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トロリ線に要る性能を4つ並べられると、どれも正しく見えてくる。
摩耗のほうも、電気的なの?機械的なの?
この記事の要点
トロリ線に要求される性能とは、耐摩耗性・引張り強度・耐熱性・耐食性など、パンタグラフが触れながら電気を受け取る電線に必要な性質のことです。
省令は電車線路に「電線による張力等に耐えること」と「支障なく集電することができること」を求めています。引張り強度が大きいことと、抵抗が低いことは、この2つにそのまま対応します。
トロリ線の摩耗は、電気的摩耗と機械的摩耗の2つに分かれます。機械的摩耗は、パンタグラフの押し上げ圧力とすり板の硬さで大きくなります。
トロリ線は、パンタグラフが触れたまま走る電線です。
そのため、次の4つが求められます。この4つが、そのまま出題の肢として並びます。
減り方のほうは、電気的摩耗と機械的摩耗の2つに分かれます。どちらにあたるかを入れ替えた肢が出ます。
求められる性能の根拠は、鉄道の省令にあります。
鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年国土交通省令第151号)第41条第3項
電車線路は、次の基準に適合するように施設しなければならない。
一 予想される最大風圧荷重、電線による張力等に耐えることができること。
二 予想される地震動のうち、最大規模の強さを有するものに対して、倒壊のおそれのないこと。
三 列車の速度及び車両の集電方法に応じ、支障なく集電することができること。
第一号が引張り強度、第三号が抵抗の話です。トロリ線はちょう架線から吊られて張力がかかるので、切れない強さが要ります。同時に、パンタグラフへ電気を渡すのが仕事なので、抵抗は低いほうが良いことになります。
さらに同じ省令の第87条は、電力設備を「列車等が所定の速度で安全に運転することができる状態に保持しなければならない」と定めています。減ってしまえば保てないので、耐摩耗性・耐熱性・耐食性はここに効いてきます。
| 求められる性能 | 向き | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| 耐摩耗性 | 優れている | パンタグラフがこすりながら通るので、減れば張力を保てなくなる |
| 引張り強度 | 大きい | 省令第41条第3項第一号「電線による張力等に耐えること」 |
| 耐熱性・耐食性 | 優れている | 電流による温度上昇と、屋外での腐食にさらされる |
| 抵抗(抵抗率) | 低い | 省令第41条第3項第三号「支障なく集電することができること」 |
この論点は2つの年度に出ていて、どちらも抵抗の肢が誤りにされました。言い回しは変わっています。
平成30年度 2級 前期 No.31/令和5年度 2級 前期 No.30
平成30年度は「抵抗率が高い」(選択肢1)、令和5年度は「電気抵抗が大きい」(選択肢3)です。
残る3肢は、耐摩耗性・引張り強度に加えて、平成30年度が耐熱性、令和5年度が耐食性でした。
「抵抗率が高い」と「電気抵抗が大きい」は言い方が違うだけです。肢の位置は1から3へ動きましたが、誤りにされた論点は動いていません。
言い換えると、トロリ線の抵抗を高い・大きいと書いた肢を探せば済むということです。集電が仕事の電線なので、抵抗が高くて良い理由がありません。
例えば、令和5年度2級前期No.30を見ます。引張り強度・耐摩耗性・耐食性の3つは「大きい」「優れている」と書かれました。電気抵抗の肢も「大きい」です。
他の肢と同じ言い方をしているのに、向きだけが逆になっているという形です。
なお、抵抗と電流の関係は架空単線式の記事でも扱っています。令和4年度2級後期No.30の肢には「交流き電区間においては、トロリ線の電流が小さいため、温度上昇はほとんどない」という書き方が置かれました。電流が流れれば熱が出るという前提が、この肢の裏にあります。
