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偏位に上限があるのって、何が困るから?
ジグザグに張る理由も、摩耗のため?離線のため?
この記事の要点
偏位とは、トロリ線が軌道中心面からどれだけ左右にずれているか、その寸法のことです。
ずれが大きすぎると、パンタグラフからトロリ線が外れます。だから最大偏位量に上限が決められています。
その範囲で、支持点ごとに左右へ振るのがジグザグ偏位です。目的はすり板の局部磨耗を避けることで、離線を抑制するためではありません。
偏位は、パンタグラフから外れない範囲でわざと付けるものです。
上限がある理由と、わざと付ける理由の両方が論点になります。
定義は日本産業規格にあります。
JIS E 2001:2002 電車線路用語((トロリ線の)偏位)
トロリ線の軌道中心面からの偏りの寸法。
出題文では「レール中心に対するトロリ線の左右の偏り」という言い方で、2級の4年度とも正しい側に置かれています。基準になるのはレールの側です。
1級では、この定義そのものを別の用語と入れ替える形で問われました。平成25年度1級学科試験No.44の「支持点におけるちょう架線とトロリ線との垂直中心間隔を偏位という」は公表正答2、つまり誤りとされた肢です。ここで書かれているのは、規格が別の用語として定義しているものです。
JIS E 2001:2002 電車線路用語 2505(架高)
支持点で測定された(主)ちょう架線とトロリ線との間の垂直距離。
令和元年度1級No.44では逆に、「偏位とは、トロリ線の軌道中心面からの偏りの寸法のことをいう」が肢として並んでいます。規格の定義そのままの文です。
では、なぜ偏位に上限が要るのか。パンタグラフのすり板には幅があり、その幅の中にトロリ線が収まっていなければ集電できません。
偏位が大きくなりすぎると、トロリ線がすり板から外れます。令和8年度2級(前期)No.28では「偏いの増大は、パンタグラフの外れによる事故の危険性がある」が正しい肢として置かれています。
偏位量は、風による揺れや走行時の車両の動揺も見込んで決められます。止まっている状態で収まっていても、揺れれば外れることがあるためです。
目的も規格の定義そのものに書かれています。
同(ジグザグ偏位)
パンタグラフすり板の局部磨耗を避けるため,連続した支持点に線路中心に対して水平方向にジグザグ状にトロリ線を偏位させること。
トロリ線をまっすぐ張ると、すり板の同じ場所だけがこすられ続けます。そこに溝ができると、すり板を交換するしかありません。
言い換えると、「すり板の同じ場所ばかりが減らないように、わざと左右へ振っている」ということです。
例えば、令和3年度2級(後期)No.30では「直線区間では、パンタグラフの摩耗を平均的にするため、トロリ線にはジグザグに偏いをつけている」が正しい側に置かれています。「パンタグラフの溝摩耗を防止するために、直線区間ではトロリ線にジグザグ偏位を設けた」という形も、平成29年度2級No.43(公表正答3)と令和6年度2級(後期)No.49(公表正答2)で正しい側です。令和元年度2級(前期)No.43にも同じ文が肢として並んでいます。
一方、令和8年度2級(前期)No.28の「ジグザグ偏いは、パンタグラフの離線を抑制するために直線区間に設ける」は、最も不適当な肢とされました。目的は磨耗の側です。
上限の数値は、鉄道の種類で分かれます。
| 区分 | 電車線(トロリ線)の偏いの上限 |
|---|---|
| 新幹線鉄道 | レール面に垂直の軌道中心面から300mm以内 |
| 普通鉄道(新幹線を除く) | レール面に垂直の軌道中心面から250mm以内 |
数字を見ると分かるとおり、新幹線のほうが大きい側です。
だから「最大偏位量は、新幹線鉄道の方が普通鉄道よりも小さい」と書いた肢は、平成27年度2級No.31・平成30年度2級(後期)No.31の2年度とも誤りとされました。
