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配電系統の電圧調整とは?電圧を上げる機器と下げる機器の使い分け

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電圧調整の機器って、たくさん出てくるよね。

どれが電圧を上げて、どれが下げるの?

この記事の要点

分路リアクトルとは、こう長が長い配電線路の軽負荷時の電圧上昇を抑えるために、末端部などに施設される機器のことです。

深夜のように負荷が軽い時間帯は、線路のほうが電圧を押し上げます。これをフェランチ現象といいます。

だから電圧調整の機器は、上げる側下げる側を分けて覚えます。上げるのが電力用コンデンサ、下げるのが分路リアクトルです。

電圧は、重い負荷では下がり、軽い負荷ではむしろ上がります。

だから調整の機器も、下げる側と上げる側の両方が要ります。

なぜ軽負荷時に電圧が上がるのか

送電線やケーブルには、電線と大地の間に静電容量があります。ここには進み位相の電流が流れます。

負荷が重いときは、モータなど遅れ位相の負荷が多いので、この進み電流は打ち消されます。

ところが深夜のように負荷が軽くなると、打ち消す相手がいなくなります。進み電流が線路のリアクタンスを通り、受電端の電圧が送電端より高くなります。これがフェランチ現象です。

負荷の重さで電圧の向きが変わる(模式図) 重い負荷のとき 送電端 受電端は下がる 軽い負荷のとき 送電端 受電端のほうが高い
負荷の重さで電圧の向きが変わることをイメージでつかむための模式図です。傾き・距離・電圧の値は実物どおりではありません。正しいのは、重い負荷では受電端が下がり、軽い負荷では受電端が送電端より高くなるという向きだけです。

出題では、フェランチ現象について次の3つが正しい肢に置かれています。

  • 電線路のこう長が長いほど著しい
  • 受電端電圧が送電端電圧より高くなる
  • 分路リアクトルを設置すると抑制できる

一方、「遅れ力率の負荷が多く使用されているときに発生しやすい」は令和7年度1級No.21で誤りとされました。遅れの負荷が多ければ、進み電流は打ち消されるからです。

分路リアクトルはどちら向きか

分路リアクトルは、この進み電流を吸収して電圧を下げる機器です。

穴埋めの形でも2年度出ています。「分路リアクトルは、深夜などの軽負荷時に誘導性の負荷が少なくなったとき、長距離送電線やケーブル系統などの進相電流による、受電端の電圧上昇を抑制するために用いる」が答えでした(令和元年度2級No.12・令和5年度2級後期No.8)。

言い換えると、「分路リアクトルは進み側を打ち消して電圧を下げる」ということです。

だから「分路リアクトルにより系統の遅れ力率を改善することによる電圧の調整」と書いた肢は、平成28年度2級No.20と令和元年度2級(前期)No.20の2年度とも誤りとされました。令和7年度2級(後期)No.18の「系統の力率を進ませるために分路リアクトルを接続し」も同じ型の誤りです。

遅れ力率を改善する側ではありません。そちらは電力用コンデンサの役目です。

電力用コンデンサは電圧を上げる側

1級では、コンデンサの向きを逆にした肢が出ています。

  • 令和3年度 1級 No.27:「こう長が長い配電線の末端で、軽負荷時の電圧上昇を抑制するために、電力用コンデンサを施設した」が誤りとされました。

同じ問題で、負荷時タップ切換変圧器・ステップ式自動電圧調整器・柱上変圧器のタップ変更は、いずれも正しい側に置かれています。

電力用コンデンサは、負荷と並列につないで進み無効電流を供給する機器です。遅れ側に偏った力率を戻すことで、結果として電圧が上がります。

例えば、工場でモータを多く動かしている時間帯は力率が遅れ側に振れ、電圧が下がります。そこにコンデンサを入れると電圧が回復します。上げる方向にしか働きません。

だから軽負荷時の電圧上昇の対策には使えません。「軽負荷時には系統電圧が上昇傾向になり、これを抑制するために電力用コンデンサを系統へ投入する」と書いた肢は、平成27年度1級No.20と令和元年度1級No.20の2年度とも誤りとされました。

コンデンサにはもう1つ性質があります。電圧調整が段階的になることです。入れるか切るかの2択なので、細かく合わせられません。「電力用コンデンサは電圧を連続的に調整できる」と書いた肢は、令和8年度2級(前期)No.6で誤りとされています。

連続的に調整したい場合は、静止形無効電力補償装置(SVC)を使います。

機器 出題での扱われ方
分路リアクトル 軽負荷時の電圧上昇を抑制する側
電力用コンデンサ 電圧上昇の抑制に使うと誤りとされる
負荷時タップ切換変圧器 変電所の送り出し電圧の調整
ステップ式自動電圧調整器 線路の途中に施設して線路電圧を調整
静止形無効電力補償装置 無効電力の供給による電圧の調整
柱上変圧器のタップ 二次側電圧の調整

電圧調整と関係のない機器を確認する

もう1つの引っかけは、そもそも電圧調整の機器でないものを混ぜる形です。

  • 柱上開閉器:令和2年度2級(後期)No.10と令和6年度2級(前期)No.7で、「配電線路の途中に設置することによる電圧の調整」が誤りとされました。
  • 直列抵抗器:令和4年度2級(前期)No.20で、「用いた電流の調整による電圧の調整」が誤りとされました。

