを主題にした問は、1級3年度・2級2年度の5年度です。引っかけは大きく2つです。
これに、コロナを主題にした問で多導体が答えになる形が2年度、コロナの抑制対策で素導体数が答えになる形が1年度加わります。
| 年度・級・問 | 誤りとされた記述 |
|---|---|
| 平成28年度 1級 学科 No.12 | 表皮効果が大きい ←② |
| 令和2年度 1級 学科 No.11 | 静電容量が小さい ←① |
| 令和6年度 2級 第一次(前期)No.8 | 静電容量が減少する ←① |
| 令和7年度 1級 第一次 No.10 | 送電容量が小さい ←① |
| 令和8年度 2級 第一次(前期)No.15 | 静電容量が減少する ←① |
5問のうち3問が静電容量でした。ここだけ押さえれば大半が読めます。
静電容量は増える。インダクタンスと表皮効果は減ります。
混同しやすい語
静電容量とインダクタンス:多導体では静電容量が増え、インダクタンスは減ります。逆向きです。
コロナ損失とコロナ開始電圧:損失は減り、開始電圧は高くなります。どちらもコロナが起きにくくなる向きです。
送電容量と合計断面積:出題では合計断面積を等しいとする条件が付きます。
多導体に固有の振動現象は何か?
サブスパン振動です。風上側の電線が乱した風で、風下側の電線が不安定になって起きる自励振動です。電線が並んでいる多導体でしか起きません。
多導体で電線相互の間隔を保つ部材は何か?
スペーサです。短絡電流による電磁吸引力や強風で電線どうしが接近・接触するのを防ぎます。
単導体と比べて、多導体の静電容量はどうなるか?
大きくなります。小さい、減少すると書いた肢は3年度とも誤りとされています。
多導体でインダクタンスと表皮効果はどうなるか?
どちらも小さくなります。
出題文に多くの年度で付いている条件は何か?
多導体の合計断面積は、単導体の断面積に等しいものとする、という条件です。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
出題文には「ただし、多導体の合計断面積は、単導体の断面積に等しいものとする」という条件が付いています。
この一文があるので、断面積が増えたから送電容量が増える、という読み方はできません。5年度のうち4年度でこの条件が付いています(令和6年度2級前期には付いていません)。