この数値そのものも出題されます。新幹線で350mmとした肢(令和3年度1級No.77・公表正答4)、新幹線を除く区間で300mmとした肢(令和5年度1級No.77・公表正答4)は、いずれも誤りです。
逆に、この2つの数値がそのまま正しい側に置かれた年度もあります。新幹線鉄道で「電車線の偏いは、レール面に垂直の軌道中心面から300mm以内とした」は、平成27年度1級No.65(公表正答1)・平成30年度1級No.65(公表正答2)・令和6年度1級No.74(公表正答1)の3年度で、いずれも誤りの肢に選ばれていません。
新幹線を除く区間で「250mm以内とした」も、令和8年度1級No.74(公表正答2)で正しい側です。表の2つの数値は、この4年度が裏側から証明しています。
ジグザグ偏位は直線区間の話です。出題文にも「直線区間では」と付いています。
曲線区間では、レールが曲がっているのにトロリ線は支持点の間をまっすぐ張られます。だから左右のずれが自然に生じます。
「レールの曲線区間では、トロリ線には必然的に偏いが発生する」という肢は、平成27年度2級No.31・平成30年度2級(後期)No.31・令和3年度2級(後期)No.30の3年度とも正しい側に置かれています。曲線では付けるまでもなく生じるので、わざと振る話は直線区間に限られます。
張力との関係も1年度だけ出ています。令和3年度2級(後期)No.30の「風圧が一定の場合、トロリ線の張力を大きくすると、偏いは大きくなる」が、最も不適当な肢とされました。
偏位そのものを主題にした設問は2級で4年度、偏位が肢の1つとして出た設問は1級で8年度あります。引っかけは大きく3つです。
| 年度・級・問 | 誤りとされた記述 |
|---|---|
| 平成27年度 2級 学科No.31 | 最大偏位量は、新幹線鉄道の方が普通鉄道よりも小さい ←② |
| 平成30年度 2級 学科(後期)No.31 | 新幹線鉄道の最大偏い量は、普通鉄道よりも小さくする ←② |
| 令和3年度 2級 第一次検定(後期)No.30 | 風圧が一定の場合、トロリ線の張力を大きくすると、偏いは大きくなる ←② |
| 令和8年度 2級 第一次(前期)No.28 | ジグザグ偏いは、パンタグラフの離線を抑制するために直線区間に設ける ←① |
この4年度を通して、偏位の定義の肢はいずれも正しい側でした。曲線区間では必然的に偏位が発生するという肢は、そのうち平成27年度・平成30年度・令和3年度の3年度に置かれています。
1級では、上の表とは逆に、偏位の数値が正しい側で出ることのほうが多くなっています。誤りとされたのは令和3年度の350mmと令和5年度の300mm(新幹線を除く区間)の2年度です。
ジグザグは磨耗のため。新幹線の最大偏位量は小さくありません。
混同しやすい語
偏位とジグザグ偏位:偏位は軌道中心面からの偏りの寸法、ジグザグ偏位は支持点ごとに左右へ振る施工方法です。
局部磨耗と離線:ジグザグ偏位の目的は前者です。離線防止は硬点を減らす、張力を保つといった別の対策です。
最大偏位量:新幹線鉄道のほうを小さいとする肢は2年度とも誤りとされています。
偏位と架高:ちょう架線とトロリ線の垂直距離は架高です。これを偏位と呼んだ肢が、平成25年度1級No.44の公表正答でした。
ジグザグ偏位は何のために設けるか?
パンタグラフすり板の局部磨耗を避けるためです。離線の抑制ではありません。
トロリ線の偏位とは、どこからの偏りか?
軌道中心面からの偏りの寸法です。出題文ではレール中心に対する左右の偏りと書かれています。
新幹線鉄道の最大偏位量は、普通鉄道より小さいか?
小さいとする肢は2年度とも誤りとされています。
参考資料
※ この記事の規格・出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
偏位は付けるものであって、無くすものではありません。
そのため、肢は「無くす方向」ではなく「目的をすり替える」形で作られます。磨耗のためを離線のために、というのがその典型です。
離線を防ぐ手は別にあります。硬点を減らす、張力を適正に保つ、といった対策です。ジグザグ偏位はその仲間ではありません。