開閉器は回路を開閉するものです。電圧を調整する装置ではありません。

機器は合っていても、置く場所で誤りになる

3つめの型は、機器の名前も役割も正しいまま、施設する位置だけを動かすものです。

令和6年度 1級 第一次 No.24 選択肢2(誤りの側。公表正答は選択肢2)

こう長が長い高圧配電線路の電圧降下を抑制するため、配電線の送り出し部にステップ式自動電圧調整器を施設する。

ステップ式自動電圧調整器は線路の途中に置きます。送り出し側の電圧は、令和3年度1級No.27の選択肢1にあるとおり負荷時タップ切換変圧器が受け持ちます(正しい側)。同じ機器でも、置く場所を変えると答えになります。

令和3年度1級No.27の選択肢2は「線路の途中に配電用(ステップ式)自動電圧調整器を施設した」で、こちらは正しい側でした。「途中」なら正しい側、「送り出し部」なら答えです。

同じ問の残る3肢は正しい側です。太い電線に張り替える(電圧降下の抑制)、末端部に分路リアクトルを施設する(軽負荷時の電圧上昇の抑制)、柱上変圧器内部のタップを変更して二次側電圧を調整する。分路リアクトルを末端部に置く形は、この年度で正しい側に確定しています。

過去問でどう問われたか

主題そのものの設問は1級2年度・2級6年度の7年度・8設問です(令和6年度だけ1級と2級の両方に出ました)。引っかけは大きく3つです。

  • ①機器の向きを逆にする:分路リアクトルと電力用コンデンサを入れ替えます。
  • ②無関係な機器を混ぜる:柱上開閉器や直列抵抗器を肢に置きます。
  • ③機器の位置を動かす:ステップ式自動電圧調整器を送り出し部に置きます。
年度・級・問 誤りとされた記述
平成28年度 2級 学科 No.20 分路リアクトルにより系統の遅れ力率を改善することによる電圧の調整 ←①
令和元年度 2級 学科(前期)No.20 分路リアクトルを接続し、系統の遅れ力率を改善することによる電圧の調整 ←①
令和3年度 1級 第一次 No.27 軽負荷時の電圧上昇を抑制するために、電力用コンデンサを施設した ←①
令和2年度 2級 学科(後期)No.10 配電線路の途中に柱上開閉器を設置することによる電圧の調整 ←②
令和4年度 2級 第一次(前期)No.20 直列抵抗器を用いた電流の調整による電圧の調整 ←②
令和6年度 1級 第一次 No.24 配電線の送り出し部にステップ式自動電圧調整器を施設する ←③
令和6年度 2級 第一次(前期)No.7 配電線路の途中に柱上開閉器を設置することによる電圧の調整 ←②
令和7年度 2級 第一次(後期)No.18 系統の力率を進ませるために分路リアクトルを接続し電圧を調整する ←①

令和6年度2級(前期)No.7は、令和2年度2級(後期)No.10と肢の並びまで同じ設問です。

上げるのがコンデンサ、下げるのが分路リアクトルです。

まちがえやすいポイント

「リアクトル」と付く機器でも、役割は同じではありません。

この記事の分路リアクトルは系統の電圧を下げる側、直列リアクトルは高調波の抑制などに使われる別の機器です。肢では「分路」か「直列」かを先に読みます。

混同しやすい語

分路リアクトルと電力用コンデンサ:電圧上昇を抑えるのが分路リアクトル、力率を改善して電圧を上げる側が電力用コンデンサです。

柱上変圧器と柱上開閉器:タップで電圧を調整できるのは変圧器です。開閉器は電圧調整の機器として扱われていません。

ステップ式自動電圧調整器の位置:線路の途中なら正しい側、送り出し部と書けば答えです(令和6年度1級No.24)。

理解度チェック

Q.

こう長が長い配電線路の軽負荷時の電圧上昇を抑えるには、何を施設するか?

分路リアクトルです。電力用コンデンサではありません。

Q.

ステップ式自動電圧調整器は、線路のどこに施設するか?

線路の途中です。令和6年度1級No.24は「送り出し部に施設する」と書いて答えにしました。

Q.

柱上開閉器は電圧調整の機器か?

違います。2年度で電圧調整の肢として誤りとされています。

まとめ

  • 分路リアクトル=軽負荷時の電圧上昇を抑える側。末端部に施設する。
  • 電力用コンデンサ=電圧を上げる側。電圧上昇の抑制に使えば誤り。
  • 「分路リアクトルで遅れ力率を改善」は、2年度で誤りとされている。
  • 負荷時タップ切換変圧器・ステップ式自動電圧調整器・静止形無効電力補償装置・柱上変圧器のタップは、いずれも正しい側。
  • 柱上開閉器と直列抵抗器は電圧調整の機器として扱われていない。
  • ステップ式自動電圧調整器は線路の途中。送り出し部に置いた肢が令和6年度1級No.24の答え。

参考資料

  • 一般財団法人 建設業振興基金 試験研修本部「電気工事施工管理技術検定 問題・正答肢」(公式サイト)1級 平成27年度No.20・令和元年度No.20・令和3年度No.27・令和6年度No.24・令和7年度No.21/2級 平成28年度No.20・令和元年度(前期)No.20・令和元年度No.12・令和2年度(後期)No.10・令和4年度(前期)No.20・令和5年度(後期)No.8・令和6年度(前期)No.7・令和7年度(後期)No.18・令和8年度(前期)No.6
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