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母線保護って、電流差動とか位相比較とか名前が4つも並ぶよね。
説明文もないのに、名前だけで見分けられるの?
母線保護の方式は、名前だけが4つ並ぶ形で出ます。
まず、母線保護が何を守る保護なのかを押さえます。
母線は多くの送電線や変圧器が集まる場所で、ここで事故が起きると影響が広がります。保護継電方式の中でも、守る範囲がはっきり決まっているのが母線保護です。
母線は、いくつもの送電線や変圧器が集まる交差点です。変電所を構成する機器のうち、母線をどう組むかは母線結線方式で扱っています。
ここが壊れると、つながっている回線がまとめて止まります。だから守り方に条件が付きます。
電気学会 パワーアカデミー 電気工学用語集「母線保護リレー方式」
母線は多くの送電線や変圧器等が集中し、電力系統の要ともいえるもので、事故が発生した場合には、これを高速度にかつ最小の範囲で切り離すことが必要。
条件は2つです。速く切ること、切る範囲を最小にすること。母線につながる回線を全部落とせば事故は止まりますが、それでは止めなくてよい回線まで止まります。
この「最小の範囲」を決めるために、母線の内側で起きた事故か、外側で起きた事故かを見分ける必要があります。ここで使われるのが差動の考え方です。
入る電流と出る電流の差を見る考え方は、過電流継電器のように大きさだけを見る方式とは別です。零相の電流と電圧の位相差を見る地絡方向継電器とも、比べる対象が違います。
正常なら、母線に入ってくる電流の合計と、出ていく電流の合計は等しくなります。途中で電気が消えることはないからです。
ところが母線のどこかで故障が起きると、そこから電流が逃げます。入りと出の合計が合わなくなります。この差を見て故障を検出するのが差動方式です。
この考え方は、令和6年度1級No.8の選択肢3が言葉にしています。「保護区間に流入する電流と保護区間から流出する電流の差により動作する」。差動継電器の説明として、そのまま使える一文です。
ただしこの肢は誤りとされています。誤りなのは後半の「主に外部事故から機器を保護する」の部分で、差動が守るのは保護区間の内部です。入りと出の差を見る仕組みなので、区間の外で起きた故障では差が出ません。
実務でも、母線保護は差動で組まれています。送配電事業者が公開している系統保護基準では、電圧階級と母線構成のすべての組合せに同じ方式が並びます。
東北電力ネットワーク「系統保護基準」(2024年7月1日 第21回改正)p.5「(2)母線保護リレー方式」
500kV・275kV・154kV・66kV以下のいずれも、複母線・単母線のいずれも、一括保護・分割保護のいずれも、保護リレー方式は電流差動リレー方式。
電気学会が運営する用語集も、母線保護に用いる継電方式として高インピーダンス電流差動方式・位相比較付き電流差動方式・低インピーダンス電流差動方式を挙げています。どれも電流差動の系統です。
出題で電流差動方式が2年度とも選択肢1に置かれ、2年度とも正しい側だったのは、これが母線保護の本命だからです。
2年度分の肢を集めると、正しい側に5つ、誤りの側に1つが並びます。
| 方式 | 何を比べるか | 出題での扱い |
|---|---|---|
| 電流差動方式 | 電流と電流 | 正しい側。2年度とも選択肢1に置かれる |
| 電圧差動方式 | 差動回路に生じる電圧の大きさ | 正しい側 |
| 位相比較方式 | 電流の位相 | 正しい側 |
| 方向比較方式 | 電流の向き | 正しい側 |
| 遮へい母線方式 | 名前に比べる相手が出てこない | 正しい側。令和8年度だけ |
| 温度継電方式 | 温度 | 2年度とも答え(母線保護には使わない) |
正しい側の5つのうち4つは、名前に比べる相手が書いてあります。
どれも電気の量です。残る遮へい母線方式は、名前に比べる相手が出てきません。
温度継電方式だけが、電気ではないものを名前に持っています。これが仲間外れの見つけ方です。
1年度あたりに並ぶ名前は4つで、どう動くかの説明は付きません。並んだ名前の中で1つだけ性質が違うものを探すのが、この問の解き方になります。
肢の顔ぶれは年度で入れ替わります。令和2年度は電流差動・電圧差動・温度継電・位相比較、令和8年度は電流差動・遮へい母線・方向比較・温度継電。2年度に共通して並ぶのは、電流差動方式と温度継電方式の2つだけです。位置も選択肢3から選択肢4へ動いています。
言い換えると、「名前に比べる相手が入っていれば、母線保護の方式」ということです。温度継電方式のように比べる相手が無いものは、母線を守る仕組みではありません。
母線保護が受け持たないものも整理しておきます。
守る範囲が決まっているので、範囲の外は別の方式に任せます。
別の年度に、母線保護そのものが答えになった問があります。
令和5年度 1級 第一次検定 No.19(答え)
事故波及防止保護リレーシステムの設置目的として不適当なものを選ばせる出題です。脱調保護・周波数低下防止保護・過負荷防止保護と並べて母線保護が置かれ、母線保護が答えになりました。
母線保護を挙げた肢が答えです。脱調保護・周波数低下防止保護・過負荷防止保護の3つが正しい側でした。
母線保護は母線という設備そのものを守る保護で、系統全体への波及を防ぐ側には入りません。例えば、母線保護の方式を答える問と事故波及防止の目的を答える問が並んでいたら、この線引きで分けられます。
母線保護の問には説明文が付きません。名前だけで判断する形です。説明文を読ませて中身の当否を問う形は、送電線の保護継電方式や配電線路の保護で出ます。
母線保護が関わる出題は3年度分です。
| 年度・級・問 | 答えの論点 | 肢の位置 |
|---|---|---|
| 令和2年度 1級 学科 No.10 | 温度継電方式 | 選択肢3 |
| 令和5年度 1級 第一次検定 No.19 | 母線保護(事故波及防止の目的として) | 選択肢2 |
| 令和8年度 1級 No.8 | 温度継電方式 | 選択肢4 |
母線保護は、方式を選ばせる側と選ばれる側の両方で出ています。
この系統の肢は、次の順に見ます。
混同しやすい語
母線保護と母線結線方式:結線方式は単母線と二重母線の使い分けの話で、保護の方式とは別の問です。
電流差動方式と電圧差動方式:どちらも母線保護の正しい側に置かれます。
位相比較方式と方向比較方式:年度が違うだけで、どちらも正しい側です。
温度継電方式:2年度とも答えです。
母線保護の方式として2年度とも答えになったのはどれか?
温度継電方式です。肢の位置は選択肢3から選択肢4へ動いています。
2年度とも選択肢1に置かれた方式はどれか?
電流差動方式です。2年度とも正しい側でした。
事故波及防止保護リレーの目的として挙げられたのはどれか?
脱調保護、周波数低下防止保護、過負荷防止保護の3つです。母線保護は外れます。
令和8年度だけに出た方式はどれか?
遮へい母線方式と方向比較方式です。どちらも正しい側でした。
参考資料
※ この記事の出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
この出題には説明文がありません。方式の名前が4つ並ぶだけで、どう動くかは書かれていません。
だから、名前の中身から性質をたどるしかありません。差動は入りと出を比べるもの、比較は位相や向きを比べるもの。どれも電気の量を相手にしています。温度だけが電気の量ではありません。
肢の顔ぶれは年度で入れ替わりますが、この見分け方なら顔ぶれが変わっても効きます。