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フラッシオーバと逆フラッシオーバって何が違うの?
架空地線と埋設地線も、どっちがどっちの対策なの?
この記事の要点
フラッシオーバとは、がいし連の絶縁耐力を上回る異常電圧が侵入したときに起きる放電のことです。
電線から鉄塔へ抜けるのがフラッシオーバ、鉄塔の電位が上がって鉄塔から電線へ抜けるのが逆フラッシオーバです。
対策の器具は、守る相手がそれぞれ違います。架空地線は電線を雷の直撃から、埋設地線は鉄塔を、アークホーンはがいしを、アーマロッドは電線そのものを守ります。
送電線路の雷害対策は、どの部位を守る器具なのかで整理すると混ざりません。
名前が似ている器具どうしを入れ替えるのが、この分野の定番の引っかけです。
送電線の電線は、鉄塔に直接ぶら下がっているわけではありません。
電線と鉄塔の間には、何枚も連なったがいし連が入っています。がいしは絶縁体なので、ふだんは電線の電圧が鉄塔側へ抜けることはありません。
ところが雷や開閉サージのような異常電圧が入ると、がいし連が耐えられる電圧を超えてしまいます。
このときがいし連の表面を伝って一気に放電が起きるのがフラッシオーバです。
試験では「フラッシオーバは、がいし連の絶縁耐力を上回る異常電圧が侵入したときに発生する」という文が、正しい肢として繰り返し置かれています。
フラッシオーバは、電圧の高い電線側から鉄塔側へ抜ける放電です。
逆フラッシオーバは、その向きが反対になります。
雷が鉄塔や架空地線に落ちると、雷電流が鉄塔を通って大地へ流れます。このとき塔脚接地抵抗が大きいと電流が地面へ逃げきれず、鉄塔の電位が跳ね上がります。
鉄塔のほうが電線より高い電位になると、放電は鉄塔から電線へ向かって起きます。これが逆フラッシオーバです。
逆フラッシオーバは、起きる場所でさらに2つに分かれます。
向きが逆になるので、対策も変わります。鉄塔の電位を上げないことと、架空地線と電線を径間で近づけないことが、それぞれの答えになります。
鉄塔側は、埋設地線を地中に施設して塔脚接地抵抗を小さくします。電流が地面へ逃げれば鉄塔の電位は上がりません。
径間側は、たるみの大小で決まります。
架空地線のたるみを電線のたるみより小さくすれば、径間の中央でも架空地線が電線に近づきません。逆に大きくすると架空地線が余計に垂れ下がり、電線との間隔が詰まります。
塔脚接地抵抗を下げるのは架空地線ではなく埋設地線です。この2つを入れ替えた文が、誤りの肢として出されています。
雷害対策の器具は名前が似ていますが、守る相手で分かれます。
それぞれの器具が何を守るのかを並べると、次のようになります。
| 器具 | 守る相手 | はたらき |
|---|---|---|
| 架空地線 | 電線 | 電線の上方に張り、雷の直撃を代わりに受けます |
| 埋設地線 | 鉄塔 | 地中に埋めて塔脚接地抵抗を小さくし、鉄塔逆フラッシオーバを防ぎます |
| アークホーン | がいし | がいし連の両端に設け、放電をがいしから離してがいしの破損を防ぎます |
| アーマロッド | 電線 | 懸垂クランプ付近の電線に巻き付け、素線切れと放電時の溶断を防ぎます |
| 耐塩用がいし | がいし | 海岸地帯の汚損に備えます。がいしの個数を増やす方法もあります |
| 相間スペーサ | 電線どうし | 電線相互の接近・接触を防ぎます。逆フラッシオーバの対策ではありません |
最後の相間スペーサだけ、守る相手が雷ではなく電線どうしです。ここが入れ替えて出されます。
2級でも同じ器具が出ます。令和元年度 2級(前期)No.16は「電線の振動による素線切れ及びフラッシオーバ時のアークスポットによる電線の溶断を防止するため、懸垂クランプ付近の電線に巻き付けて補強する」という説明に当てはまる機材を選ばせる形で、選択肢3にアーマロッドが置かれました。令和7年度 2級(後期)No.23は「建築物等の雷保護システムに関する用語」を問い、選択肢1の架空地線が最も関係のないものとされています。架空地線は送電線路の器具で、建築物の雷保護システムの用語ではありません。
電線の振動を止めるダンパも同じ仲間で、雷害対策ではありません。