令和6年度1級No.40は、性能ではなく摩耗そのものを問いました。4肢は次の通りです。
機械的摩耗が何で決まるかは、別の年度の肢に書かれています。
令和4年度 2級 後期 No.30 選択肢4(正しい側)
トロリ線の機械的摩耗は、パンタグラフの押し上げ圧力が大きく、すり板が硬いものほど大きくなる。
押し上げ圧力もすり板の硬さも、パンタグラフとトロリ線が触れていることが前提です。離線は、その接触が切れている状態を指します。だから機械的摩耗にはあたりません。
離れた瞬間に何が起きるかは、電車線路の施工を問う肢に出ています。ちょう架線のハンガ取付箇所について、「アーク溶損を防止するために、保護カバーを取り付けた」が正しい側に置かれました(令和1年度2級前期No.43・令和6年度2級後期No.49)。アークが金属を損なうという前提が、ここに出ています。
混同しやすい語
抵抗と引張り強度:抵抗を高い・大きいと書いた肢は誤り、引張り強度を大きいと書いた肢は正しい側です。向きが逆になります。
電気的摩耗と機械的摩耗:機械的摩耗は押し上げ圧力とすり板の硬さで決まります。触れていることが前提なので、離線はここに入りません。
耐熱性と耐食性:熱に耐えるか、さびに耐えるかの違いです。どちらも正しい側の肢として出ました。
硬点:トロリ線が局部的に硬くなっている箇所です。離線防止の記事にまとめました。
偏位と溝摩耗:摩耗を1か所に集めないために、直線区間でもトロリ線を左右に振ります。トロリ線の偏位の記事で扱っています。
トロリ線の摩耗とレールの摩耗:どちらも「摩耗」ですが、減る相手が違います。レールの側はレール摩耗の記事にあります。
トロリ線の性能と摩耗は、3年度に出ています。
| 年度・級・問 | 問われ方 | 誤りにされた肢 |
|---|---|---|
| 平成30年度 2級前期 学科 No.31 | トロリ線に要求される性能(抵抗率・耐熱性・耐摩耗性・引張り強度) | 抵抗率が高い |
| 令和5年度 2級前期 第一次 No.30 | トロリ線に要求される性能(引張り強度・耐摩耗性・電気抵抗・耐食性) | 電気抵抗が大きい |
| 令和6年度 1級 第一次 No.40 | トロリ線の摩耗(2分類・パンタグラフの数・硬点・離線) | 離線による摩耗は機械的摩耗 |
性能を問う2年度は引張り強度・耐摩耗性・抵抗の3つが共通で、入れ替わるのは耐熱性と耐食性だけです。ただし文まで一字一句同じなのは「引張り強度が大きい。」の肢だけで、耐摩耗性は「耐摩耗性に優れている。」(平成30年度)と「耐摩耗性が優れている。」(令和5年度)で助詞が変わります。トロリ線を吊る側の話はトロリ線の勾配の記事にあります。
トロリ線の抵抗は高いほうが良いか、低いほうが良いか?
低いほうが良いです。省令第41条第3項第三号が電車線路に「支障なく集電することができること」を求めているので、電気を渡す妨げになる高い抵抗は求められません。
引張り強度が求められる根拠はどこにあるか?
省令第41条第3項第一号「予想される最大風圧荷重、電線による張力等に耐えることができること」です。
機械的摩耗は何によって大きくなるか?
パンタグラフの押し上げ圧力が大きく、すり板が硬いものほど大きくなります(令和4年度2級後期No.30の正しい肢)。
離線による摩耗が機械的摩耗にあたらないのはなぜか?
機械的摩耗は押し上げ圧力とすり板の硬さで決まり、どちらも接触していることが前提だからです。離線は接触が切れている状態を指します。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
「抵抗率」と「電気抵抗」は、本来は別の量です。
抵抗率は材料そのものの性質で、電気抵抗はその線1本の値です。同じ材料でも、線が長ければ電気抵抗は大きくなります。
ただしこの出題では、どちらの書き方でも誤りの肢として扱われました。平成30年度は「抵抗率が高い」、令和5年度は「電気抵抗が大きい」です。用語の違いで迷う必要はありません。