がいしが絶縁を保てるのは、表面が清浄なときです。
海に近い送電線路では、がいしの表面に塩分が付きます。表面が汚損されると、より低い電圧でも表面を伝って放電が起きるようになります。
つまり汚損されるとフラッシオーバ電圧は低下します。
言い換えると、「汚れるほど、より低い電圧で放電が起きる」ということです。
例えば、海に近い送電線路では、潮風でがいしの表面に塩分が付きます。同じ電圧でも、内陸の線路より放電が起きやすい状態になります。
この文は、年度によって「上昇する」と「低下する」で入れ替えて出されています。
海岸地帯の対策として、耐塩用がいしを使う方法と、がいしの個数を増やす方法が正しい肢に置かれています。どちらも、汚れても放電しにくくする方向の手当てです。
1級では平成27年度から令和8年度まで、ほぼ同じ4肢の組合せで出ています。引っかけは大きく3つのパターンです。
| 年度・級・問 | 誤りとされた記述 |
|---|---|
| 平成27年度 1級 学科 No.22 | 汚損されるとフラッシオーバ電圧が上昇する ←① |
| 平成30年度 1級 学科 No.22 | 架空地線のたるみを電線より大きくする ←① |
| 令和元年度 1級 学科 No.25 | 逆フラッシオーバを防止するため相間スペーサを設ける ←③ |
| 令和2年度 1級 学科 No.22 | 汚損されるとフラッシオーバ電圧が上昇する ←① |
| 令和4年度 1級 第一次 No.22 | 架空地線のたるみを電線より大きくする ←① |
| 令和6年度 1級 第一次 No.22 | がいしのフラッシオーバを防止するため相間スペーサを取り付ける ←③ |
| 令和8年度 1級 第一次 No.19 | 架空地線の敷設により塔脚接地抵抗値を小さくする ←② |
「アークホーン間隔は、遮断器の開閉サージでフラッシオーバしないように設定する」は、平成27年度・平成30年度・令和2年度・令和4年度の4年度で、いずれも正しい肢として置かれています。令和6年度と令和8年度にはこの肢がありません。
汚れれば低下。たるみは小さく。塔脚接地抵抗は埋設地線。相間スペーサは雷害対策ではありません。
混同しやすい語
架空地線と埋設地線:空に張るのが架空地線で、雷の直撃から電線を守ります。地中に埋めるのが埋設地線で、塔脚接地抵抗を小さくして鉄塔を守ります。
アークホーンとアーマロッド:アークホーンはがいし連の両端に設けてがいしの破損を防ぐもの、アーマロッドは懸垂クランプ付近の電線に巻き付けて電線の素線切れと溶断を防ぐものです。守る相手が、がいしか電線かで分かれます。
相間スペーサとダンパ:どちらも電線側の器具で、雷害対策ではありません。相間スペーサは電線相互の接近・接触を防ぎ、ダンパは電線の振動を防ぎます。
がいし表面が塩分などで汚損されると、交流に対するフラッシオーバ電圧はどうなるか?
低下します。上昇と書かれていれば誤りです。
径間逆フラッシオーバを防ぐには、架空地線のたるみをどうするか?
電線のたるみより小さくします。
塔脚接地抵抗を小さくして鉄塔逆フラッシオーバを防ぐのは、どちらの地線か?
埋設地線です。架空地線ではありません。架空地線は電線の上方に張って雷の直撃を受け止める側です。
相間スペーサは何を防ぐ器具か?
電線相互の接近・接触を防ぐ器具です。逆フラッシオーバの対策ではありません。
参考資料
※ この記事の出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
いちばん引っかかるのは、雷害対策の問題に雷害対策でない器具が混ざる形です。
相間スペーサは電線相互の接近・接触を防ぐ器具で、逆フラッシオーバとは関係がありません。それでも令和元年度1級No.25では「逆フラッシオーバを防止するため、相間スペーサを設ける」、令和6年度1級No.22では「がいしのフラッシオーバを防止するため、相間スペーサを取り付ける」が、それぞれ誤りの肢として置かれています。守る相手を逆フラッシオーバからがいしへ差し替えただけで、相間スペーサが雷害対策でないという点は変わりません。
器具の名前が出たら、まずそれが何を守る器具かを思い出してから、問題文の目的と合っているかを見ます。